かもめ通信さん
レビュアー:
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物語る挿絵の魅力。すべてを語り尽くさないことの魅力。
翻訳家の原田勝さんのツイートで知った本です。
原田さんご自身、初の共訳だそうですが、共訳者のお名前を見て思わず声を上げてしまいました!
澤田亜沙美さん!
昨年のやまねこ翻訳クラブとの合同読書会オフに参加してくださったやまねこ会員さんではありませんか!
確か翻訳勉強中だというお話しで……そうです!この本は“あさみさん”にとって、はじめてお名前が載る本なのだそうです。
正直、中味なんか二の次で(これは絶対読まなくては!)と、なんだかとてもうれしくなって手にした本でした。
ところが、ところがなのです!
実際に本を手にしてみると、表紙の絵の美しさに息をのみました。
ぱらぱらとページをめくると、沢山の絵が!
そのどれもが濃淡を黒鉛筆1本で描き分けているようなモノトーンの絵なのです。
一つ一つの絵が、時にいきいきと、時に寂しげで、時に大迫力で、物語を表現しているのです。
読んでみてわかったことですが、物語る上でこのふんだんな挿絵が描き出す灰色の世界が、とても重要な役割を果たしていました。
この絵を眺めるためだけでも、手元に置いておく価値がありそう!
そうおもいつつ、本編を読み始めると、これがまた!!
物語の舞台は戦時下のイギリスです。
主人公の少女エマラインは、以前は伯爵夫人の持ち物だったという大きなお屋敷で暮らしています。
どうやらここブライアーヒルは、肺に静かな水がたまった子どもたちが疎開する場所、結核の子どもたちのための療養所のようです。
親元を離れ疎開してきた子どもたちは皆、それなりに長い療養所生活を送っているようなのですが、エマラインは一人、他の子どもたちよりずっと遅れて、このブライアーヒルにやってきたため、屋根裏部屋と間に合わせの材料で作られたベッドをあてがわれていました。
それがどんな事情によるものなのかは、読んでいくうちにだんだんとわかっていくようになっているのですが、ああそうだったのか、そういうことだったのか、と納得がいくあれこれがある一方で、エマラインが鏡の中に見た翼のある馬たちや、療養所の裏庭に現れた傷を負った翼のある馬フォックスファイヤーや、フォックスファイヤーを狙うブラックオースの正体など、最後まで語り尽くされないものもいろいろあって、読後に残る余韻がとても印象的な物語でもあります。
とても切ない物語です。
けれども、不思議と陰鬱な印象は受けません。
もしかしたら、あれは……。
あるいはあの場面は……。
こうして読み終えたはずのこの本を紹介しつつもまだ、ブライアーヒルを去りがたく思っている自分に気づく……そんな忘れがたい物語です。
原田さんご自身、初の共訳だそうですが、共訳者のお名前を見て思わず声を上げてしまいました!
澤田亜沙美さん!
昨年のやまねこ翻訳クラブとの合同読書会オフに参加してくださったやまねこ会員さんではありませんか!
確か翻訳勉強中だというお話しで……そうです!この本は“あさみさん”にとって、はじめてお名前が載る本なのだそうです。
正直、中味なんか二の次で(これは絶対読まなくては!)と、なんだかとてもうれしくなって手にした本でした。
ところが、ところがなのです!
実際に本を手にしてみると、表紙の絵の美しさに息をのみました。
ぱらぱらとページをめくると、沢山の絵が!
そのどれもが濃淡を黒鉛筆1本で描き分けているようなモノトーンの絵なのです。
一つ一つの絵が、時にいきいきと、時に寂しげで、時に大迫力で、物語を表現しているのです。
読んでみてわかったことですが、物語る上でこのふんだんな挿絵が描き出す灰色の世界が、とても重要な役割を果たしていました。
この絵を眺めるためだけでも、手元に置いておく価値がありそう!
そうおもいつつ、本編を読み始めると、これがまた!!
物語の舞台は戦時下のイギリスです。
主人公の少女エマラインは、以前は伯爵夫人の持ち物だったという大きなお屋敷で暮らしています。
どうやらここブライアーヒルは、肺に静かな水がたまった子どもたちが疎開する場所、結核の子どもたちのための療養所のようです。
親元を離れ疎開してきた子どもたちは皆、それなりに長い療養所生活を送っているようなのですが、エマラインは一人、他の子どもたちよりずっと遅れて、このブライアーヒルにやってきたため、屋根裏部屋と間に合わせの材料で作られたベッドをあてがわれていました。
それがどんな事情によるものなのかは、読んでいくうちにだんだんとわかっていくようになっているのですが、ああそうだったのか、そういうことだったのか、と納得がいくあれこれがある一方で、エマラインが鏡の中に見た翼のある馬たちや、療養所の裏庭に現れた傷を負った翼のある馬フォックスファイヤーや、フォックスファイヤーを狙うブラックオースの正体など、最後まで語り尽くされないものもいろいろあって、読後に残る余韻がとても印象的な物語でもあります。
とても切ない物語です。
けれども、不思議と陰鬱な印象は受けません。
もしかしたら、あれは……。
あるいはあの場面は……。
こうして読み終えたはずのこの本を紹介しつつもまだ、ブライアーヒルを去りがたく思っている自分に気づく……そんな忘れがたい物語です。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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この書評へのコメント
- かもめ通信2019-04-17 06:36
ひとくちに共訳といっても、訳者の組み合わせによっても、作品によっても、そのあり方はそれぞれなのだと思いますが、今回の共訳作業については、原田勝さんがご自身のブログ『翻訳者の部屋から』でも紹介されていて、こちらの記事も興味深かったです。
http://haradamasaru.hatenablog.com/entry/2019/04/04/114310クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:小峰書店
- ページ数:308
- ISBN:9784338287197
- 発売日:2019年03月02日
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