三太郎さん
レビュアー:
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小川洋子さんが1998年に発表した不思議な短編集。
僕にはその短編小説を好んで手に取ってしまう作家さんがいる。例えば、川上弘美さんと小川洋子さんがそうだ。
小川さんのこの短編集は一つが20ページ前後の11の短篇からなるが、頭の短編が次の短編と緩くつながり、さらにその短篇が次の短篇につながり、といった具合に一つひとつの短篇が時系列を崩しながら部分的に重なり合って一つの物語になっていく。
最初の「洋菓子屋の午後」に出てくる菓子職人は次の「果汁」に出てくる女子高生の後の姿の様だし、その女子高生が食べるフルーツのキウイは次の「老婆J」が作って置いていったものらしい。そして「老婆J」に出てくる作家の女性は初めの「洋菓子店の午後」の書き手のようでもあるし、「トマトと満月」に出てくる犬を連れた自称作家のオバサンのようでもあるが、違うかもしれない、という曖昧さがあって読む方は細心の注意が必要だ。
この女流作家は著者がモデルということはないかな。
この女流作家の系列のお話以外に、詐欺師の変な叔父さんが出てくる系列の話や、猟奇殺人を行う鞄職人の話、愛人に殺されてしまう医師の話などが緩く繋がりながら組み込まれている。
最終話の「毒草」では投棄された冷蔵庫の中から少年の遺体が見つかり、最初の「洋菓子店の午後」へと物語が回帰していく。
時空間が歪んでいるような奇妙な感覚を覚える不思議な連作でした。
小川さんのこの短編集は一つが20ページ前後の11の短篇からなるが、頭の短編が次の短編と緩くつながり、さらにその短篇が次の短篇につながり、といった具合に一つひとつの短篇が時系列を崩しながら部分的に重なり合って一つの物語になっていく。
最初の「洋菓子屋の午後」に出てくる菓子職人は次の「果汁」に出てくる女子高生の後の姿の様だし、その女子高生が食べるフルーツのキウイは次の「老婆J」が作って置いていったものらしい。そして「老婆J」に出てくる作家の女性は初めの「洋菓子店の午後」の書き手のようでもあるし、「トマトと満月」に出てくる犬を連れた自称作家のオバサンのようでもあるが、違うかもしれない、という曖昧さがあって読む方は細心の注意が必要だ。
この女流作家は著者がモデルということはないかな。
この女流作家の系列のお話以外に、詐欺師の変な叔父さんが出てくる系列の話や、猟奇殺人を行う鞄職人の話、愛人に殺されてしまう医師の話などが緩く繋がりながら組み込まれている。
最終話の「毒草」では投棄された冷蔵庫の中から少年の遺体が見つかり、最初の「洋菓子店の午後」へと物語が回帰していく。
時空間が歪んでいるような奇妙な感覚を覚える不思議な連作でした。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:中央公論新社
- ページ数:241
- ISBN:9784122041783
- 発売日:2003年03月01日
- 価格:680円
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