かもめ通信さん
レビュアー:
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タイトルと装丁から、てっきり、本が大好きな少年の話だと思っていた。そうでなければ、その逆で、本なんか大嫌いだったのに、本を読む羽目になった男の子の話とか。けれども、読んでみたらそのどちらでもなかった。
主人公のルカは小学5年生の男の子。
とあるきっかけで、普段は滅多に入らない両親の書斎「本部屋」に足を踏み入れた。
といっても別に両親から「入ってはいけない」といわれているわけではない。
用がないから入らないだけだ。
なぜってその部屋には本棚にぎっしりと、ルカにはその背表紙のタイトルも満足に読めないような難しそうな本が並んでいたから。
だがたまたま目に入った紙カバーに包まれた5冊の本がルカの注意を引く。
興味本位で1冊を手に取ると、両親のどちらかがかつて読んだ本だろう、とても古い本だった。
題名は『小公女』。
残してあるということはたぶん今でも好きな本なんだろう。
ルカは両親には内緒でその本を読むことにした。
特別本が好きなわけでも、別に本が嫌いなわけでもない男の子が、ふとしたきっかけで読み始める本が『小公女』だというところが面白いと、子どものころから『小公女』を知っていて、その頃からこのお話があまり好きではなかった私は思うのだけれど、ルカが本を読みながら、あれこれと考える様子を読み進めるにつけ、『小公女』もう一度読んでみようかしらという気になってくる。
自尊心とか自立心とか、親子とか友だちとか、一見何のつながりもなさそうな、本の中の世界と物語を読むルカ少年を取り巻く世界が、くっついたり離れたり時々重なったりする様も興味深い。
『小公女』を読み終えたルカ少年が、次に手を伸ばすのは『あしながおじさん』。
こちらは昔乙女の私にとっても得意分野といい本!と張り切って読み進めると、むむむっ!これがなかなか鋭い突っ込みの連続だ。
本が大好きな転校生カズサとのやりとりの中で、旧訳と新訳の違いにまでふれるシーンには思わず脱帽。
そうそう、一冊の本からいろんな方向に興味関心が広がっていくものなんだよね。
そうそう、読んだ本について誰かと語り合うって楽しいことだよね。
そうそう、それでもやっぱり自分の心の中だけに大事にしまっておきたい想いもまたあるものだよね。
本を読んでいる「ぼく」の気持ちにいちいち共感しながら、私もやっぱり本を読む。
小学生から読める本ではあるし、本が好きなあなたにも、そうでもないあなたにも安心してお勧めできる本ではあるが、一つだけ注意が必要なのは、もし薦める相手が、未読ではあるけれどこれから先、さしたきっかけもなしに、『小公女』や『あしながおじさん』にも手を伸ばしそうなお子さんであるならば、この本を読む前にまずはそちらを薦める方がいいだろう。
作品の構成上やむを得ないことではあるし、結末を知ってしまったからといって読む価値がなくなるわけではないとは思うが、作中でおもいっきりネタバレしているから。
とあるきっかけで、普段は滅多に入らない両親の書斎「本部屋」に足を踏み入れた。
といっても別に両親から「入ってはいけない」といわれているわけではない。
用がないから入らないだけだ。
なぜってその部屋には本棚にぎっしりと、ルカにはその背表紙のタイトルも満足に読めないような難しそうな本が並んでいたから。
だがたまたま目に入った紙カバーに包まれた5冊の本がルカの注意を引く。
興味本位で1冊を手に取ると、両親のどちらかがかつて読んだ本だろう、とても古い本だった。
題名は『小公女』。
残してあるということはたぶん今でも好きな本なんだろう。
ルカは両親には内緒でその本を読むことにした。
特別本が好きなわけでも、別に本が嫌いなわけでもない男の子が、ふとしたきっかけで読み始める本が『小公女』だというところが面白いと、子どものころから『小公女』を知っていて、その頃からこのお話があまり好きではなかった私は思うのだけれど、ルカが本を読みながら、あれこれと考える様子を読み進めるにつけ、『小公女』もう一度読んでみようかしらという気になってくる。
自尊心とか自立心とか、親子とか友だちとか、一見何のつながりもなさそうな、本の中の世界と物語を読むルカ少年を取り巻く世界が、くっついたり離れたり時々重なったりする様も興味深い。
『小公女』を読み終えたルカ少年が、次に手を伸ばすのは『あしながおじさん』。
こちらは昔乙女の私にとっても得意分野といい本!と張り切って読み進めると、むむむっ!これがなかなか鋭い突っ込みの連続だ。
本が大好きな転校生カズサとのやりとりの中で、旧訳と新訳の違いにまでふれるシーンには思わず脱帽。
そうそう、一冊の本からいろんな方向に興味関心が広がっていくものなんだよね。
そうそう、読んだ本について誰かと語り合うって楽しいことだよね。
そうそう、それでもやっぱり自分の心の中だけに大事にしまっておきたい想いもまたあるものだよね。
本を読んでいる「ぼく」の気持ちにいちいち共感しながら、私もやっぱり本を読む。
小学生から読める本ではあるし、本が好きなあなたにも、そうでもないあなたにも安心してお勧めできる本ではあるが、一つだけ注意が必要なのは、もし薦める相手が、未読ではあるけれどこれから先、さしたきっかけもなしに、『小公女』や『あしながおじさん』にも手を伸ばしそうなお子さんであるならば、この本を読む前にまずはそちらを薦める方がいいだろう。
作品の構成上やむを得ないことではあるし、結末を知ってしまったからといって読む価値がなくなるわけではないとは思うが、作中でおもいっきりネタバレしているから。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:講談社
- ページ数:242
- ISBN:9784065142332
- 発売日:2019年01月17日
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