efさん
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お腹一杯のケン・リュウ椀飯振舞
いやあ~、大満足でお腹一杯堪能できるケン・リュウの短編集です。
全20作が収録されていますが、その厚さは上下二段組みのポケ・ミス版で549ページですから、かなりの読みごたえになります。
本書は日本オリジナル編集の短編集なのですが、これだけの収録作品を選定するに当たっては、さらに膨大な数の作品の中から選んだということなので、ケン・リュウって多作家なんですね~。
これはうれしいことで、今後もさらに多くの作品を楽しむことができるではないですか。
それではいつものように収録作品から何作かご紹介しましょう。
〇 介護士
年老いて一人暮らしをしている主人公は、子供たちから高性能介護ロボットをつけられます。
非常によくできたロボットなので何も心配することは無いと言われて。
確かに大きな不満も無く過ごしていたのですが、ある時、介護ロボットに車椅子を押させて散歩をしていた際、介護ロボットが赤信号を無視して道路を横断したのです。
確かに車の往来はなかったのですが、こんなプログラムになっているのは問題じゃないのか?
また、介護ロボットは当然24時間体制で介護についているはずなのに、ある時、居眠り?というか、どうもそんな感じで反応が鈍かったことがありました。
これは……?
〇 化学調味料ゴーレム
大変ユーモラスな一編です。
宇宙船に家族と乗り込んでいたレベッカは、突然神から話しかけられました。
この宇宙船には大量にネズミが繁殖しているので駆除しなければならないと。
そのためにはレベッカがゴーレムを造らなければならないと言うのです。
ゴーレムって、あのユダヤ神秘主義に登場する土くれの怪物ですよ。
「宇宙船の中に泥なんてないよ」とレベッカは神に言うのですが、神はどうしても泥を調達して来いと言います。
仕方なく、レベッカは母親と一緒に船内のエステに行き、全身泥パック2人分をオーダーし、パック用の泥をかき集めてきました。
そうしてどうにかこうにか小さいゴーレムを作り上げたのです。
神に言われるままにゴーレムに命を吹き込み、いざネズミ退治です。
最初は順調かと思われたのですが、ゴーレムはネズミに齧られてしまいます。
「一体、どんな泥で作ったんじゃ?」
「全身パック用だから、ナツメ、リンゴ、ブドウ……蜂蜜が入ってると思う」
〇 神々は鎖につながれてはいない
〇 神々はころされはしない
〇 神々は犬死にはしない
三連作の短編です。
マディ―は母親と二人暮らしをしている少女です。
彼女の父親は先進的IT企業の技術開発者でしたが、既に亡くなっていました。
ある時、マディーが使っているパソコンに謎のメッセージが表示されたのです。
それは絵文字だけによる通信でした。
何となく言わんとするところはマディーにも分かりました。
どうやら、学校でいじめられているマディーを励ます内容のようなんです。
その後、おそらく謎のメッセージの主により、いじめっこ達にもメッセージが送られたようで、疑心暗鬼に陥ったいじめっこ達は大慌てになっているようです。
それからというもの、マディーはこの謎のメッセージの送り主との通信にのめり込んでいきました。
ある時、この謎のメッセージを母親に見せたところ、母親は驚愕しました。
これはあなたのお父さんからのメッセージに間違いないって。
でもお父さんは死んだはずじゃ……。
確かにマディーの父親は死んでいました。
しかし、ネットワークの中にその人格が保存されていたのです。
このような設定の三連作なんですが、最終作ではネット上で生まれたというマディーの妹も登場しますよ。
〇 隠娘(いんじょう)
暗殺者とそれを阻止しようとする中国娘の物語。
暗殺者は中国娘よりも強いのですが、これをどう退けるかという戦いが面白い。
次元の壁を破った戦い方に注目ですよ。
その他の作品も大変質の高いものばかりで、また、ケン・リュウらしいナイーヴさというか、柔らかさを備えた作品が多くみられます。
中には数式やグラフが登場する作品もありますし(それを言うならご紹介した『神々は……』三連作には作中に絵文字が多数登場します)、なかなか斬新な作品もあります。
また、『カルタゴの薔薇』という作品は、ケン・リュウの商業誌デビュー作なんだそうですよ。
ケン・リュウの作品は、これまでに『紙の動物園』 や『母の記憶に』 などを読んできましたが、どれも良い作品でした。
これまでのケン・リュウの作品が好きな方であれば、本作もきっと気に入ることでしょう。
期待を裏切らない一冊になっています。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
全20作が収録されていますが、その厚さは上下二段組みのポケ・ミス版で549ページですから、かなりの読みごたえになります。
本書は日本オリジナル編集の短編集なのですが、これだけの収録作品を選定するに当たっては、さらに膨大な数の作品の中から選んだということなので、ケン・リュウって多作家なんですね~。
これはうれしいことで、今後もさらに多くの作品を楽しむことができるではないですか。
それではいつものように収録作品から何作かご紹介しましょう。
〇 介護士
年老いて一人暮らしをしている主人公は、子供たちから高性能介護ロボットをつけられます。
非常によくできたロボットなので何も心配することは無いと言われて。
確かに大きな不満も無く過ごしていたのですが、ある時、介護ロボットに車椅子を押させて散歩をしていた際、介護ロボットが赤信号を無視して道路を横断したのです。
確かに車の往来はなかったのですが、こんなプログラムになっているのは問題じゃないのか?
