かもめ通信さん
レビュアー:
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どこかで耳にした音楽が、頭の中で繰り返し繰り返し再生されて、気がつくとついつい口ずさんでいる。そんなことって時々あるよね? #新潮クレスト・ブックス
「戦時の音楽」というタイトルを目にしたとき、
私が最初に思い浮かべたのは
ショスタコーヴィチの「レニングラード」だった。
( 『戦火のシンフォニー: レニングラード封鎖345日目の真実』)
けれども、ページをめくるとそこには
私が当初思い浮かべていたような
荒々しい戦場も
武器をもって闘う人々の姿もなかった。
指を1本失った往年の名ヴァイオリニスト
相棒を失ったサーカスの象使い
大学教授になりすますシェフ
ある日突然、ピアノの中から現れたバッハ
人を殴ってその反応を写真に収める芸術家
ガス爆発で婚約者を失った失意の女性
主人公も、物語の舞台も、語られる時代も語り口調も異なる17の短編。
とりわけ
ハンガリー動乱の際にアメリカに亡命したという父親、
有名な女優で小説家であったという父方の祖母、
ハンガリーの国会議員でそれまであった法律よりもさらに厳しい内容の
反ユダヤ法制定の立役者でもあったが、
後にナチスに抗して逮捕されることになったという祖父
という、
著者のルーツをモデルにした3つの作品は
わすか2ページ半、
あるいは4ページほどの掌編であるにもかかわらず
衝撃的といっていいほどの読み応えがあり、
様々な問いを読者になげかけもする。
正直にいうと巻頭から数作を読んだ時点では
読みやすくきれいにまとまってはいるけれど、
さらっと読み終えてしまい、記憶に残らなそうだな……と思っていた。
ところが1つ2つと読み進めるうちに次第に前のめりになり、
ついさっきたいした感慨もなく読み終えたはずの作品までもが
じわじわと熱を帯びてきた。
総ての作品を読み終えたとき、
一見全く関係がないように思われる物語たちの間に
ゆるやかなつながりを見いだす。
メロディはもちろんトーンも音色も違う17の物語の
印象的なフレーズ(シーン)が
頭の中で繰り返し繰り返し再生され
いつまでも余韻がさらない。
様々な偶然、様々な出会い、
様々な選択、様々な決断、
そうしたものが重なり、つながりあって、
今があるのと同じように
今このときのあれこれも
やがて訪れる誰かの未来につながっていくのだということに
戦慄を覚えずにはいられなかった。
私が最初に思い浮かべたのは
ショスタコーヴィチの「レニングラード」だった。
( 『戦火のシンフォニー: レニングラード封鎖345日目の真実』)
けれども、ページをめくるとそこには
私が当初思い浮かべていたような
荒々しい戦場も
武器をもって闘う人々の姿もなかった。
指を1本失った往年の名ヴァイオリニスト
相棒を失ったサーカスの象使い
大学教授になりすますシェフ
ある日突然、ピアノの中から現れたバッハ
人を殴ってその反応を写真に収める芸術家
ガス爆発で婚約者を失った失意の女性
主人公も、物語の舞台も、語られる時代も語り口調も異なる17の短編。
とりわけ
ハンガリー動乱の際にアメリカに亡命したという父親、
有名な女優で小説家であったという父方の祖母、
ハンガリーの国会議員でそれまであった法律よりもさらに厳しい内容の
反ユダヤ法制定の立役者でもあったが、
後にナチスに抗して逮捕されることになったという祖父
という、
著者のルーツをモデルにした3つの作品は
わすか2ページ半、
あるいは4ページほどの掌編であるにもかかわらず
衝撃的といっていいほどの読み応えがあり、
様々な問いを読者になげかけもする。
正直にいうと巻頭から数作を読んだ時点では
読みやすくきれいにまとまってはいるけれど、
さらっと読み終えてしまい、記憶に残らなそうだな……と思っていた。
ところが1つ2つと読み進めるうちに次第に前のめりになり、
ついさっきたいした感慨もなく読み終えたはずの作品までもが
じわじわと熱を帯びてきた。
総ての作品を読み終えたとき、
一見全く関係がないように思われる物語たちの間に
ゆるやかなつながりを見いだす。
メロディはもちろんトーンも音色も違う17の物語の
印象的なフレーズ(シーン)が
頭の中で繰り返し繰り返し再生され
いつまでも余韻がさらない。
様々な偶然、様々な出会い、
様々な選択、様々な決断、
そうしたものが重なり、つながりあって、
今があるのと同じように
今このときのあれこれも
やがて訪れる誰かの未来につながっていくのだということに
戦慄を覚えずにはいられなかった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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読んで楽しい: | 9票 | |
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素晴らしい洞察: | 2票 | |
参考になる: | 35票 | |
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この書評へのコメント
- かもめ通信2018-07-30 05:31
只今掲示板にて「祝 #新潮クレスト・ブックス #創刊20周年」読書会開催中!
http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no331/index.html?latest=20
7/30、5時現在、65冊が紹介されています。
8月末までやっていますので、ぜひ遊びに来てください。
「この本、よかったよ」「こんな本もあったよね」
「○×さんのこの書評、印象に残っている」「この本が気になる」等々、
クレスト・ブックスに関わる話題ならどんなものでもOK 。
レビューがなくても参加できるので、お気軽にご参加ください。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:318
- ISBN:9784105901486
- 発売日:2018年06月29日
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