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Wings to fly
レビュアー:
人当たり最悪、相棒との仲は険悪、料金は格安!ロサンゼルスに新たなる探偵ヒーロー誕生。
タブロイド誌にこんな記事が載ったそうだ。
「IQ アイゼイア・クィンターベイは知られざる無免許探偵」

彼はロサンゼルスの犯罪多発地帯に住む黒人の青年で、顧客は近所の人からR&Bの有名シンガーまで様々だ。ウェブサイトもSNSのアカウントも持っていないのに、なぜか人は彼を見つけて依頼メールを送ってくる。

彼は警察が手を出さない小さな事件を引き受け、あっという間に解決する。報酬は払える範囲のもの(例えばサツマイモのパイとか、庭掃除とか)で構わない。そんなIQのもとへ、ラップの大物ミュージシャンからの依頼が舞い込んできた。

3つの新人賞を受賞した処女作だそうだが、まず構成が上手い。「ラップスターが自宅に侵入した巨大な犬に襲われた。その犬を連れた殺し屋を探し、誰が依頼したのかをつきとめる。」というだけのストーリーではない。読み始めるとすぐに、読者は色んな謎に出会う。

IQはなぜ、依頼話を持ちこんできた昔馴染みのドッドソンを忌み嫌っているのか。
IQは脳に損傷を受けた少年の多額の入院費用を払い、決して独り立ちできない将来の世話まで引き受けようとしている。そのお金のために仕方なくドッドソンの仕事を受けるのだが、この少年は誰なのか。身内でもなさそうなのに、なぜ面倒を見ているのか?

過去と現在を行き来して、これらの謎がひとつのストーリーにまとまってゆく。そして最後に「知的でクールな黒人探偵誕生の物語」として帰結するのである。

金欠のために手を組まざるを得なくなったIQとドッドソンは、思慮深さの圧倒的な差が災いしてお互いに時々ウンザリする。それでも、利害関係とは別のところで感情的にも相手を切り捨てられない様子に、彼らの人間性が滲む。キャラの奥深さが、とても印象的だ。

ドッドソンの口からはスラングが機関銃のように飛び出し、本の中でストリートの言語(接頭語は“クソ”)が跳ね回る。終盤は説明が丁寧過ぎて、この軽快なリズムが失われるのが惜しい。

犯罪多発地帯に生息するも、ギャングスタの流儀に従わない男。素早く論理的に思考を組み立て、損得にも場の空気にも関係なく答えを突きつける男。次作の展開に大注目させるラストシーンが、ニクイ!
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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