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三太郎さん
三太郎
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2017年にNHKでドラマ化された小説。一見たやすそうな五つのお仕事についての物語。
作者の津村さんの名前はこの作品で初めて知った。実はドラマの方を先に見ていて面白そうだったので手に取った。

不思議な小説で、主人公は30代の女性で、およそ1年の間に職安で案内された5種類の仕事を次々経験するが、結局は安定した仕事には就かないままで小説は終わる。その五つの仕事は互いに全然違うがどれもありそうでなさそうな、不思議な仕事ばかりだ。

「お仕事小説」と呼ばれるジャンルがあるらしい。「企業小説」というジャンルもあって、微妙に重なっているようなのだが、この本は企業小説には入らないだろう。企業小説の典型は「半沢直樹」のようなものらしいが、僕はとても読む気にならない。企業内のどろどろした話は僕の古いトラウマを呼び起こしかねないし。

「お仕事小説」とは、あるブログによれば、「主人公が仕事に取り組む姿を描き、プロ意識や職務を全うする大切さを教えてくれる」ものだとか。だとすればこの本はお仕事小説のジャンルからも逸脱している。主人公は与えられた仕事にのめり込む性質があるが、それが災いしてか、長くはその仕事を続けられない。彼女は以前の職場で燃え尽きてしまった経験があり、仕事に入れ込まないように自ら戒めているのに、ついやり過ぎてしまうのだ。

彼女の五番目の仕事は、大きな森林公園の奥まった所にある小さな小屋の番人のような仕事だった。そこで彼女はかつて自分が就いていた仕事の同業者の男性が、訳あって仕事を辞めて、森に隠れて野宿しているのを見つけ出す。その男性は公園の仕事を手伝うようになり、主人公は十数年続けて辞めてしまっていた仕事にまた戻ろうかと考えるところで小説は終わります。

大抵の人は生きていくために自分で選んだ仕事に就きますが、続けられなくなることもある。そんなときは一旦その仕事を離れてみるのもよいかも知れませんね。この本は「転職小説」というジャンルになるのかも。

僕自身も62歳で転職して、自分のやりたかったことが最後に出来たような気がしています。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:826 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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