また、介護ロボットは当然24時間体制で介護についているはずなのに、ある時、居眠り?というか、どうもそんな感じで反応が鈍かったことがありました。
これは……?
〇 化学調味料ゴーレム
大変ユーモラスな一編です。
宇宙船に家族と乗り込んでいたレベッカは、突然神から話しかけられました。
この宇宙船には大量にネズミが繁殖しているので駆除しなければならないと。
そのためにはレベッカがゴーレムを造らなければならないと言うのです。
ゴーレムって、あのユダヤ神秘主義に登場する土くれの怪物ですよ。
「宇宙船の中に泥なんてないよ」とレベッカは神に言うのですが、神はどうしても泥を調達して来いと言います。
仕方なく、レベッカは母親と一緒に船内のエステに行き、全身泥パック2人分をオーダーし、パック用の泥をかき集めてきました。
そうしてどうにかこうにか小さいゴーレムを作り上げたのです。
神に言われるままにゴーレムに命を吹き込み、いざネズミ退治です。
最初は順調かと思われたのですが、ゴーレムはネズミに齧られてしまいます。
「一体、どんな泥で作ったんじゃ?」
「全身パック用だから、ナツメ、リンゴ、ブドウ……蜂蜜が入ってると思う」
〇 神々は鎖につながれてはいない
〇 神々はころされはしない
〇 神々は犬死にはしない
三連作の短編です。
マディ―は母親と二人暮らしをしている少女です。
彼女の父親は先進的IT企業の技術開発者でしたが、既に亡くなっていました。
ある時、マディーが使っているパソコンに謎のメッセージが表示されたのです。
それは絵文字だけによる通信でした。
何となく言わんとするところはマディーにも分かりました。
どうやら、学校でいじめられているマディーを励ます内容のようなんです。
その後、おそらく謎のメッセージの主により、いじめっこ達にもメッセージが送られたようで、疑心暗鬼に陥ったいじめっこ達は大慌てになっているようです。
それからというもの、マディーはこの謎のメッセージの送り主との通信にのめり込んでいきました。
ある時、この謎のメッセージを母親に見せたところ、母親は驚愕しました。
これはあなたのお父さんからのメッセージに間違いないって。
でもお父さんは死んだはずじゃ……。
確かにマディーの父親は死んでいました。
しかし、ネットワークの中にその人格が保存されていたのです。
このような設定の三連作なんですが、最終作ではネット上で生まれたというマディーの妹も登場しますよ。
〇 隠娘(いんじょう)
暗殺者とそれを阻止しようとする中国娘の物語。
暗殺者は中国娘よりも強いのですが、これをどう退けるかという戦いが面白い。
次元の壁を破った戦い方に注目ですよ。
その他の作品も大変質の高いものばかりで、また、ケン・リュウらしいナイーヴさというか、柔らかさを備えた作品が多くみられます。
中には数式やグラフが登場する作品もありますし(それを言うならご紹介した『神々は……』三連作には作中に絵文字が多数登場します)、なかなか斬新な作品もあります。
また、『カルタゴの薔薇』という作品は、ケン・リュウの商業誌デビュー作なんだそうですよ。
ケン・リュウの作品は、これまでに『紙の動物園』 や『母の記憶に』 などを読んできましたが、どれも良い作品でした。
これまでのケン・リュウの作品が好きな方であれば、本作もきっと気に入ることでしょう。
期待を裏切らない一冊になっています。
読了時間メーター
□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:早川書房
- ページ数:558
- ISBN:9784153350434
- 発売日:2019年02月20日
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