efさん
レビュアー:
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それはいつか消えてしまうものだから
なんとも奇妙な小説です。
不条理極まりない状況が連綿と続き、また、かなりお下劣でもあります。
主人公は……名前を思い出せません。
後に、便宜上(?)、ヘンドリックと呼ばれることになる青年なのですが。
彼は、汽車の食堂車で食事をしようとしているところです。
すると、突然汽車が止まり、灯が消えてしまったのです。
行先を尋ねる男の声が聞こえるのですが、思い出せません。
いきなり誰か分からない男がのしかかって来て凌辱されそうになります。
やめてくれ!と叫ぶと灯が点き、目の前には老人が座っていました。
この老人が自分を犯そうとしたのか?
と、思うのですが、襲ってきた男の感触は老人のものではありませんでした。
老人は、自分はジークムント・フロイト博士であると名乗りますが、青年は自分の名前も、自分が誰なのかも思い出せないのです。
「フロイト博士は死んだはずです!」
いやいや、同姓同名の別人なのだけれど、やはり心理学者だと言います。
そこへ車掌が検札にやって来るのですが、持っているはずの切符もありません。
「そう言えば君はさっき、男に襲われたと言ったな。わしじゃなければ車掌が襲ったのではないかとも言っておったが。」
太った車掌は、自分はそんなことはしていないと憤慨します。
「それが本当かどうか確かめるためには、車掌がもう一度襲ってみてその感触を確かめればよい。」
なんだかわけの分からない展開となり、青年は再び暗闇の中車掌から襲われます。
やめてくれ!
気がつくと、青年、フロイト博士、車掌のマルコヴィッツは、いつの間にか汽車から降りて雪が降りしきる外に立っていたのです。
汽車はもう出発してしまったとか。
そして、青年はズボンを履いていないのです。
マルコヴィッツに脱がされた!と主張したのですが、フロイト博士は「最初から履いていなかったじゃないか。」と言うのです。
マルコヴィッツは、スカートを持ってきてこれでも履いていろと言います。
こんな雪の中に立っていては凍え死んでしまう。
やむなくスカートを履き、町を探して歩きだす3人。
そして、3人はフリフシュタイン城に招き入れられます。
ここでも不条理なことばかりが続きます。
ディナーに招待されますが、不手際があったとかで、食べられるものは大量の各種パンばかり。
青年は、便宜的にヘンドリックという名前を名乗ることにするのですが、城の伯爵はヘンドリックのことを知っていると言います。
ヘンドリックはヨーデルの世界的権威で、明日、講演をし、ヨーデルの実演もする手配になっていると言います。
娘のアデルマも楽しみにしていると。
なんだって?
ヨーデルのことなんて何も知らないぞ。
その後も城の中では不条理なことばかりが起き、ヘンドリックは永遠の13歳だというアデルマ(どう見ても20歳以上)に一目ぼれしてしまいます。
一体これはどういう物語なのでしょうか?
合理的な展開は一切拒否されており、ヘンドリックはしばしば気を失い、その度に場面転換が起きます。
それは、夢の中の夢の、そのまた夢の中……なのだと言われるのですが。
そう、まるで夢の連続のような物語なのです。
自分が夢から目覚めた時も、夢は続いているのだ。
そしてまた、その夢に戻って来ることがあるのだというのですけれど……。
でも、じゃあ、どれが夢で、どれが現実だというのでしょうか?
ヘンドリックは、あることをきっかけにしてすべてを知ります。
自分は作家志望だったのだ、この世界は自分が描き出した作中の世界なのだと。
世の中は、楽しいことも幸せなこともいつかは終わってしまうものだ。
だから、自分は現実の楽しいこと、良いことすべてを拒否したのだ。
いつまでも続いていくものは、自分が描き出した世界しかないのだ。
そう、ヘンドリックは知ったというのです。
だから、この世界も自分が書いた世界だと知ったと。
この物語は、永遠に循環する物語です。
ヘンドリックは、この物語を書き、何度も書き直しています。
だから、この夢のような物語の世界はいつまでも変化しながら続いていくのだというのです。
あー……。
なんとも奇妙な作品でした。
ユーモラスに書こうとしているのだということは分かるのですが、それが面白いと感じるかどうかは読者次第でしょうか。
私としては、もう一つという印象を受けましたが、ハマる人はハマるかもしれません。
とにかく、すこぶる奇妙な話を読みたいという方はトライされてみては?
