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休蔵さん
休蔵
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前作『ドラキュラ一八八八』から月日は流れ、第一次世界大戦の真っただ中のヨーロッパが舞台。対戦の仕掛人がドラキュラという設定で、ドイツのカイザーをコントロール下に置いていた・・・さらに、もう1話追加!
 前作『ドラキュラ一八八八』から30年の月日が流れた時代を舞台とした「鮮血の撃墜王」。

 ヨーロッパは第一次世界大戦の戦火に包まれていた。
 戦争を引き起こしたのはドラキュラ。
 ドイツのカイザーの取りついたドラキュラは、ヨーロッパを恐怖で支配せんと特殊な飛行隊を作り上げていた。
 その飛行隊、レッド・バロンは謎に包まれていた。
 飛行隊の謎を暴くため、コンドル飛行隊による決死の偵察飛行が試行された。
 その命を下したのはイギリスのディオゲネス・クラブ。

 前作の主人公はディオゲネス・クラブに所属していたボウルガードだった。
 すでに64歳となった温血者の彼は、それ相応に齢を重ね、権力を握り、苦悩に押しつぶされそうになっていた。
 本作でボウルガードは脇役として登場し、主人公には若き諜報員のエドウィン・ウィンスロップがあてがわれている。
 ウィンスロップは偵察用のカメラを手にヴァンパイアのボールが操縦する飛行機に乗り込んだ。
 そして、ドラキュラが編成した飛行隊の謎を掴むことに・・・

 世界が激動の渦に巻き込まれる時、その中心にはドラキュラがいる。
 その設定でキム・ニューマンをドラキュラシリーズを重ねていく。
 実在の人物と架空の人物やモンスターをうまく絡みつかせながら、歴史事象の中に配置していく手法が本シリーズ最大の魅力と感じる。
 本作は舞台を第一次世界大戦に設定しているが、どの闘争に照準を合わせても重厚なストーリーが醸し出されるに違いない。

 第一次世界大戦と言えば、近代兵器が次々と登場したことで有名だ。
 タンクはもちろん、機関銃も毒ガスの導入されている。
 そして、何より飛行機。
 当初は偵察用としてごく少数の導入だったようだが、戦争中に異様なほどの増加率を示したとのこと。
 ここに謎の飛行隊をぶつけてきたところが本作のうまさと言えるだろう。

 さらに5年が経過したもう1話、「ヴァンパイア・ロマンス」を掲載。
 「鮮血の撃墜王」では姿を現さなかったジュヌイエーヴが主役の座に推されて登場。
 ドラキュラ並みの生を全うしてきた長生者のジュヌイエーヴが、ディオゲネス・クラブのエドウィン・ウィンスロップに誘われてトラブルの渦へと巻きこまれていく。
彼女が引き出されたのは、「猫の王」への立候補権を長生者だけが有するから。
 そして、候補者が集まる白黴館で事件は起きた・・・

 本作は出版社をタイタン・ブックスに移すにあたり、様々なサービスを付加している。
 「ヴァンパイア・ロマンス」もその一環だ。

 人間とヴァンパイアが奇妙な共生を見せるキム・ニューマンのドラキュラシリーズ。
 世界のごたごたの背後にドラキュラ在りという設定は、時代を飛び越えながら傑作を産み落とす雰囲気を漂わせる。
 ドラキュラやジュヌイエーヴが転化した15世紀を舞台とした物語にも触れてもらいたい。
 いくらでもシリーズを重ねることができる可能性を思わせ、期待が膨らむばかりだ。
 
   
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:453 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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