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hackerさん
hacker
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セラピー・ドッグをテーマにした絵本というのは、案外少ないのではないでしょうか。本書は、マデリン(マディ)・フィンという少女とセラピー・ドッグを中心に据えた、2016年刊のシリーズ第一作です。
本書の作者リサ・パップは、次のサイトで、本書について、こう述べています。

https://www.goodreads.com/author/show/372569.Lisa_Papp

'Everyone knows dogs are masters at unconditional love. When a child senses they are accepted exactly as they are, their fears drop away. Doors open. It’s tough to put into words the beautiful bond between the animals and children. I hope this story shares a little bit of that magic.'

「犬が無条件の愛の達人であることは皆が知っています。子供は、自分がありのままに受け入れられていると感じると、怖がらなくなります。ドアは開かれます。動物たちと子どもたちの美しい絆を言葉で表現するのは大変です。この物語が、その魔法を少しでも表現できていることを願います」

この文章には、犬と暮らしたことのある方なら、誰もが共感するのではないでしょうか。


本書の主人公は、マデリン(マディ)・フィンという「字を よむのが だいっきらいな女の子」です。

「なにより だいっきらいなのは、こくごのじかん。
みんなのまえで 声をだして 本を よまなきゃ いけないってこと。

そんなときは、まるで ピーナッツバターが 口のなかに たくさん
はいっているみたいに、ことばが うまく でてこなくなるの。
『マディ、がんばって』って、先生はいう。
でもね、先生。わたしが つっかえたりすると、みんなが クスクスわらうの。
だから、わたし...だんだん がんばれなくなってしまうのよ」

ある土曜日、ママはマディを図書館に連れて行きました。マディは、図書館のテンプルさんにも「字を よむのが だいきらいな マディよ」とあいさつしますが、テンプルさんはにこにこしながら、マディを、奥の部屋へと案内します。

するとそこには、犬がたくさんいて、本を読んでいる子どもたちもたくさんいました。テンプルさんは、びっくりしたマディを、大きな白い犬の前に連れていき、こう言います。

「この子は、ボニー。よければ、この子に 本を よんであげてほしいの。
ボニーはね、おはなしを きくのが とーっても だいすきなのよ」

マディは、ひとめでボニーが気に入ります。

「ボニーは しろくまみたいに すっごく おおきくて まっしろで、
ふわふわで とびきり すてきな 犬だった!
だから『ボニーに、本をよんであげる?』って、ママに きかれたとき
おもわず『うん』って、ひきうけてしまったの」

「とちゅうで、なんども つっかえたけど、そんなこと
ボニーは きにしない。わたしのひざに おおきな まえあしを のせて、
ことばが でてくるのを、ただ しずかに じっと まってくれた」

それからの土曜日はいつも、マディは図書館でボニーに本を読むようになりました。

「ふしぎね。まちがえることを きにしなくてもいいのなら
本を よむことって とっても たのしい。
うまくよめるまで いつだって しずかに まってくれる ボニー
『ゆっくりで いいんだよ。まちがえても いいんだよ』って、
わたしに おしえてくれようと しているみたい」

そして、いつしか、「字を よむのが だいっきらいな女の子」ではなくなっていたのです。


本書の原題は、"Madeline Finn and the Library Dog"ですが、アメリカには実際に'library dog'がいて、本書で語られているような子どもたちとの交流をしています。ネットで少し調べたのですが、こういう試みがいつから始まったのかはよく分かりませんでした。ただ、2011年にテキサス州の小学校の図書館司書だったアッシュリー・ウェイブリングという方が、学校関係者の反対を押し切って、始めたという記事がありました。また、2007年にセラピー・ドッグのビジネスを立ち上げたキャロル・ユースターが直面した最初の問題は、条例により学校や図書館への犬の持ち込みが禁止されていたことという記事もありましたから、その辺りから始まった活動なのだろうと思います。日本にもセラピー・ドッグを活用している学校はありますが、命の尊さを実感してもらうというような例が多く、こういう具体的な学習と結びつけて活動している例は、あまりないようです。もちろん、日本が駄目で、アメリカが良いとか言っているわけではありません。ただ、セラピー・ドッグの可能性を意識しておくことは、大切だと思います。

マディを主人公とした絵本はシリーズ化されていて、全部で三冊出ていますから、順次読んでいこうと思います。
    • 作者と、たぶん本書のボニーのモデル
    • 原書より
    • 実際のlibrary dog
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hacker
hacker さん本が好き!1級(書評数:2281 件)

「本職」は、本というより映画です。

本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。

読んで楽しい:8票
参考になる:15票
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この書評へのコメント

  1. ぱせり2025-03-08 05:15

    'library dog'初めて知りました。この絵本、読みたいです。探してみます。

  2. hacker2025-03-08 07:53

    私も、この本で初めて知ったのです。ぱせりさんの書評を楽しみにしていますね。

  3. No Image

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