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どんなにどん底にいたって、夢をみるのは自由だ
ゴーリキーは早くに両親を亡くし、母方の祖父母に育てられた。しかし祖父の染め物業が破産して、11歳から、職業を色々変え、1879年から91年までの12年間、ヴォルガ川流域やロシア南部を転々と放浪している。
この時の体験からの視点で見つめた社会、人々のあり様を物語にしている。
この作品集は、社会の底辺においやられた人々のやりきれなさを見事な情景と生き生きとした会話表現を駆使し、描写した4編の作品を収録している。
日本で底辺に落ちてしまった人々を描くと、汚さといじけた気持ちばかりの物語になり、隠滅な気持ちにさせる。
ゴーリキーの作品は、先がまったく見えない生活には違いないが、その描写は日本の小説と異なり、異彩を放つ。
例えば、収録されている「女」という作品。
1891年ロシア中部は大規模な飢餓が発生。そこの人たちがどん底の生活になり、カフカース地方へ大量に流入してくる。
そのはじき出された女タチヤーナが素っ裸になり主人公に体を投げだしてくる。
前にもよくあったのだ。時々どうしようもないものが胸にこみあげてくる。そんな時はお月様の前で、暑い夏に目の前に川があると、何もかも解き放したくなる。どうしてもそうなってしまう。もちろん、その後はすごく恥ずかしくなる。
こんなやるせなく、明日の希望が無い女が、憧れのように言う。
「今にごらん。あたしの目の前にいい男があらわれる。そしたらあたしはそいつと、ノヴィアフォンあたりに土地を見つけるのさ。あそこには場所がいっぱいある。よく知っているんだ。あたしたちは土地を切り開いてゆく。果樹園でも菜園でも家畜でも、やっていくのに必要なものは何だって作る。
うまくやっていれば、そのうち他の人たちも集まってくるだろう。そうなればあたしたちはもう古顔だからね、尊敬されるようになると思うんだ。そんなふうにどんどん人が集まったら、新しい村ができるだろう。いい場所になるよ。そのうち亭主が村長に選ばれる。そうしたらあたしは亭主をぴかぴかに磨きあげてやる。庭では子供たちが遊んでさ。あずま家も建てる。そうさ素敵な暮らしになる!」
もちろん、こんなことになることは万が一にもない。
しかし、それを語らせるゴーリキーの思いの深さは、完全に現実をはるか遠くに突き抜けている。
この時の体験からの視点で見つめた社会、人々のあり様を物語にしている。
この作品集は、社会の底辺においやられた人々のやりきれなさを見事な情景と生き生きとした会話表現を駆使し、描写した4編の作品を収録している。
日本で底辺に落ちてしまった人々を描くと、汚さといじけた気持ちばかりの物語になり、隠滅な気持ちにさせる。
ゴーリキーの作品は、先がまったく見えない生活には違いないが、その描写は日本の小説と異なり、異彩を放つ。
例えば、収録されている「女」という作品。
1891年ロシア中部は大規模な飢餓が発生。そこの人たちがどん底の生活になり、カフカース地方へ大量に流入してくる。
そのはじき出された女タチヤーナが素っ裸になり主人公に体を投げだしてくる。
前にもよくあったのだ。時々どうしようもないものが胸にこみあげてくる。そんな時はお月様の前で、暑い夏に目の前に川があると、何もかも解き放したくなる。どうしてもそうなってしまう。もちろん、その後はすごく恥ずかしくなる。
こんなやるせなく、明日の希望が無い女が、憧れのように言う。
「今にごらん。あたしの目の前にいい男があらわれる。そしたらあたしはそいつと、ノヴィアフォンあたりに土地を見つけるのさ。あそこには場所がいっぱいある。よく知っているんだ。あたしたちは土地を切り開いてゆく。果樹園でも菜園でも家畜でも、やっていくのに必要なものは何だって作る。
うまくやっていれば、そのうち他の人たちも集まってくるだろう。そうなればあたしたちはもう古顔だからね、尊敬されるようになると思うんだ。そんなふうにどんどん人が集まったら、新しい村ができるだろう。いい場所になるよ。そのうち亭主が村長に選ばれる。そうしたらあたしは亭主をぴかぴかに磨きあげてやる。庭では子供たちが遊んでさ。あずま家も建てる。そうさ素敵な暮らしになる!」
もちろん、こんなことになることは万が一にもない。
しかし、それを語らせるゴーリキーの思いの深さは、完全に現実をはるか遠くに突き抜けている。
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昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。
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- 出版社:光文社
- ページ数:282
- ISBN:9784334753948
- 発売日:2019年02月06日
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