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かもめ通信
レビュアー:
昨日まではただの川だったのに、ある日を境に容易に渡ることができない国境になってしまう。そんな歴史がブルガリアにもあったのだなあと、今更ながら“遠い異国”に思いをはせる。
翻訳家の藤井光さんが手がけた新刊が
ブルガリア出身の作家の作品だと聞いていそいそと手にした本だ。

といってもブルガリアのことはほとんど何も知らず、
ヨーグルトと琴欧洲とリラの僧院ぐらいしか思い浮かばない。
だからこそ、読んでみたいと思ったわけでもあるが。

原題はEast of the West
元は英語で書かれた8つの作品を収録したデビュー短篇集で
著者自ら翻訳したブルガリア語版は母国でベストセラーとなったのだとか。

愛憎、貧困、社会体制、歴史、信仰、いいつたえ等々
様々な要素を含みながら語られる物語たちは
それぞれに個性的ではあるが、
いずれの作品も荒々しさはなく、しみじみとした切なさが印象的だ。

期待に胸を膨らませて米国に留学した青年と、
筋金入りの共産主義者であるブルガリアの祖父とのやりとりから
浮かび上がる意外なものとは…。
             (「レーニン買います」)

脳梗塞で倒れた妻を介護する70代の主人公は、
妻が10代の独身時代に受け取った恋文をみつけ
この手紙を書いたのが自分であったらよかったのにと思う。
              (「マケドニア」)

ある日を境に川が国境となり、親しかった人々が離ればなれになる。
年に一度、お咎めなしに会うことの出来る祭りの日に
出逢った男女の恋の行方は……。
川の向こうの「西側」に憧れを抱きながら成長する青年の思いは…。
             (「西欧の東」)

あたりがお気に入り。

ブルガリアとセルビア
ブルガリアとトルコ、
ブルガリアのムスリム
ブルガリアのロマ
など作品の中に浮かび上がるあれこれも興味深かった。

「夜の地平線」に出てくる「バグパイプ」に
どうしてもスコットランドのそれを思い浮かべてしまって違和感を覚え
「ブルガリア/バクパイプ」で検索して納得する。
ガイダとも呼ばれるブルガリアのバクパイプは
スコットランドのそれよりもっと素朴というか
かなり生々しい「山羊の皮」だった。


[収録作品]
マケドニア
西欧の東
レーニン買います
手紙
ユキとの写真
十字架泥棒
夜の地平線
デヴシルメ
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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