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はなとゆめ+猫の本棚
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小学生のころ、道路建設や発電所建設で全国を得当たり歩く労働者家族の集団があった。
 私が小学生の時、最初の東京オリンピックがあった。当時は、舗装道路は殆どみられなかった。20km離れた、少し大きな市の商店街まで行かないと舗装道路はなかった。私の家の前は国道20号線。ここを聖火が通るということで、舗装にすることになった。道幅が狭いので、舗装の前に、道幅を広げねばならなかった。それには道沿いにある家を切断するかジャッキであげ、後ろにズラせねばならない、合わせて電信柱もずらせねばならない。

 この作業者は、村の人ではなく、どこからか大勢の人がやってきて、公民館に寝泊まりしながら作業を行っていた。作業者たちは、作業が終わると次の場所に移動していった。

 それから電力確保のために水力発電所が次々作られた。ここの作業者も次々作業場を変え移り住んだ。私の小学校にも、作業者の子供がしょっちゅう転入、転出をしていった。

 この物語で、主人公の青瀬は、今は建築士なのだが、父がダム建設の作業者で、日本全国を小学生のころわたりあるいて、貧乏な生活を強いられていた。

 それに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・ダウトが指導した日本の職人、この職人が戦争直後、渡り歩きながら住んでいる村の家々のお米を盗みだし、職人家族が一家離散逃亡の悲劇に襲われる。

 この一家離散した悲劇の子供が、ダム建設のため全国を渡り歩いた主人公に最後に収れんされ、クライマックスを迎える。

 540ページを超える大長編。こういう作品は、ストーリーが大切のため、文学の香りが薄くなるのだが、横山の作品は手抜き部分がなく、あくまで真剣で誠実だ。

 主人公青瀬の父親が建設中のダムを目の前にして息子の青瀬に言う。
「ダムはなあ、神さんの手みたようなもんよ。山に降った雨も雪も、一滴残らず集めて貯めて、みんなに大盤振る舞いするんだからよ。」

 こんな表現どのようにして生まれるんだろう。どこかで聞いていたのか。それとも思索のなかで生まれたのだろうか。

 こんな表現を紡ぎだしながら、大長編を産み出す。すごい能力だし、熱量だ。完成直後は疲れ切ってしまっただろう。
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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6222 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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