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
不条理極まりない状況が連綿と続き、また、かなりお下劣でもあります。
主人公は……名前を思い出せません。
後に、便宜上(?)、ヘンドリックと呼ばれることになる青年なのですが。
彼は、汽車の食堂車で食事をしようとしているところです。
すると、突然汽車が止まり、灯が消えてしまったのです。
行先を尋ねる男の声が聞こえるのですが、思い出せません。
いきなり誰か分からない男がのしかかって来て凌辱されそうになります。
やめてくれ!と叫ぶと灯が点き、目の前には老人が座っていました。
この老人が自分を犯そうとしたのか?
と、思うのですが、襲ってきた男の感触は老人のものではありませんでした。
老人は、自分はジークムント・フロイト博士であると名乗りますが、青年は自分の名前も、自分が誰なのかも思い出せないのです。
「フロイト博士は死んだはずです!」
いやいや、同姓同名の別人なのだけれど、やはり心理学者だと言います。
そこへ車掌が検札にやって来るのですが、持っているはずの切符もありません。
「そう言えば君はさっき、男に襲われたと言ったな。わしじゃなければ車掌が襲ったのではないかとも言っておったが。」
太った車掌は、自分はそんなことはしていないと憤慨します。
「それが本当かどうか確かめるためには、車掌がもう一度襲ってみてその感触を確かめればよい。」
なんだかわけの分からない展開となり、青年は再び暗闇の中車掌から襲われます。
やめてくれ!
気がつくと、青年、フロイト博士、車掌のマルコヴィッツは、いつの間にか汽車から降りて雪が降りしきる外に立っていたのです。
汽車はもう出発してしまったとか。
そして、青年はズボンを履いていないのです。
マルコヴィッツに脱がされた!と主張したのですが、フロイト博士は「最初から履いていなかったじゃないか。」と言うのです。
マルコヴィッツは、スカートを持ってきてこれでも履いていろと言います。
こんな雪の中に立っていては凍え死んでしまう。
やむなくスカートを履き、町を探して歩きだす3人。
そして、3人はフリフシュタイン城に招き入れられます。
ここでも不条理なことばかりが続きます。
ディナーに招待されますが、不手際があったとかで、食べられるものは大量の各種パンばかり。
青年は、便宜的にヘンドリックという名前を名乗ることにするのですが、城の伯爵はヘンドリックのことを知っていると言います。
ヘンドリックはヨーデルの世界的権威で、明日、講演をし、ヨーデルの実演もする手配になっていると言います。
娘のアデルマも楽しみにしていると。
なんだって?
ヨーデルのことなんて何も知らないぞ。
その後も城の中では不条理なことばかりが起き、ヘンドリックは永遠の13歳だというアデルマ(どう見ても20歳以上)に一目ぼれしてしまいます。
一体これはどういう物語なのでしょうか?
合理的な展開は一切拒否されており、ヘンドリックはしばしば気を失い、その度に場面転換が起きます。
それは、夢の中の夢の、そのまた夢の中……なのだと言われるのですが。
そう、まるで夢の連続のような物語なのです。
自分が夢から目覚めた時も、夢は続いているのだ。
そしてまた、その夢に戻って来ることがあるのだというのですけれど……。
でも、じゃあ、どれが夢で、どれが現実だというのでしょうか?
ヘンドリックは、あることをきっかけにしてすべてを知ります。
自分は作家志望だったのだ、この世界は自分が描き出した作中の世界なのだと。
世の中は、楽しいことも幸せなこともいつかは終わってしまうものだ。
だから、自分は現実の楽しいこと、良いことすべてを拒否したのだ。
いつまでも続いていくものは、自分が描き出した世界しかないのだ。
そう、ヘンドリックは知ったというのです。
だから、この世界も自分が書いた世界だと知ったと。
この物語は、永遠に循環する物語です。
ヘンドリックは、この物語を書き、何度も書き直しています。
だから、この夢のような物語の世界はいつまでも変化しながら続いていくのだというのです。
あー……。
なんとも奇妙な作品でした。
ユーモラスに書こうとしているのだということは分かるのですが、それが面白いと感じるかどうかは読者次第でしょうか。
私としては、もう一つという印象を受けましたが、ハマる人はハマるかもしれません。
とにかく、すこぶる奇妙な話を読みたいという方はトライされてみては?
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
お気に入り度:





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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:角川書店
- ページ数:327
- ISBN:9784047915251
- 発売日:2006年09月01日
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