darklyさん
レビュアー:
▼
小説を映像化することと、映像を小説化することは全然違うことだと認識した。#カドフェス
カドフェス参加の最後の一冊。主催の祐太郎さんが何冊も抱えていらっしゃるということで立候補してみました。もちろん何の情報もなしに手に取ってみると、かの有名な新海誠原作とあるじゃないですか。「君の名は」は未だに積読状態となっております。
北海道がソビエト(現在はユニオン)に占領された世界で、青森の中学生のヒロキはタクヤと出会い、飛行機への憧れで意気投合し、北海道にそびえ立つユニオンの塔まで飛びたいと飛行機を製造し始める。そこにサオリが現れることで二人の関係に微妙な変化が起こり、サオリが突然転校することにより二人の関係に決定的な亀裂が生じる。飛行機はほぼ完成していたがそのままになる。
塔はユニオンの科学技術の結晶であり、ユニオンは無数にあるパラレルワールドの一部をこの世界に取り込む技術を有している。塔の設計者はサオリの祖父であり、サオリの転校も塔と関係があった。
物語は回想シーンから始まりノスタルジックな青春もので中学生時代にありがちな女の子が絡んでくることで純粋な熱中状態に変化が生じ、あっけなく崩壊する男同士の友情物語と思いきや、パラレルワールドが絡むSF仕立ての話となります。サオリを塔まで連れて行くという約束を果たせないままヒロキとタクヤは別々の道を歩き出すことから、最終的にサオリを飛行機に乗せて塔まで行くという物語の展開は容易に推測できます。
中学生がステルス機を作ったり、高校生がテロ組織と絡んだり軍の研究施設で研究したりと、現実離れしたところはまあファンタジーだから置いておくとしても、そしてSFの世界観が意味不明なところもまあファンタジーだから置いておくとしても、キャラクターの心理等が全く分からないので物語に入り込めませんでした。
もっとも世界観が意味不明なのは私の読みこみが足りないだけの可能性は大です。読みながらしばしば私の意識もパラレルワールドに飛んでいましたので。読み返す気力はありませんでした。
この小説は新海誠さんのアニメのノベライズですが、想像するに作者の加納新太さんは新海さんの映像を忠実に文字化しようとしたのではないかと思われます。ファンタジー色が強い本作品のような場合のキャラクターの行動や考え方、心象風景あるいは物語の中で起こっていることは我々の現実生活を描いた作品とは異なり誰でも共有・共感できるものではないので文字で書かれてもよく分かりません。普通の小説のように文章から想像力を掻き立てるようには書かれていないように思います。
一方、ノベライズでも「相棒」のようなものは、話が現実世界であり物語のキーになるポイントが論理的なものであるため誰が読んでも同じように解釈できるのでノベライズ向きなのでしょう。
しかし、この物語はネットで見ると舞台化もされていますので一般的には評価が高いと思われます。と考えれば本書はアニメを観て新海ワールドに共感した方がその世界を追体験するため小説を手に取るというのが正しい道筋なのでしょう。
ちょっと気になったのがこの作者の言葉の使い方、表現が妙に村上春樹チックだったことです。特に回想シーンなど読んでて昔の村上さんの小説を思い出しました。
蛇足ですが、妙に感心したのがこの本の書評がこのサイトに1件もないということです。こんなに沢山のレビュアーの方がいらっしゃって、しかもそれほど珍しい本というわけでもないのに1件もないとは。ある意味皆さんのお目の高さなのか。
北海道がソビエト(現在はユニオン)に占領された世界で、青森の中学生のヒロキはタクヤと出会い、飛行機への憧れで意気投合し、北海道にそびえ立つユニオンの塔まで飛びたいと飛行機を製造し始める。そこにサオリが現れることで二人の関係に微妙な変化が起こり、サオリが突然転校することにより二人の関係に決定的な亀裂が生じる。飛行機はほぼ完成していたがそのままになる。
塔はユニオンの科学技術の結晶であり、ユニオンは無数にあるパラレルワールドの一部をこの世界に取り込む技術を有している。塔の設計者はサオリの祖父であり、サオリの転校も塔と関係があった。
物語は回想シーンから始まりノスタルジックな青春もので中学生時代にありがちな女の子が絡んでくることで純粋な熱中状態に変化が生じ、あっけなく崩壊する男同士の友情物語と思いきや、パラレルワールドが絡むSF仕立ての話となります。サオリを塔まで連れて行くという約束を果たせないままヒロキとタクヤは別々の道を歩き出すことから、最終的にサオリを飛行機に乗せて塔まで行くという物語の展開は容易に推測できます。
中学生がステルス機を作ったり、高校生がテロ組織と絡んだり軍の研究施設で研究したりと、現実離れしたところはまあファンタジーだから置いておくとしても、そしてSFの世界観が意味不明なところもまあファンタジーだから置いておくとしても、キャラクターの心理等が全く分からないので物語に入り込めませんでした。
もっとも世界観が意味不明なのは私の読みこみが足りないだけの可能性は大です。読みながらしばしば私の意識もパラレルワールドに飛んでいましたので。読み返す気力はありませんでした。
この小説は新海誠さんのアニメのノベライズですが、想像するに作者の加納新太さんは新海さんの映像を忠実に文字化しようとしたのではないかと思われます。ファンタジー色が強い本作品のような場合のキャラクターの行動や考え方、心象風景あるいは物語の中で起こっていることは我々の現実生活を描いた作品とは異なり誰でも共有・共感できるものではないので文字で書かれてもよく分かりません。普通の小説のように文章から想像力を掻き立てるようには書かれていないように思います。
一方、ノベライズでも「相棒」のようなものは、話が現実世界であり物語のキーになるポイントが論理的なものであるため誰が読んでも同じように解釈できるのでノベライズ向きなのでしょう。
しかし、この物語はネットで見ると舞台化もされていますので一般的には評価が高いと思われます。と考えれば本書はアニメを観て新海ワールドに共感した方がその世界を追体験するため小説を手に取るというのが正しい道筋なのでしょう。
ちょっと気になったのがこの作者の言葉の使い方、表現が妙に村上春樹チックだったことです。特に回想シーンなど読んでて昔の村上さんの小説を思い出しました。
蛇足ですが、妙に感心したのがこの本の書評がこのサイトに1件もないということです。こんなに沢山のレビュアーの方がいらっしゃって、しかもそれほど珍しい本というわけでもないのに1件もないとは。ある意味皆さんのお目の高さなのか。
お気に入り度:



掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
- この書評の得票合計:
- 38票
読んで楽しい: | 9票 |
|
---|---|---|
参考になる: | 29票 |
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:432
- ISBN:9784041026366
- 発売日:2018年06月15日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。
『小説 雲のむこう、約束の場所』のカテゴリ
登録されているカテゴリはありません。