かもめ通信さん
レビュアー:
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ナチ・ドイツの武装親衛隊員としてウクライナに赴き、19歳の若さで戦死した兄の日記を軸に語られる物語は、戦争とはなにか、家族とはなにかを繰り返し問うオートフィクション。
オートフィクションというのだそうだ。
自伝のように作者と語り手が同一人物で
作者もその兄も実名で登場するこの物語は、
実際にあった出来事を元にしてかかれ、
エッセイのような語り口ではあるがフィクション(小説)だ。
1942年、ナチ・ドイツの武装親衛隊に入隊し、
「髑髏師団」としてウクライナに赴き
翌年、19歳の若さで戦死した兄。
16歳年下の弟である語り手は
兄が書き遺した日記や手紙を元に兄のことを語りつつ
大きな期待を寄せ、常に兄を自慢に思っていた父、
女であるが故に父から顧みられなかった姉、
困難な時代にあって家族を支え続けた母、
そしてまた戦争の記憶をほとんどもたない自分にとっての
戦争とはなにか、家族とはなにかを繰り返し問いつづける。
随分前からいずれ書きたいとおもってはいたが
父や母、姉など関係者が亡くなるまでは
書くことができなかったというあれこれを語ることへのためらいが
かもしだしているかのようなぎこちなさが
少しばかり読みづらく、
それが故にかえって、
読み手にこれがフィクションであるということを忘れさせもする。
戦地の兄から送られてきた自筆の手紙や、
家族の写真を目の前に並べて見せられているかのような
錯覚に陥るほどのリアリティなのだ。
兄の日記にはウクライナのある集落での出来事が書き付けられていた。
部隊は道路建設のために、ロシア人の家から暖炉を運び出す。
木造の家から暖炉の石を運び出して
トラックを通すために道路を舗装しようというのだ。
暖炉の石のために家を壊したのだ。
これから冬が始まる時期に暖炉なしでどうやって、
家すら失ってどうやって、
その集落の人々が生き延びることができるのか
もちろん
日記からは兄がそうした疑問を抱いている様子は一切うかがえない。
けれども同じ時期兄は実家への手紙にしたためるのだ。
イギリス軍の空襲の知らせを聞いて、家のことだけが心配だと。
空襲は戦争の手段ではなく,女子どもへの殺人行為だ。
人道的ではない……と。
兄は戦争そのものをどうとらえていたのだろう。
自らの行為とどう折り合いをつけていたのだろう。
そして父は、
二つの戦争に従軍し、二つの敗戦を体験した父は……。
戦争をほとんど知らない世代の自分と対比させることで
戦争そのものを問い直す。
決して遠い異国の話ではない。
自分の国の話であってもおかしくないような、
政治も社会も人々の胸の内もその息づかいまでもが
身近に感じられる物語でもあった。
自伝のように作者と語り手が同一人物で
作者もその兄も実名で登場するこの物語は、
実際にあった出来事を元にしてかかれ、
エッセイのような語り口ではあるがフィクション(小説)だ。
1942年、ナチ・ドイツの武装親衛隊に入隊し、
「髑髏師団」としてウクライナに赴き
翌年、19歳の若さで戦死した兄。
16歳年下の弟である語り手は
兄が書き遺した日記や手紙を元に兄のことを語りつつ
大きな期待を寄せ、常に兄を自慢に思っていた父、
女であるが故に父から顧みられなかった姉、
困難な時代にあって家族を支え続けた母、
そしてまた戦争の記憶をほとんどもたない自分にとっての
戦争とはなにか、家族とはなにかを繰り返し問いつづける。
随分前からいずれ書きたいとおもってはいたが
父や母、姉など関係者が亡くなるまでは
書くことができなかったというあれこれを語ることへのためらいが
かもしだしているかのようなぎこちなさが
少しばかり読みづらく、
それが故にかえって、
読み手にこれがフィクションであるということを忘れさせもする。
戦地の兄から送られてきた自筆の手紙や、
家族の写真を目の前に並べて見せられているかのような
錯覚に陥るほどのリアリティなのだ。
兄の日記にはウクライナのある集落での出来事が書き付けられていた。
部隊は道路建設のために、ロシア人の家から暖炉を運び出す。
木造の家から暖炉の石を運び出して
トラックを通すために道路を舗装しようというのだ。
暖炉の石のために家を壊したのだ。
これから冬が始まる時期に暖炉なしでどうやって、
家すら失ってどうやって、
その集落の人々が生き延びることができるのか
もちろん
日記からは兄がそうした疑問を抱いている様子は一切うかがえない。
けれども同じ時期兄は実家への手紙にしたためるのだ。
イギリス軍の空襲の知らせを聞いて、家のことだけが心配だと。
空襲は戦争の手段ではなく,女子どもへの殺人行為だ。
人道的ではない……と。
兄は戦争そのものをどうとらえていたのだろう。
自らの行為とどう折り合いをつけていたのだろう。
そして父は、
二つの戦争に従軍し、二つの敗戦を体験した父は……。
戦争をほとんど知らない世代の自分と対比させることで
戦争そのものを問い直す。
決して遠い異国の話ではない。
自分の国の話であってもおかしくないような、
政治も社会も人々の胸の内もその息づかいまでもが
身近に感じられる物語でもあった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:白水社
- ページ数:191
- ISBN:9784560090565
- 発売日:2018年07月14日
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