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ぷるーと
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その電車は、戦前から現代までの社会を駆け抜けた。
昭和8年4月、大阪市南部から堺市をつなぐ阪堺電車に、新車両177号が導入された。そして、177号は、それから平成29年8月まで、85年間、大阪南部を走り続けた。

戦前、戦時中、大阪万博関連の景気に沸く時期、バブル崩壊期。『阪堺電車177号の追憶』は、177号が垣間見た時代の世相を映したような6つの事件が緩く繋がりあった短編集だ。

第二章「防空壕に入らない女」と第四章「二十五年目の再開」は、登場人物がほぼ同じ。どちらも時代の暗部が描かれており、時代に翻弄された女性がなんとも哀れだ。

好きなのは、第三章「財布とコロッケ」。一人の綺麗な女性をめぐるコミカルなラブストーリーだが、コロッケ作りが上手な若いコックは第一章で初お目見えの177号に乗ってきた赤ん坊だし、財布を隠した少年は後に阪堺電車の運転手になっている。

私も、何度か乗ったことがある阪堺電車。このレトロな177号にも乗っている。描かれている風景も、駅名も、馴染みのものだ。関西弁と一口に言うが、河内弁、泉州弁など、いくつかの違いがある。この作品の登場人物たちの言葉は、まぎれもなくこの地域と人の優しさを反映している。こういう大阪弁、好きなのだ。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2923 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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この書評へのコメント

  1. 千世2021-07-05 20:49

    ぷるーと様。こんばんは。千世と言います。
    私もちっちゃい頃に阪堺電車に乗ったことがあります。
    今でも走っているのでしょうか。
    この本は面白そうですね。ぜひ読んでみたいと思います。

  2. ぷるーと2021-07-06 04:46

    千世さん、コメントありがとうございます。

    もちろん今でも走っていますよ。住吉大社に行くときは鳥居のすぐ前に停るので重宝しています。

    ぜひ、読んでみて下さいね。

  3. 千世2021-07-06 20:37

    そうですか。走っているんですね。
    私の実家は南海本線沿いにあるんです。
    コロナ禍でしばらく両親にも会っていないのですが、今度会ったら阪堺電車の思い出を話してみます。

  4. noel2021-07-06 20:55

    たまたま偶然ですが、わたしもこの8月に南海高野線沿いのところに引っ越す予定でいます。色々とこの街のことを知りたいと思っています。

  5. noel2021-07-06 20:56

    もう京都とは完全に離れての余生となります。終の棲家になればいいのですが……。

  6. ぷるーと2021-07-07 08:29

    noelさん、大阪に来られるのですね。
    住吉大社前から堺の宿院辺りまで、よかったら、阪堺電車のミニ旅、してみて下さいませ。

  7. noel2021-07-07 08:43

    引っ越した際にはぜひ、お薦めのミニ旅をしてみます。

  8. noel2021-07-07 13:31

    >ぷるーとさん
    京都の市電(路面電車)はかれこれ半世紀近く前になくなりましたが、廃止寸前にそのときの彼女と一緒に乗った思い出があります。女性と一緒に乗った乗り物の、初めての思い出です。ある意味、堺でのそれも郷愁を感じさせる乗り物になっていることは間違いなく、いまから楽しみにしています。もっともいまの家内にはナイショの思い出ですが……。

  9. ぷるーと2021-07-07 14:03

    そうなんですね。
    私は、京都に行ったらもっぱらバスで、市電には乗ったことがないんです。
    廃止されてから、一度は乗って置けばよかったと思いました。

  10. No Image

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