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oldmanさん
oldman
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革命時フランスを震撼させたムッシュー・ド・パリ サンソンファミリー7代にわたる年代記。この一族の歴史はフランス動乱の歴史でもあるのです。
実はこの本は10年以上積ん読本としてずっと本棚の片隅に眠っていました。 何故今頃になって引っ張り出したのかと言えば、某ビブリオバトルでこれイノサンを紹介されたので、興味が湧き読み始めたという訳です。

ところがこのコミックを読んでいくと、些か疑問に思える点が目につきます(例えば主役のシャルル・アンリ・サンソンの実妹マリー・ジョゼフはランスの死刑執行人ジャン・ルイ・サンソン【ムッシュー・ド・ランス】と結婚しましたが、彼女自身が執行人であった訳では有りません。)

半分ほど読み終わったところで、読み進む前にノンフィクションとしてのサンソン一族を知っておかないといかんのでは無いかと手に取りました。

積んでおいたのは、「今更フランス革命に関して読まなくても良いかかなぁ」という思いが有ったためでもあり、ジャック・ケッチ等の英国の死刑執行人に比べる面白味に欠けるのでは無いか、という見方をもっていた部分も有ります。

しかし、読み始めると、面白いことこの上ないノンフィクションでした。
サンソンと言うとフランス革命時に活躍した4代目シャルル・アンリ・サンソンが有名(イノサンの主役も彼です)ですが、実はサンソン一族がムッシュー・ド・パリ(首都パリの死刑執行人の渾名)となったのは、シャルル・アンリの曾祖父シャルル・サンソンIです。
その息子シャルルIIは父の後を継ぎそしてこの地位は三代目のジャン・バチストそしてもっとも有名な死刑執行人シャルル・アンリ・サンソンへと引き継がれていくのです。

なぜこの一族はこの地位を子供へと伝えたのでしょう? それはヨーロッパのキリスト教圏では死刑執行人はもっとも蔑まれた職業の一つだったからです。
彼らはその出自から他の職業に転職することも、子供を他の職につけることも出来ませんでした。その為サンソン家は7代に渡ってパリの死刑執行人を続ける事となるのです。

本来は重い剣による斬首には技術が必要でしたし貴族のみの特権(庶民は絞首刑が一般的)でしたが、革命を経て死刑さえ平等にということ、そして刑死者の苦痛を軽減するという名目で「ギロチン」が発明された為、名目上のみの執行人となったサンソン(実際の仕事は殆ど助手が行った)でしたが、恐怖政治の下シャルル・アンリが執行した刑死者の人数は2700人を越え、数えられている限りでは歴史上2位(1位はドイツのヨハン・ライヒハートの3165人)となりました。

フランスでは特に他の国と異なり、死刑執行人の俸給が少なかった事も、サンソン家が苦労した理由となるでしょう。王制時には多くあった特権(ある種の徴税権)がありましたが、革命を経る内にどんどん俸給は下がっていきましたがサンソン家は処刑者の死体を利用して、医学の技術を磨くことで、医療を副業とし収入を確保しましたが時代の流れと共にそれも先細りとなっていきました。

この本はシャルル・アンリ・サンソンを中心としたサンソン家7代に渡る年代記であると共に、フランス革命を裏から描いた、優れた歴史書でもあります。

僕が今回読んだのは1977年に刊行された第1版ですが、10年後の1987年に出版社を替えて再版 更には2014年に新装版が出ていることを見ると、サンソン家とフランス革命を描いた物としては、定番なのでは無いかと思われます。

サンソン家を描いたノンフィクションとしては既に他の方がレヴューを書かれている 死刑執行人サンソンがありますが未読なのでいずれ読んでみたいと思います。

またミステリーとしては ディクスン・カーの赤後家の殺人 が有名でこれも中々面白い一冊です。

余談ですが本書が書かれた1972年当時 パリ市の電話帳には29件のサンソンが登録されていますが、そのいずれも「ムッシュー・ド・パリ」との関係を否定しました。しかしモンマルトル墓地27番のサンソン家の墓には前年・当年共 ゼラニウムの鉢が供えられていたそうです。

今後は積んである英国などの死刑執行人の記録や、我が国の山田浅右衛門の記録も読んで行きたいと思います。

さぁ これで「イノサン」の続きが読めるぞε=┌(;・∀・)┘
    • シャルル・アンリ・サンソン(後年のイメージ図)自身は死刑廃止論者で、人当たりの良い紳士だった。
    • ルイ16世の首を捧げるシャルル・アンリ・サンソン
    • 今もパリのモンマルトル墓地27番地にあるサンソン家の墓
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oldman
oldman さん本が好き!1級(書評数:576 件)

最近歳のせいか読書スピードが落ちているにもかかわらず、本好きが昂じて積読本が溜まっております。
そして、歩けるうちにとアチコチヘ顔を出すようになりました。

現在はビブリオバトルを普及することに力をいれております。
その為読書メーターにはコミュニティーも作りました。
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いささかひねくれた年寄りですがよろしくお願いいたします。
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この書評へのコメント

  1. あかつき2018-11-12 18:46

    わたしは「死刑執行人サンソン」の方を読んでこの本に興味を持ちましたが,まさかお持ちの方がいらっしゃるとは!

  2. oldman2018-11-12 19:19

    先生 この本はなかなかお薦めです。読みやすくて且つ面白いノンフィクションですぞ。今はこんな形らしいです。

  3. あかつき2018-11-12 21:42

    先生は勘弁してください、、、プレイのようです、、、笑

  4. oldman2018-11-13 00:37

    失礼いたしましたm(_ _)m でもカタカナで書くよりは良いと思いますwww

  5. あかつき2018-11-13 09:51

    それはそれで燃えますが、、、ハァハァ(//∇//)

  6. No Image

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『パリの断頭台―七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記 (1977年)』のカテゴリ

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