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darklyさん
darkly
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最後の「日本ホラー小説大賞」大賞受賞作品。作品の出来よりも、これホラーなのか?という疑問が。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

大学職員でエジプト研究者の二宮が正規の発掘現場ではないところからアンク(装飾品)を持ち帰ったことにより惨劇が起こる。その後そのアンクを手に入れた者は次々と死を迎える。二宮の同僚でありエジプト研究者の日下美羽はアンクの呪いを解くため発掘された遺跡にそれを戻すべくエジプトにおいて遺跡の捜索を開始した。呪いによって死んだ者は死ぬ間際に「黒いピラミッド」の存在を仄めかす。その正体は?

正直に言って面白くありませんでした。残りページ数が少なくなるにつれ、結末への期待は萎んでいき、もう早く読み終わりたいとページを捲る手が止まりませんでした。ホラーとしての期待を持って読もうとしたから面白くなかったという方が正確かもしれません。SF、ホラー、ファンタジーは結末の持っていき方一つで分かれると思うのですがこの物語はどのジャンルとしても中途半端な印象が拭えません。

巻末の選評で貴志祐介さんが「思い切ってSF的に大風呂敷を広げ、不条理に終わっても良かったかも知れない。」と書かれていましたが正に同感です。つまりラブクラフトのクトゥルー神話における旧支配者のような圧倒的な力による不条理な展開だと二番煎じ感があったとしてもまだ良かったような気がします。

結局、美羽は助かり現実の世界に戻るという展開なのであれば、やはりなぜ呪われるのか?どうして助かったのか?美羽は黒いピラミッドからある役割を担って最後にまた遺跡を訪れるところで物語は終わるのですが、美羽がなぜその役割に選ばれたのか?このような疑問にある程度答えがないと怪異のアイデアだけの勝負になってしまうような気がします。

選考委員の三名(綾辻さん、貴志さん、宮部さん)はこぞってこの作品のエジプト考古学の専門的な知識・情報と物語のバランスを評価されていますが、それって小説を褒める言葉であったとしても、ホラー小説を褒める言葉なのでしょうか?何か不美人な人を褒めるのに性格を持ち出すのとよく似ているような。逆に言えばホラーではなくインディー・ジョーンズあるいはトゥームレイダーのようなアドベンチャーが主の物語にしたほうが面白かったのではないかと思います。

「日本ホラー小説大賞」は2018年が最後で今年からは「横溝正史ミステリー&ホラー大賞」に吸収されるようです。「日本ホラー小説大賞」は「パラサイト・イヴ」「黒い家」「ぼっけえ、きょうてえ」など数々のホラーの名作を生み出してきた賞ですが近年は毎年大賞が出るわけでもなく、ここ2年は大賞なしということで作品の質の低下がみられていたのかもしれません。となるとどうしても「最後は大賞を選んでほしい」という運営側の強い意向があったのではないかと勘繰ってしまいます。貴志さんが選評の最後に「けっしてご祝儀ではない。我々選考委員三名のファイナルアンサーである」とわざわざ書かれてあるのでひねくれている私は余計に。

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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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この書評へのコメント

  1. ランピアン2019-02-05 22:06

    「もう早く読み終わりたいとページを捲る手が止まりませんでした」には笑わせていただきました。

    何も知らなければ私も思わず手に取ってしまいそうな物語なので、信頼できるレビュアーに読む価値なしと断じていただけるのは、時間の節約の観点から実にありがたいことです。

  2. darkly2019-02-05 22:13

    信頼できるなどと恐れ多いです。性格的に読みだした本はよほどのことがない限り最後まで読むことが多いのでそういった状態になることがたまにあるのです(笑)

  3. ランピアン2019-02-05 22:17

    私も必ず最後まで読みますね(笑)。最近流行の行動経済学からすれば、サンクコストを回収しようとする無駄な努力だということになりましょうね。

  4. darkly2019-02-06 06:06

    おっしゃる通りだと思います(笑)それと、途中で評価を下したとしても最後まで読むと評価が変わる本もたまにあるというのもありますね。

  5. ランピアン2019-02-06 06:59

    そのとおりですよね。部分的には良い作品というのもありますから、あんまり早い段階で思い切るのもどうかと感じます。

    私の場合、信頼できる誰かの評を待って読むというセコい読書法を採っているので、面白くない作品にあまり当たらないということもありますが(笑)。

  6. マーブル2019-02-06 20:37

    子供が興味を持ち、買おうかな?と言っていたのですが書評を拝見してとめてしまいました。

  7. darkly2019-02-06 20:43

    マーブルさん、いや私の見方がひねくれているだけなので(笑)ただ最初から結構ドぎつい不倫の場面から始まるのでご注意を(笑)

  8. darkly2019-02-06 21:05

    ランピアンさん、私は特に小説は全く情報を持たずに、場合によってはジャンルも知らずに読むのが結構好きなのです。なのでかなり作品レベルのボラティリティが大きいです(笑)

  9. マーブル2019-02-06 22:35

    >ドぎつい不倫の場面から始まるのでご注意を(笑)
    検閲して正解でした。(笑)

    私自身があまり最近の作家さんを読まないせいもありますが、まずは読んで欲しい本がたくさんありますので、無理に読まなくても、と。

  10. ランピアン2019-02-06 22:46

    >darklyさん

    ボラが大きいわけですね。さすが金融マン(笑)。

    たぶんdarklyさんのやり方のほうが、豊かな読書経験に結び付きやすいと思いますよ。思いがけない好著に当たった喜び、反対にとんでもないババを引いた悔しさ、私のように安全運転だと、そういう喜怒哀楽とは無縁ですからね。

  11. ランピアン2019-02-06 22:49

    >マーブルさん

    たしかに。若い頃に読むべき本もありますからね。ネットのおかげで古書も入手しやすくなりましたから、気になるなら大人になってから手にすることもできますし。

  12. マーブル2019-02-06 23:01

    先日「そろそろラノベでもないか」と本棚を整理していました。
    なかなか好みまでは一致しませんが、無理強いされるのも嫌でしょうし、興味を持ったときに「ほらよ」と渡せて、感想を語り合えるといいのですが。

  13. そうきゅうどう2019-02-12 22:59

    >もう早く読み終わりたいとページを捲る手が止まりませんでした。

    うーむ、すばらしいページターナーですなー(笑)。

  14. darkly2019-02-13 06:24

    コメントありがとうございます。そうきゅうどうさんはそのようなことはありませんか?(笑)

  15. そうきゅうどう2019-02-13 08:38

    あります、あります(笑)。

  16. No Image

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