星落秋風五丈原さん
レビュアー:
▼
メイキング・オブ・妹背山婦女庭訓
主人公は『あなたの本当の人生は』『ゼラニウムの庭』 『ツタよ、ツタ』
に続き「書く人」で、大島さんの書く人シリーズと名付けたくなる。彼の姓は近松で名は半二。職業=浄瑠璃作家とくれば、てっきり「曽根崎心中」を書いた近松門左衛門の縁者と見紛うが、筆名で名乗っているだけだ。気おくれはしないのかと思うが、父親が門左衛門本人からもらった硯を譲り受け、作家になる気まんまんだったらしい。
大島さんの「書く人」シリーズは「書けない人がどうやって書くことと格闘していくか」がテーマである。今回は実在の作家が対象なので、 『ツタよ、ツタ』とは異なり、最後はサクセスストーリーが待っている。彼の大当たりがサブタイトルにもなっている「妹背山婦女庭訓」で、どれくらいヒットしたかは本編で書かれている通りだ。勿論世紀の傑作がいきなり天から降ってきたわけではなく、魅力的なヒロインや奇想天外なストーリーを考え出す半二の苦悩と喜びを、三人称&主人公の一人称語りを交えて描く。この交互の描き分けが読者を引き込むのに効果を挙げている。だが大島作品は単純なハッピーエンドは選ばない。後に歌舞伎として演じられるような優れた作品「本朝廿四孝」半二の奮闘にも関わらず、一度頂点を極めた人形浄瑠璃も、次第に歌舞伎人気に押されていく。苦闘、成功、そしてまた新たな作品を生み出すための苦闘という道筋は、創作者だけが味わえる無限ループだ。その魔力と魅力に憑かれた半二と、彼視点から見た周辺の業界人達を描く群像劇。できれば過去の時代だけで完結してほしかったので、少し現代語が入っているのはうーむ、とは思った。
大島真寿美さんの著作
かなしみの場所
香港の甘い豆腐
ゼラニウムの庭
ビターシュガー
チョコリエッタ
ちなつのハワイ
ツタよ、ツタ
あなたの本当の人生は
に続き「書く人」で、大島さんの書く人シリーズと名付けたくなる。彼の姓は近松で名は半二。職業=浄瑠璃作家とくれば、てっきり「曽根崎心中」を書いた近松門左衛門の縁者と見紛うが、筆名で名乗っているだけだ。気おくれはしないのかと思うが、父親が門左衛門本人からもらった硯を譲り受け、作家になる気まんまんだったらしい。
大島さんの「書く人」シリーズは「書けない人がどうやって書くことと格闘していくか」がテーマである。今回は実在の作家が対象なので、 『ツタよ、ツタ』とは異なり、最後はサクセスストーリーが待っている。彼の大当たりがサブタイトルにもなっている「妹背山婦女庭訓」で、どれくらいヒットしたかは本編で書かれている通りだ。勿論世紀の傑作がいきなり天から降ってきたわけではなく、魅力的なヒロインや奇想天外なストーリーを考え出す半二の苦悩と喜びを、三人称&主人公の一人称語りを交えて描く。この交互の描き分けが読者を引き込むのに効果を挙げている。だが大島作品は単純なハッピーエンドは選ばない。後に歌舞伎として演じられるような優れた作品「本朝廿四孝」半二の奮闘にも関わらず、一度頂点を極めた人形浄瑠璃も、次第に歌舞伎人気に押されていく。苦闘、成功、そしてまた新たな作品を生み出すための苦闘という道筋は、創作者だけが味わえる無限ループだ。その魔力と魅力に憑かれた半二と、彼視点から見た周辺の業界人達を描く群像劇。できれば過去の時代だけで完結してほしかったので、少し現代語が入っているのはうーむ、とは思った。
大島真寿美さんの著作
かなしみの場所
香港の甘い豆腐
ゼラニウムの庭
ビターシュガー
チョコリエッタ
ちなつのハワイ
ツタよ、ツタ
あなたの本当の人生は
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:文藝春秋
- ページ数:361
- ISBN:9784163909875
- 発売日:2019年03月11日
- 価格:1998円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















