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DBさん
DB
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恋する男が放浪する話
この巻でまず登場するのは、珍しい話が大好きなペルシャの王様です。
古今の学問に通じた学者で詩匠でもある商人ハサンの評判を伝え聞いた王様は、さっそくハサンを呼び出して面白い話を所望します。
もしそれが面白い話だったら数々の贈り物をした上に宰相として取り立てるが、よい話を聞かせてくれなければ財産をすべて没収して追放という条件がすごい。
これを受けて一年の猶予をもらったハサンは、奴隷たちに金を与えて各方面へと送り出します。
期日ギリギリになって持ち帰られた話を王の前で披露することになるのだけど、その話とは。

アラビアンナイトによく出てくるように、子供に恵まれない不幸を嘆くエジプトの王様が登場します。
同じ悩みを抱えていた大臣をソロモン王の知恵を求めるようにと遣わします。
ソロモン王の答えは猿のような顔の蛇と魔神のような顔の蛇を射殺し、料理して妻に食べさせるようにというものだった。
霊験あらかただったらしく、エジプトの王と大臣にそれぞれ満月のような息子が恵まれた。
その王子サイフ・アル・ムルクが話の主人公となります。
成長した王子はソロモン王からの贈り物だった羽織に刺繍されていた乙女の姿に恋に落ちる。
会うこともなく魔王の王女に恋い焦がれた王子は、王女を求めてシナの国へと旅立っていった。
だが船が難破し、小舟であてもなくさすらっているうちに怪物に襲われ人食いの巨人に捕まり、筏で逃げ出したかと思えば鰐に襲われる。
まるでオデュッセウスのような話だった。
たった一人生き残った王子の旅はまだまだ続き、魔神に囚われた王女と出会います。
魔神の手から助け出した子の王女こそ、王子の恋する王女の義姉だった。
恋する王女とようやく対面を果たし、魔神の戦いに巻き込まれながらもめでたく結ばれて締めくくられます。

つづく「バッソラーのハサン」は、父親の遺産を蕩尽してペルシャ人に言われるがままに旅に出ることになったハサンの話だった。
ペルシャ人が錬金術で使う草を取りにやらされ置き去りにされるが、魔神の姫たちが住む城で保護される。
そこで七人の姫君たちと楽しく暮らしていたが、姫君たちの留守中に入ってはならないと言われた扉を開けて美しい泉で戯れる王女に恋します。
このくだりは6巻に出てきた羽衣の話とよく似ている。
羽衣を取り返し子供ともども自分の国へ帰ってしまった王女を追って世界を旅するハサンの熱意の話だった。

最後に「バグダッドの漁師ハリファー」と「バグダッドの漁師ハリフ」という似たような話が二話続く。
ハリフのほうがブレスブ版と括弧で書いてあるだけで細かい説明はついていないが、きっと編者によるバージョン違いを並べて載せたのだろう。
妻も娶れないほど貧しい漁師が魚の代わりに猿を捕まえ、教主を弟子にして破天荒なふるまいをするという話だった。
教主の寵姫クト・アル・クルブもいつか出てきたように麻薬をかがされ箱につめられて登場します。
さすがに漁師とはくっつかなかったけど、漁師に幸運を授けてくれました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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