はるほんさん
レビュアー:
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京と私の黒歴史(笑)
書評を始める前に、昔語をしよう。
もうずいぶん前になるが、新選組にハマったときに
人様に借りて新選組乙女ゲーに人生初挑戦した。
捏造されたイケメンと恋愛シチュに、なんかもう酷い脇汗が出た。
割と歴史に忠実に作られており、
面白い設定がはめ込まれていたのだが
そのまま誰にも語ることもできぬ黒歴史となっていた。
実は「その面白さ」が、本書の設定に通じていたのである。
やっとこの面白さを人に語ることができるのか…!と
宇喜多の捨て嫁と違う意味で、木下氏に感謝を捧げたい。
注:似ているとは言ったが、個人的には本書の方が断然好みである。
黒歴史故、ゲームの方はこの先触れない。(笑)
──人魚には伝説がある。
その肉を喰らうと、人は不老不死になるという。
元ネタは八百比丘尼という女僧の話だが、
高橋留美子先生の漫画「人魚の森」を読んだ人も多いかもしれない。
ファンタジーでありながら、どこか薄ら寒いホラーでもある。
幕末の八つの話の裏にあやかしの存在があった事を、誰も知らない。
【竜馬ノ夢】坂本竜馬
竜馬は幼少の頃、以蔵と共にあやしげな肉を口にしたという
【妖ノ眼】平山五郎
左目が見えない平山は、ある時からその死角が見えるようになった
【肉ノ人】沖田総司
総司は肺病ではなかった。ただ、飢えて溜まらなかったのだ
【血ノ祭】安藤早太郎
商人の息子は、ただ幼馴染の少女を病から救いたかった
【不死ノ屍】佐野七五三之助
果てた後に相手に切りつけたという逸話の真相は
【躯ノ切腹】近藤勇
近藤は切腹を許されなかった。「武士」としては無念だったろう
【分身ノ鬼】斉藤一
新選組のスパイも務めたと言われる斉藤。それは──
【首ノ物語】岡田以蔵
──人魚には伝説がある。その「血」を口にすると不死になるという
だが肉を喰らうと──
新選組の通説や謎に、人魚の怪を絡めている。
それが不思議と話に噛み合っており、面白い。
なにより「京」という町が
新選組を異物として忌み嫌った理由が、すとんと胸に落ちた気がした。
日本歴史のアイドル・新選組だが
京都はあまり積極的に観光アピールをしていなかった。
※最近はゲームとかアニメの影響で、結構表に出ているが
どこか「あんさんらがお好きやったら、勝手にしはったら」的な
ぶぶ漬け的距離感を感じるのである。
新選組の大義名分こそ京セコムだが、
実際は千年の雅を血で汚され、
東の田舎者たちに土足で踏みにじられていたのだ。
京には京の複雑な想いがあっただろう。
例えるなら、戦後の進駐軍くらいの存在だったんじゃなかろうか。
その「京」が話のオチにもちゃんとあり、
個人的にはホントに大満足の1冊だった。
ホントに木下氏の構成の妙には震えが走る。
ところで冒頭の竜馬の話に
「7人のお遍路さん」という不可思議な集団が出てくるのだが
おそらくこれは「七人ミサキ」のことであろう。
四国の亡霊伝説であり、一人増えると一人減り、
数は常に7人であり続けると言われる。
ふと本書で人魚の肉を食べた人間を数えてみる。
──嗚呼、なるほど
彼らは確かに永遠となったのかもしれない
次なるミサキが現れる その時まで
もうずいぶん前になるが、新選組にハマったときに
人様に借りて新選組乙女ゲーに人生初挑戦した。
捏造されたイケメンと恋愛シチュに、なんかもう酷い脇汗が出た。
割と歴史に忠実に作られており、
面白い設定がはめ込まれていたのだが
そのまま誰にも語ることもできぬ黒歴史となっていた。
実は「その面白さ」が、本書の設定に通じていたのである。
やっとこの面白さを人に語ることができるのか…!と
宇喜多の捨て嫁と違う意味で、木下氏に感謝を捧げたい。
注:似ているとは言ったが、個人的には本書の方が断然好みである。
黒歴史故、ゲームの方はこの先触れない。(笑)
──人魚には伝説がある。
その肉を喰らうと、人は不老不死になるという。
元ネタは八百比丘尼という女僧の話だが、
高橋留美子先生の漫画「人魚の森」を読んだ人も多いかもしれない。
ファンタジーでありながら、どこか薄ら寒いホラーでもある。
幕末の八つの話の裏にあやかしの存在があった事を、誰も知らない。
【竜馬ノ夢】坂本竜馬
竜馬は幼少の頃、以蔵と共にあやしげな肉を口にしたという
【妖ノ眼】平山五郎
左目が見えない平山は、ある時からその死角が見えるようになった
【肉ノ人】沖田総司
総司は肺病ではなかった。ただ、飢えて溜まらなかったのだ
【血ノ祭】安藤早太郎
商人の息子は、ただ幼馴染の少女を病から救いたかった
【不死ノ屍】佐野七五三之助
果てた後に相手に切りつけたという逸話の真相は
【躯ノ切腹】近藤勇
近藤は切腹を許されなかった。「武士」としては無念だったろう
【分身ノ鬼】斉藤一
新選組のスパイも務めたと言われる斉藤。それは──
【首ノ物語】岡田以蔵
──人魚には伝説がある。その「血」を口にすると不死になるという
だが肉を喰らうと──
新選組の通説や謎に、人魚の怪を絡めている。
それが不思議と話に噛み合っており、面白い。
なにより「京」という町が
新選組を異物として忌み嫌った理由が、すとんと胸に落ちた気がした。
日本歴史のアイドル・新選組だが
京都はあまり積極的に観光アピールをしていなかった。
※最近はゲームとかアニメの影響で、結構表に出ているが
どこか「あんさんらがお好きやったら、勝手にしはったら」的な
ぶぶ漬け的距離感を感じるのである。
新選組の大義名分こそ京セコムだが、
実際は千年の雅を血で汚され、
東の田舎者たちに土足で踏みにじられていたのだ。
京には京の複雑な想いがあっただろう。
例えるなら、戦後の進駐軍くらいの存在だったんじゃなかろうか。
その「京」が話のオチにもちゃんとあり、
個人的にはホントに大満足の1冊だった。
ホントに木下氏の構成の妙には震えが走る。
ところで冒頭の竜馬の話に
「7人のお遍路さん」という不可思議な集団が出てくるのだが
おそらくこれは「七人ミサキ」のことであろう。
四国の亡霊伝説であり、一人増えると一人減り、
数は常に7人であり続けると言われる。
ふと本書で人魚の肉を食べた人間を数えてみる。
──嗚呼、なるほど
彼らは確かに永遠となったのかもしれない
次なるミサキが現れる その時まで
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:文藝春秋
- ページ数:442
- ISBN:9784167910822
- 発売日:2018年06月08日
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