かもめ通信さん
レビュアー:
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なんといってもアマゾンの自然の描写が美しい!各方面からお薦めいただいた作品は、確かに面白かったが、気になる点がないわけではなかった。毎度のことながら私がひねくれているということなのかもしれないが……。
1910年、両親を事故で亡くしたマイアは、
アマゾンでゴム園を営む遠縁のカーター家に引き取られることになり、
ロンドンを後にする。
同行者は家庭教師のミントン先生。
長い船旅の末、たどりついたのは、
ゴムの栽培によって富を手にした入植者たちが
ジャングルの中に建設した美しい町だった。
想像していたものとは全く違う新しい生活に失望するマイアを支えたのは
長旅の途中で知り合った旅回り劇団の子役のクロヴィスや、
ジャングルの中で出会った、
イギリスの大地主の家に生まれながら実家を飛び出しアマゾンに住み着いた父と
インディオの母を持ち、彼の地で生まれ育ったフィンとの交流だった。
子どもたちは3人が3人とも両親を亡くし、
3人とも今の境遇に満足できず、
自分の居場所を求めていたのだった。
もっとも、自分の居場所を求めていたのは、
彼らだけではなかったのだけれど……。
アマゾンでの暮らしは、当初想像していたものとは全く異なっていたが、
西欧文明と大自然が混在する世界で、
マイアはしだいにアマゾンでの生活に魅せられていくのだった。
作中でも重要な意味を持っている『小公子』を思わせるような作品は、
いけすかない人物と、好感度の高い人物、
カーター一家のようにジャングルを嫌悪してなんとか距離を置こうとする暮らし方と
自然に惹かれそれを愛でながら営む暮らし方、
フィンのおじいさんのように血筋にこだわる人たちと、
出会った人たちとの縁を大事にはぐくんでいこうとする人たち……
といった具合に、
わかりやすい対立軸がいくつも用意されていて読みやすい。
読みながらなぜか、
この結末は必ずやハッピーエンドになるという確信がもてて
安心して読めもする。
そしてまた、物語の主な舞台となったアマゾンの自然の描写もとても魅力的で、
この作品の評判がいいのもうなずける。
まさに児童文学の王道をいくような物語だった。
だがしかし、気になる点がなかったと言えば嘘になる。
舞台は1910年だと、冒頭で明記されていることを考えれば、
登場人物たちの先住民族への差別意識はしかたがないものかもしれないが、
それでもやはりそこに手厳しい一石を投じる人物が
ひとりも配されていないことには不満を感じた。
またカーター氏の奇妙なコレクションに向けられる批判的な目が、
アマゾンの珍しい動植物などのコレクターには向けられなることがないだけでなく、
大自然に感嘆しながらも、
その豊かな自然から搾取したものを切り売りすることによって対価を得ることに
全く疑問を持たない主人公たちの姿勢も気になった。
人間の飽くなき欲求が
どれほど多くの動植物を絶滅の危機に追いやっているのかということを考えるとき、
100年前に書かれた物語であるならば、
時代の限界かと読み解くこともできるだろうが、
21世紀に世に出た物語としてはやはり、
残念に思わずにはいられなかった。
もちろん、一つの物語に
なにもかもを詰め込むことはできないとわかってはいるのだけれど……ね。
アマゾンでゴム園を営む遠縁のカーター家に引き取られることになり、
ロンドンを後にする。
同行者は家庭教師のミントン先生。
長い船旅の末、たどりついたのは、
ゴムの栽培によって富を手にした入植者たちが
ジャングルの中に建設した美しい町だった。
想像していたものとは全く違う新しい生活に失望するマイアを支えたのは
長旅の途中で知り合った旅回り劇団の子役のクロヴィスや、
ジャングルの中で出会った、
イギリスの大地主の家に生まれながら実家を飛び出しアマゾンに住み着いた父と
インディオの母を持ち、彼の地で生まれ育ったフィンとの交流だった。
子どもたちは3人が3人とも両親を亡くし、
3人とも今の境遇に満足できず、
自分の居場所を求めていたのだった。
もっとも、自分の居場所を求めていたのは、
彼らだけではなかったのだけれど……。
アマゾンでの暮らしは、当初想像していたものとは全く異なっていたが、
西欧文明と大自然が混在する世界で、
マイアはしだいにアマゾンでの生活に魅せられていくのだった。
作中でも重要な意味を持っている『小公子』を思わせるような作品は、
いけすかない人物と、好感度の高い人物、
カーター一家のようにジャングルを嫌悪してなんとか距離を置こうとする暮らし方と
自然に惹かれそれを愛でながら営む暮らし方、
フィンのおじいさんのように血筋にこだわる人たちと、
出会った人たちとの縁を大事にはぐくんでいこうとする人たち……
といった具合に、
わかりやすい対立軸がいくつも用意されていて読みやすい。
読みながらなぜか、
この結末は必ずやハッピーエンドになるという確信がもてて
安心して読めもする。
そしてまた、物語の主な舞台となったアマゾンの自然の描写もとても魅力的で、
この作品の評判がいいのもうなずける。
まさに児童文学の王道をいくような物語だった。
だがしかし、気になる点がなかったと言えば嘘になる。
舞台は1910年だと、冒頭で明記されていることを考えれば、
登場人物たちの先住民族への差別意識はしかたがないものかもしれないが、
それでもやはりそこに手厳しい一石を投じる人物が
ひとりも配されていないことには不満を感じた。
またカーター氏の奇妙なコレクションに向けられる批判的な目が、
アマゾンの珍しい動植物などのコレクターには向けられなることがないだけでなく、
大自然に感嘆しながらも、
その豊かな自然から搾取したものを切り売りすることによって対価を得ることに
全く疑問を持たない主人公たちの姿勢も気になった。
人間の飽くなき欲求が
どれほど多くの動植物を絶滅の危機に追いやっているのかということを考えるとき、
100年前に書かれた物語であるならば、
時代の限界かと読み解くこともできるだろうが、
21世紀に世に出た物語としてはやはり、
残念に思わずにはいられなかった。
もちろん、一つの物語に
なにもかもを詰め込むことはできないとわかってはいるのだけれど……ね。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
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- 出版社:偕成社
- ページ数:381
- ISBN:9784037446703
- 発売日:2008年06月01日
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