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くてたま
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ソ連のザミャーチンが1921年に執筆したディストピア小説。ソ連では1988年まで出版が禁止されていた。すべてが管理された単一国の社会を描いて当時のソ連社会を揶揄している。
1,000年前、英雄的な祖先は200年戦争を経て、全地球を征服して、「単一国」を創った。
緑の壁に囲まれた単一国では建物はすべてガラス張りでプライバシーはない。間律法表により、起床から就寝まで同一の分単位で「われら」何百万人が同一の行動していた。個人時間は十六時~十七時と二十一時~二十二時と決められており、性行為までも性規制法により、ピンク・クーポンの発行を受け、この時はブラインドを下すことができた。

街頭振動膜により街頭での会話も録音されていた。施政者「恩人」の巧みな重い手と、目付「守護者」の経験豊富な眼によって、管理された。
飛行機の速度=0なら飛行機は動かない。人間の自由=0なら人間は罪を犯さない。

物語は宇宙船インテグラルの開発を行うD-503号という名前で管理された男性の手記の形式で語られている。現実なのか、思いなのか、幻想なのかごまかされそうでなかなかに読みずらい。

最近彼は不眠が続いたり、夢を見たり、「黄色い世界」「毛むくじゃらの手」「√(ー1)」などの幻想を見ることがあった。医薬局の見立てで、「魂が形成されてきている」ため、想像力を摘出する手術を示唆された。想像力は病気と見なされていた。

Iー330号という女性が接近してきた。禁じられているはずの煙草・アルコールをたしなみ、間律法表を順守しないこともあった。「守護者」の眼も完璧ではなかった。彼女はメファという革命組織のメンバーで、革命はすでに達成されたとする単一国に対して、革命は無限で不断に追求するものと、D-550をくどく。
彼の担当している、宇宙船インテグラルの乗っ取りを目指して協力を求めた。情報は与えた。

それでも
単一国科学の最近の発見によって、想像力中枢の存在が明らかになった。それはヴァロリ氏橋部分にあるみすぼらしい脳神経節である。この節のX線による三回の焼灼を受ければ、諸君は想像力病を治癒し得るのです。それも恒久的効果を持つ。
      
彼の病気は治った。


1920年のソ連はまだレーニンの時代で、著者ザミャーチンも逮捕、投獄されたが、最終的には西側に逃れた。殺されなくてよかった。
ジョージ・オーウェルの「1984」に先行すること30年という、記念すべき作品だそうだ。揶揄する相手があるので、こちらはディストピアというよりパロディー。100年前の未来技術の想像は、今から見れば稚拙で面白い。解説にもあるように、H・G・ウェルズの世界といえる。


   
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くてたま
くてたま さん本が好き!1級(書評数:390 件)

花の年金生活者です。
勤労者の皆様お仕事ご苦労様です。皆様のお陰で朝からお酒を戴きながら本が読めます。
二年ほど前まではアウトドア派で、山渓の「日本の山1000」を目指していました。五街道まで足を広げたら、歩きすぎで戸塚宿で足萎えになり、525山で中断しています。

代わりに、「ガーディアンマストリード1000」を目標としています。難しい本は読めませんが・・

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