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祐太郎さん
祐太郎
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6ページでもホラーは書ける。ちょっとした異質なものへの気持ちの揺らぎとなんらかの象徴が重要 #カドブン夏推し2023
私は普段、ほとんど小説を読まない。夏のフェア活動のときだけ1年分を読み溜めするかのように読み漁る。とはいえ、小説にも好き好みはあり、現代ホラーとミステリーは正直苦手である。

でも、このフェア活動を通じて読むと新しい発見に出会える本も少なくない。

まさにこの本がそれである。

直木賞作家・辻村深月の作品を初めて読んだ。主人公はごく普通の人ばかりであり、語り方もごく普通に街なかにいる人たちのそれである。独特なリズムと詳細な空間描写で刻む宮部みゆきの『あやし』とは違う。読みながら、ホラー小説はちょっとした異質なものへの気持ちの揺らぎとなんらかの「象徴」が重要な要素なんだなと思った。
※ホラー小説が好きな人にとってはそんなの当たり前だよと言われそうだけれど、この分野を読まない人にとってはこういう発見も新鮮なのですよ。

この本は短編集であり、260ページ余りに13編が登場する。1編あたり20ページぐらいであるが、なんと6ページにまとめられたものがある。『丘の上』と『マルとバツ』である。

ここでは『マルとバツ』を紹介する。深夜スーパーに行くと入口の脇に未就学児のような女の子がいる。明らかに異質な存在である。声をかけて飴をあげた。ふと気づくとそこに少女は存在せず「〇」と書かれていた。次に来店した時もいたけれど躊躇して声をかけなかったら「×」と書かれていた。

そう、ちょっとした異質なものは女の子、象徴は「〇」「×」。それだけなら町の噂話で終わりそうなレベルであるが、ラストにこの二つを一気に積み上げてくる。これをわずか6ページで登場人物の気持ちの揺れも含めて書ききるのは脱帽した。

こういう出会いと発見があるのが、夏のフェア活動である。ありがたや。
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祐太郎
祐太郎 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2351 件)

片道45分の通勤電車を利用して読書している
アラフィフ世代の3児の父。

★基準
★★★★★:新刊(定価)で買ってでも満足できる本
★★★★:新古書価格・kindleで買ったり、図書館で予約待ちしてでも満足できる本
★★★:100均価格で買ったり図書館で何気なくあって借りるなら満足できる本
★★:どうしても本がないときの時間つぶし程度ならいいのでは?
★:う~ん
★なし:雑誌などの一言書評

※仕事関係の本はすべて★★★で統一します。

プロフィールの画像はうちの末っ子の似顔絵を田中かえが描いたものです。
2024年3月20日更新

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