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たけぞう
レビュアー:
理不尽な傷を癒す方法はあるのか。
原田ひ香さんの作品は三冊目の読了です。
前二冊は読みやすさの中に本格的なこころの葛藤がしのんでいて
気になっていましたが、この作品はがっつりこころに食いこんできました。

単行本のタイトルは虫たちの家で、改題して文庫化されました。
久しぶりにガツンとくる作品でした。
著者紹介欄で、おもな著作にラジオ・ガガガがあり、評判がいい記憶があります。
その直感でいつの間にか三冊読んでしまいましたが、
間違っていなかったみたいです。

この作品はいいです。
自分は前知識なしで読みましたが、もっと評判になってもいいですね。
原田ひ香さんの作品に、もう少し手を広げようと思いました。

デビューはNHKの創作ラジオドラマ脚本賞で、その後の受賞者に
湊かなえさんがいます。本作で解説を寄せていますが、非常に的確で
すごいなあと感心します。

脚本と小説はまったく別もので、両方書くことができる人は、
頭の中に物語が映像(立体的な空間)として浮かんでいて、
それを小説(言語化した平面)で表すことに長けているため、
読者が情景を想像しやすく、読みやすい=リーダビリティが高い、
と言われているのではないか、そんな言葉で評しています。

この作品の舞台は九州の離島です。
小さな家。共同生活をする数人の女性たち。
世間との関わりを最小限にし、息をしていることさえ隠すような生活です。
自給自足ですが、それでも電気や水道、一本の固定電話など
最小限のお金は必要です。
採れた野菜を売ったりして、ちょっとした現金で生命をつないでいます。

小さく生きている人たちは、互いの本名や出自も知りません。
なぜという疑問をさしはさむ余地のない、無言の圧力が物語の底辺に流れています。
そんな共同体に、ある日、母娘がやってきました。東京からです。
この二人が加わったことで、物語の何かがゆっくりと動き出します。

物語の何かは、作品の最初に提示されています。
壁です。
壁があります。
壁が見えます。

言葉の意味は分かりますが、物語とのつながりが分かりません。
そして共同体の話が徐々に変貌を始めると、
それに呼応して物語の何かが少しずつ解きほぐされていきます。

エピローグに救われました。
物語全体は、独特のよどみ感があります。
重厚さとは違う、停滞した不穏な重みです。
この世界観はおすすめです。
どこにどう惹かれたのかうまく説明できないのが難点ですが。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1462 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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