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たけぞう
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1800年代のゴシックホラーの中篇が四本です。
図書館でこの本が面出しで置いてあり、思わず手に取ってしまいました。表紙の絵はウォーターハウス作です。裏表紙も同じくで、好きな人はいるでしょう。作品社発行で、表紙と内容の雰囲気が合っていて、センスを感じました。

ウィルキー・コリンズ、ジョージ・エリオットを知っている人は多いとのことで、わたしもなんとなく聞き覚えがありました。メアリ・エリザベス・ブラッドン、マーガレット・オリファントと合わせて、四作品が収録されています。いずれも1800年代のイギリスの作家さんです。

子どもの頃、わたしはホームズが好きで、ポーも少し読んでいました。ホラーは大の苦手で、いまでも読めません。しかし、ノスタルジックの雰囲気のホラーや、小泉八雲の怪談は読めるので理由が気になっていました。フランケンシュタインは純粋なホラーではないと思うのですが、恐怖小説という評価もあります。わたしはしっかりと楽しめたので、ホームズの時代のイギリス文学やその周辺国の物語と考えたら、共通点があるように思いました。どうやらわたしは、ゴシックホラーが好きなようなのです。

本書は、そんなわたしにとって満足のいく作品集でした。コリンズ作の狂気のマンクトン。現在の常識ではかると全然科学的じゃないし、医学も未発達でカンコツが幅を利かせていた時代です。でもこれが当時の常識だと思うと、自分の判断基準が揺さぶられます。

狂気の起こる理由が、ゴシックホラーの要素なのですが、わたしは結構好きでしたね。200年前の当時、なんだか分からない奇妙なことは日常で起きていて、現代なら医学的に説明がつくことでも、当時は恐れるしかなかったのでしょう。そんな空気感が行間から伝わってきました。これは、同じ時代の作家さんに共通する部分です。

わたしは、現代なら分かることが昔は分からなかったという認識のずれが、ゴシックホラーの魅力だと思っています。分からないぶん、登場人物の考察がたくさん詰まっているのですが、物語の展開は遅く、くどくてもっさりしたように感じる人もいるでしょう。さくさく、すっきりとは真逆のゴシックホラー。当時はセンセーション小説と称されていたそうで、なるほどと思いました。

死んだと思っていた人が生きていたとか、あの世とこの世が近い感覚があるのも、ゴシックホラーの魅力です。この本は、200年前の空気をたっぷり運んでくれますよ。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

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