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はなとゆめ+猫の本棚
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特殊詐欺が横行している。しかし世の中には、善人ぶって堂々と詐欺が行われていることがある。
 世間をオレオレ詐欺など特殊詐欺が横行して収まる気配がない。この作品を読むと、特殊詐欺は、効率は悪いし、事件になって逮捕される場合もしばしばあるのに、どうしてそんな危険を犯してまで詐欺行為をするのかと思ってしまう。もちろん、詐欺が成功することも多いからなのだということもわかる。

 しかし、この物語では、巨額な金を集めて、それで豪華な生活や、更に金儲けの投資をしたりする詐欺が世の中にはあるということを教えてくれる。

 この物語の詐欺を紹介すると、今でもよくみかける方法と似ていて、それにひきずられるので躊躇するが、あくまで物語上のこととして勘弁を願う。

 その詐欺の母体は「日本友愛協会」という。この協会では、貧しい国の子供たちが病気や飢えで苦しんでいる。それで、皆さんからの寄付でその子たちを救おうと寄付を募る。

 これをテレビやネット、雑誌で年がら年中幅広く実施する。個人の寄付もあるだろうが、企業やセレブの人たちの親睦団体からの寄付も多い。

 ところが集めた寄付がそのまま困窮者や飢えた子供たちにわたらず、この団体が集めたお金の25%を抜く。協会では毎年200億円の金が集まるので、その25%50億円が自由に使える金として手元に残る。

 もちろん、何の仕事もしない、天下った人々の給与にも使うが、主には協会の人たちの贅沢な暮らし、遊興費や投資に使われる。とんでもない詐欺である。

 この詐欺を嗅ぎつけて報道しようとするマスコミには、多くの広告を発注したり、追及記者にはお金を渡し、黙らせる。嗅ぎつけられたときから、突然CM宣伝が多くなる。

 こういう構造ができあがると、何ら罪を犯しても、全く立件されなくなる。いつも安全圏に存在できることになる。あるんだろうなそういう現実はと思わせてくれる。

 物語はハードボイルド ミステリーなのだが、面白いことに主人公は女性。しかも彼女は16歳のときに殺人を犯し、刑務所で服役したという経歴の持ち主。

 そして、正義を持って悪をさばこうという人も殆ど登場しない。金のために行動する。金にならないことは全く興味を示さない。
 登場人物の造形が優れていて、無理のない自然なユーモアも描かれ、質の高い作品になっている。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6227 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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