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Wings to fly
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「拾ってきてはいけません」という規則をものともせず、家族に隠れて養われる森のみなしご動物たちの事件が微笑ましく、時に胸を締め付ける。
1900年、テキサスの田舎町に住むキャルパーニアは13歳になる。事業を営む彼女の家はとても裕福で、キャルパーニアは7人の子どものうち唯一の女の子だ。母の夢は、女性らしい特技を身につけた娘を社交界にデビューさせ、家柄の良い結婚相手を見つけることだが、キャルパーニアは料理や手芸やピアノの練習に息が詰まりそうになる。

伸び伸びと幸福でいられるのは、大好きなおじいちゃんと森へ出かけて動植物の観察や標本採集をする時。それから、おじいちゃんが「楽しい旅を」と言って誕生日にくれたダーウィンの『ビーグル号航海記』を読む時なのだ。

科学者になりたい、大学に行きたい。思い切って口にしても、両親は困った顔をして口を濁す。キャルパーニアの夢は、良妻賢母を理想とする時代の壁に弾き飛ばされている。でも、絶対に諦めようとしない彼女は、いつの間にか獣医さんを「教育」しているではないか。その成果は、いちいち頼まなくても治療を解説してくれるようになったこと。女の子は獣医になれないと言っていた先生も、少しずつキャルパーニアが手放せなくなってゆく。

時には涙にくれながらも、本当に好きなことを奪われまいとする姿が健気だ。「教育だって、いつか買うことが出来るかも」と銀行に口座を開きに行く自立心が眩しくもある。そして、両親にばれたらエライことになる事態を素早い頭の回転で切り抜ける様子に笑ってしまう。ほとんどは心優しい弟のトラヴィスが、外から連れてくる生き物が原因なのだけれど。

森のそばで親にはぐれた子と出会った時、トラヴィスの動物愛は強烈に目覚める。「拾ってきてはいけません」という規則をものともせず、家族に隠れて養われるアルマジロやアライグマの事件はスリリングで微笑ましく、時に胸を締め付ける。コヨーテと犬の間に生れ落ち、どちらにも追い払われた野生のコイドッグが、ふたりの活躍で家族の一員として認められるまでのエピソードにはもう、涙腺が崩壊だ。

本書は、ニューベリー賞オナーに選ばれた『ダーウィンと過ごした夏』の一年後を描く続編である。キャルパーニアにまた会いたい、いつか夢を叶える姿が見たいと心から思う。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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この書評へのコメント

  1. ぱせり2018-09-20 20:04

    ああ、この本はぜひとも読まなくては。近々、きっときっと読みます!

  2. Wings to fly2018-09-20 22:46

    ぱせりさん
    前作と同じくらい良かったです!相変わらず、おじいちゃんはオアシスです^ ^
    まずはアルマジロ事件に笑ってくださいませ。感想を楽しみにお待ちしてます!

  3. No Image

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