テンプル騎士団

　映画『ダ・ヴィンチ・コード』で一躍名が知られたテンプル騎士団。本書は彼等が一斉に逮捕される場面から始まる。聖地エルサレムへの巡礼者護衛の目的で自然発生的に結成されたテンプル騎士団が、なぜ時の権力者から敵視される存在になったのか。

　三部構成から成り、一部と三部は本の上での現在―テンプル騎士団逮捕劇―が扱われ、二部でテンプル騎士団の歩み―過去―が紹介。護衛目的なのだから優れた、それも専門職の騎士が集められる。日本では織田信長が目指した常備軍に近い。次に騎士たちの「常備」のための容れ物―建物が創られる。すると国を越えて形成されたネットワークが注目され、こんどはそれを活用した金の流通が始まる。ドラマのように、一人の権力者が意図して作り上げた一大勢力ではなく、「仕事を頼まれているうちに、次々引き受けていたら、こうなった」という、原因が結果を生む自然な流れに見える。誰からも重宝されていた騎士団が、憎まれる契機となったのは、戦争だ。とはいっても、キリスト教を信じる騎士が、戦費を使う国王たちに平和を説いたからではない。もっと実際的な理由である。金を貸さなかったからだ。一旦憎めば今まで利点と考えていた全てが、敵に回った時の恐ろしさに変換されていく。『ダ・ヴィンチ・コード』では追う側に回った怖い印象の彼等だが、強かさでは、やはり現役の国王や教皇達にはかなわなかったということか。


テンプル騎士団のきっかけとなった十字軍についての塩野七生著作
十字軍物語1
十字軍物語2
十字軍物語3

佐藤賢一
小説フランス革命シリーズ
共和政の樹立 (小説フランス革命)
小説フランス革命 IX ジャコバン派の独裁
小説フランス革命11 徳の政治 (小説フランス革命 11)
革命の終焉 小説フランス革命 XII (小説フランス革命 12)
佐藤賢一作品
ハンニバル戦争
オクシタニア
双頭の鷲
黒王妃
女信長
最終飛行
沖田家サーガ
新徴組
遺訓
デュマ家三部作
黒い悪魔
褐色の文豪
象牙色の賢者
ナポレオン三部作
ナポレオン 1 台頭篇
ナポレオン 2 野望篇
ナポレオン 3 転落篇
評伝
ドゥ・ゴール
ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』
ブルボン朝 フランス王朝史3
王の綽名
よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる