かもめ通信さん
レビュアー:
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「しみじみとした人柄を感じさせる文章を読んだからといって、それを書いた人がよい人だなんて思っちゃいけません。」「いいですか、皆さん、文章と人柄は別なんですよ。」
ご存じない方もおられるかもしれないので、念のために最初にお断りしておくが、私は漱石が苦手である。
どれぐらい苦手かと言えばおそらく「嫌い」と言い切ってもいいぐらいだと長い間ずっと思ってきた。
そんな私が、あれやこれやの漱石作品や、その関連本を読むようになったいきさつは、以前、『父・夏目漱石』のレビューで紹介させていただいたことがあるのでここでは割愛することに。
既にお腹いっぱいのはずの私が、今度は漱石の孫娘の本に手を出した理由は、ホンスミさんのレビューに惹かれたからという理由に他に、てっきり既に読んでいるだろうと思っていた日文好きの母が、著者の本は未だ1冊も読んだことがないということだったから。
この歳になって親子で文学談義ができるというのも幸せなことだと思いつつ、一緒に読もうと購入したというわけだ。
雑誌に掲載されたものを中心に35篇のエッセイを収録した本書には、漱石自身を直接知らない孫娘が、自身の母であり漱石の長女である筆子さんから聞いた話や、自身が見聞きした漱石の妻鏡子さんや漱石の弟子であり著者の父である松岡譲のことが書かれている。
また、巻末にはなんと、松岡筆子さんご自身手による“夏目漱石の「猫」の娘”が収録されていてこれが非常に読み応えがあった。
また昨年新宿区にopenした「漱石山房記念館」の設立を巡る話も興味深かった。
例によって例のごとく、漱石の弟子たちに対する歯に衣着せない物言いは、書かれた人が見たら真っ青だろうというものもあるのだが、そこをしれっと書いてしまうところは、叔父である伸六さんと共通するものもあり、漱石の親族としてはよっぽど腹に据えかねているのだろうと思ったりもする。
もっとも、著者の場合、弟子以外の話でもかなりの辛辣ぶりだから、これはもしや、母方のお祖母様似の気の強さをお持ちなのでは!と思ったところで、ふと気づく。
そういえば、著者自身がかつて通った文章教室の講師に言われたことだと紹介していたではないか。
漱石の弟子の中でも兄貴格であった寺田寅彦氏のことを語った直後に挿入されたこのエピソードはかなりのインパクト。
だがしかし、同じことは著者に対しても言えるのではないかと思うのだ。
勝ち気で時に高慢とも思える語り口だからといって、それを書いた人がそういう性格なのだと思い込むのは早計だ。
あとがきに書かれた漱石のことなら身内からきいたあれこれをネタに筆が進むのに、父松岡譲についてはなかなか書くことができずにいるという話を読みながら改めてそんなことを思ったりした。
どれぐらい苦手かと言えばおそらく「嫌い」と言い切ってもいいぐらいだと長い間ずっと思ってきた。
そんな私が、あれやこれやの漱石作品や、その関連本を読むようになったいきさつは、以前、『父・夏目漱石』のレビューで紹介させていただいたことがあるのでここでは割愛することに。
既にお腹いっぱいのはずの私が、今度は漱石の孫娘の本に手を出した理由は、ホンスミさんのレビューに惹かれたからという理由に他に、てっきり既に読んでいるだろうと思っていた日文好きの母が、著者の本は未だ1冊も読んだことがないということだったから。
この歳になって親子で文学談義ができるというのも幸せなことだと思いつつ、一緒に読もうと購入したというわけだ。
雑誌に掲載されたものを中心に35篇のエッセイを収録した本書には、漱石自身を直接知らない孫娘が、自身の母であり漱石の長女である筆子さんから聞いた話や、自身が見聞きした漱石の妻鏡子さんや漱石の弟子であり著者の父である松岡譲のことが書かれている。
また、巻末にはなんと、松岡筆子さんご自身手による“夏目漱石の「猫」の娘”が収録されていてこれが非常に読み応えがあった。
また昨年新宿区にopenした「漱石山房記念館」の設立を巡る話も興味深かった。
例によって例のごとく、漱石の弟子たちに対する歯に衣着せない物言いは、書かれた人が見たら真っ青だろうというものもあるのだが、そこをしれっと書いてしまうところは、叔父である伸六さんと共通するものもあり、漱石の親族としてはよっぽど腹に据えかねているのだろうと思ったりもする。
もっとも、著者の場合、弟子以外の話でもかなりの辛辣ぶりだから、これはもしや、母方のお祖母様似の気の強さをお持ちなのでは!と思ったところで、ふと気づく。
そういえば、著者自身がかつて通った文章教室の講師に言われたことだと紹介していたではないか。
しみじみとした人柄を感じさせる文章を読んだからといって、それを書いた人がよい人だなんて思っちゃいけません。騙されてはいけません。いいですか、皆さん、文章と人柄は別なんですよ。
漱石の弟子の中でも兄貴格であった寺田寅彦氏のことを語った直後に挿入されたこのエピソードはかなりのインパクト。
だがしかし、同じことは著者に対しても言えるのではないかと思うのだ。
勝ち気で時に高慢とも思える語り口だからといって、それを書いた人がそういう性格なのだと思い込むのは早計だ。
あとがきに書かれた漱石のことなら身内からきいたあれこれをネタに筆が進むのに、父松岡譲についてはなかなか書くことができずにいるという話を読みながら改めてそんなことを思ったりした。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:文藝春秋
- ページ数:266
- ISBN:9784167801939
- 発売日:2012年05月10日
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