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星落秋風五丈原
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メイキング・オブ・妹背山婦女庭訓
 主人公は『あなたの本当の人生は』『ゼラニウムの庭』 『ツタよ、ツタ』
に続き「書く人」で、大島さんの書く人シリーズと名付けたくなる。彼の姓は近松で名は半二。職業=浄瑠璃作家とくれば、てっきり「曽根崎心中」を書いた近松門左衛門の縁者と見紛うが、筆名で名乗っているだけだ。気おくれはしないのかと思うが、父親が門左衛門本人からもらった硯を譲り受け、作家になる気まんまんだったらしい。

 大島さんの「書く人」シリーズは「書けない人がどうやって書くことと格闘していくか」がテーマである。今回は実在の作家が対象なので、 『ツタよ、ツタ』とは異なり、最後はサクセスストーリーが待っている。彼の大当たりがサブタイトルにもなっている「妹背山婦女庭訓」で、どれくらいヒットしたかは本編で書かれている通りだ。勿論世紀の傑作がいきなり天から降ってきたわけではなく、魅力的なヒロインや奇想天外なストーリーを考え出す半二の苦悩と喜びを、三人称&主人公の一人称語りを交えて描く。この交互の描き分けが読者を引き込むのに効果を挙げている。だが大島作品は単純なハッピーエンドは選ばない。後に歌舞伎として演じられるような優れた作品「本朝廿四孝」半二の奮闘にも関わらず、一度頂点を極めた人形浄瑠璃も、次第に歌舞伎人気に押されていく。苦闘、成功、そしてまた新たな作品を生み出すための苦闘という道筋は、創作者だけが味わえる無限ループだ。その魔力と魅力に憑かれた半二と、彼視点から見た周辺の業界人達を描く群像劇。できれば過去の時代だけで完結してほしかったので、少し現代語が入っているのはうーむ、とは思った。

大島真寿美さんの著作
かなしみの場所
香港の甘い豆腐
ゼラニウムの庭
ビターシュガー
チョコリエッタ
ちなつのハワイ
ツタよ、ツタ
あなたの本当の人生は
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2329 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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