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DBさん
DB
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展開を楽しませてくれる話
表題作である「賢者の贈りもの」を含めて16の短編集になっています。
Оヘンリーの作品は全部で381編あるそうですが、その中から訳者が選び抜いたものがこの作品集に納められているそうだ。
横領の罪で服役していた三年ちょっとの期間に作家として売れ始め、出所後に本格的に文筆活動をするも十年足らずでアルコールが原因で他界する。
作者の人生もドラマチックだが、作品もまたドラマチックな展開を見せる物語だ。

「賢者の贈りもの」は若い夫婦が慎ましく暮らしている小さなアパートが舞台となっている。
二人の貧しい暮らしぶりが明らかになっていくが、妻はどうしても夫にクリスマスプレゼントを贈りたくて髪を切って売り、夫が大切にしていた時計の鎖を買ってきた。
ところが夫の方はその時計を売って妻へ髪飾りを買ってきたため、二人のプレゼントはしばらくしまい込まれることになったという。
貧しくてもお互いの愛があればそれでいいというような物語だったと記憶していたが、ここに「賢者の贈りもの」というタイトルをつけた作者のセンスが光っている。

夏に出合って春になったら結婚しようと約束していた相手から便りがなくなってしまった若い女性と、春の訪れをお店のメニューで表現していく「春はアラカルト」、都会に出てきた二人の田舎娘の仕事と恋愛を描いた「手入れのよいランプ」、喪服の女と若者が恋に落ちるシーンを描いた「伯爵と婚礼の客」など恋愛をテーマにした作品もいくつかあります。
どれもロマンスとドラマの配分がちょうどよくて楽しめる。
金儲けを狙って子供を誘拐した二人組の無法者の苦労はちょっと「ホーム・アローン」を思わせた。

気に入ったのは「ハーグレーヴズの一人二役」という役者を主役にした話だが、若い役者が同じ下宿に住む南部出身の元軍人と懇意となる。
この老人の昔話をひたすら聞いてくれるいい若者だったハーグレーヴズだったが、ある日たまたま買ったチケットで娘と演劇を見に行った元軍人はそこに自分を完全にコピーした役者が舞台で笑いを取っているのを見てしまう。
これに立腹した元軍人の元へ、昔荘園で働いていたという黒人が訪ねてくるのだが。
最後にくすっと笑わせてくれるとともに、ミントジュレップが飲みたくなる話だった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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