かもめ通信さん
レビュアー:
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人はなぜ「物語」を求めるのか?人はなにを「物語」に求めるのか?
話は過疎化の進む宮崎県のとある町で
木材を伐採中の谷口大祐という人物が事故死したところから始まる。
谷口は数年前にその町に移り住んできた男で
離婚して子ども連れでUターンしていた里枝と結婚し
二人の間に子どもも生まれて幸せに暮らしていたはずだった。
生前、彼は老舗旅館の次男坊で両親や兄と折り合いが悪く
実家とは縁を切り二度と帰らないつもりだと言っていたが
亡くなったとあっては連絡しないわけにもいかなかった。
訃報を聞いて駆けつけた兄は、遺影をみておどろく。
そこの写っていたのは見ず知らずの男の顔だったのだ。
自分の夫は一体誰で、どんな過去を持っていたのか?
動揺し混乱した里枝が頼ったのは
前夫との離婚の際に世話になった弁護士の城戸だった。
実を言うと著者の作品を読むのはこれが初めて。
Twitterで時折見かけるつぶやきには共感を覚えることが多いので
どんな作品を書く人なのかと気になっていたところ
とある筋から薦められて手にした本だ。
予備知識なしに読み始めた冒頭で
(ああこれはミステリだったのか!)と思ったのだが、
読み進めていくうちに
ミステリ仕立てではあるけれど、
謎解きだけがテーマではないことに気づく。
他人の名前とその過去を背負って生きてきた男は一体何者だったのか?
「本物」の谷口大祐はどこでどうしているのか?
弁護士の城戸は真相を追ううちに
自らのアイデンティティーについて突き詰めて考えざるを得なくなっていく。
ヘイトスピーチ、死刑制度、被害者と加害者、世論という名の暴力…
現代社会が内包する様々な問題と真摯に向かい合いながら、
エンタメ性を備えた読みやすくわかりやすい文章で語りあげられている物語。
「ある男」の人生を追ううちに
人は誰も自分の人生という「物語」を生きているのだと思えてくる。
そしてまた「物語」を読むことは、
つかの間、読んでいる自分とは別の人生を歩むことでもあるのかもしれないとも。
木材を伐採中の谷口大祐という人物が事故死したところから始まる。
谷口は数年前にその町に移り住んできた男で
離婚して子ども連れでUターンしていた里枝と結婚し
二人の間に子どもも生まれて幸せに暮らしていたはずだった。
生前、彼は老舗旅館の次男坊で両親や兄と折り合いが悪く
実家とは縁を切り二度と帰らないつもりだと言っていたが
亡くなったとあっては連絡しないわけにもいかなかった。
訃報を聞いて駆けつけた兄は、遺影をみておどろく。
そこの写っていたのは見ず知らずの男の顔だったのだ。
自分の夫は一体誰で、どんな過去を持っていたのか?
動揺し混乱した里枝が頼ったのは
前夫との離婚の際に世話になった弁護士の城戸だった。
実を言うと著者の作品を読むのはこれが初めて。
Twitterで時折見かけるつぶやきには共感を覚えることが多いので
どんな作品を書く人なのかと気になっていたところ
とある筋から薦められて手にした本だ。
予備知識なしに読み始めた冒頭で
(ああこれはミステリだったのか!)と思ったのだが、
読み進めていくうちに
ミステリ仕立てではあるけれど、
謎解きだけがテーマではないことに気づく。
他人の名前とその過去を背負って生きてきた男は一体何者だったのか?
「本物」の谷口大祐はどこでどうしているのか?
弁護士の城戸は真相を追ううちに
自らのアイデンティティーについて突き詰めて考えざるを得なくなっていく。
ヘイトスピーチ、死刑制度、被害者と加害者、世論という名の暴力…
現代社会が内包する様々な問題と真摯に向かい合いながら、
エンタメ性を備えた読みやすくわかりやすい文章で語りあげられている物語。
「ある男」の人生を追ううちに
人は誰も自分の人生という「物語」を生きているのだと思えてくる。
そしてまた「物語」を読むことは、
つかの間、読んでいる自分とは別の人生を歩むことでもあるのかもしれないとも。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:360
- ISBN:9784163909028
- 発売日:2018年09月28日
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