DBさん
レビュアー:
▼
十九世紀のシリアルキラーの話
あかつきさんの書評で手に取ってみました。
とっても面白かったです。ご紹介ありがとうございました。
十九世紀といえば、レディーファーストという礼儀の陰で男女差別は社会の共通認識だった。
「ジェーン・エア」は孤児でありながら男女平等の考え方を持ち、自由恋愛で身分の枠を超えた愛を勝ち取るというフェミニズムな部分が画期的だったそうだ。
本作ではこの「ジェーン・エア」が主人公の愛読書として随所に出てくる。
主人公もジェーン・エアと同じように孤児で叔母に虐待され、悲惨な寄宿学校生活を送り、家庭教師としてソーンフィールド家へ入り、そこの主人と恋に落ちる。
ロチェスターのように重婚という障害があったわけではなかったが、本作のジェーンには本家のジェーンと違う部分が一つだけあった。
自叙伝として語られる本作の一ページ目でその秘密はいきなり暴露される。
「愛のために、また折々のやむなき事情から、わたしが犯した数々の殺人」があるというのだ。
そう、これは主人公ジェーン・スティールの犯した殺人の告白だった。
ヴィクトリア朝を舞台にしながらこれほど衝撃的な話は他にない。
自叙伝は子供の頃の思い出話から始まる。
ハイゲート・ハウスという屋敷の離れにフランス人の母親と住んでいた幼いジェーンは、父親はすでになく気まぐれな母親の愛を受けるのに必死な少女だった。
母屋には同じく寡婦の叔母と四歳年上の従兄弟エドウィンが住んでいて、どんな形にせよ交流があるのはこの親子だけだった。
ジェーンが九歳の時にその世界が崩れ去るまでは。
その後ローアン・ブリッジという寄宿学校に送られて教育を身につける。
敵が考えていることを見抜き、身を隠すか奇策に出てでも被害をやり過ごすコツを学んだのだ。
デイヴィット・コパフィールドといい小公女といい、寄宿学校ってどうしてまともじゃないんだろう。
世間と隔絶されているってこうなるのかもしれない。
結局ある事件がきっかけで、妹のように愛していたクラークと共にロンドンへ流れつく。
そこでタブロイドの原稿書きという仕事で生活の糧を得ていたのだったが。
自分の生家ハイゲート・ハウスから家庭教師を募集していることを知って、名字を変え無事に入り込んだ。
パンジャーブの影響が色濃い一家の中で、ジェーンは一家の秘密を探り出そうとします。
それは好奇心なのか、自己防衛なのか。
パンジャーブ地方から持ち出された財宝の話も絡んでスリリングに展開するミステリーでした。
犯人が誰かというのではなく、犯人が捕まってしまうのかどうかというのもミステリーになるんだと思った。
最後にタイトル通りジェーン・スティールとして告白することを選んだ主人公ですが。
もしすべてを語ったとしたら自叙伝に残したりするだろうか。
すべてを語らず本にだけ残したという方が納得いく終わり方だったかも。
だがいろんな意味で楽しめる話だった。
とっても面白かったです。ご紹介ありがとうございました。
十九世紀といえば、レディーファーストという礼儀の陰で男女差別は社会の共通認識だった。
「ジェーン・エア」は孤児でありながら男女平等の考え方を持ち、自由恋愛で身分の枠を超えた愛を勝ち取るというフェミニズムな部分が画期的だったそうだ。
本作ではこの「ジェーン・エア」が主人公の愛読書として随所に出てくる。
主人公もジェーン・エアと同じように孤児で叔母に虐待され、悲惨な寄宿学校生活を送り、家庭教師としてソーンフィールド家へ入り、そこの主人と恋に落ちる。
ロチェスターのように重婚という障害があったわけではなかったが、本作のジェーンには本家のジェーンと違う部分が一つだけあった。
自叙伝として語られる本作の一ページ目でその秘密はいきなり暴露される。
「愛のために、また折々のやむなき事情から、わたしが犯した数々の殺人」があるというのだ。
そう、これは主人公ジェーン・スティールの犯した殺人の告白だった。
ヴィクトリア朝を舞台にしながらこれほど衝撃的な話は他にない。
自叙伝は子供の頃の思い出話から始まる。
ハイゲート・ハウスという屋敷の離れにフランス人の母親と住んでいた幼いジェーンは、父親はすでになく気まぐれな母親の愛を受けるのに必死な少女だった。
母屋には同じく寡婦の叔母と四歳年上の従兄弟エドウィンが住んでいて、どんな形にせよ交流があるのはこの親子だけだった。
ジェーンが九歳の時にその世界が崩れ去るまでは。
その後ローアン・ブリッジという寄宿学校に送られて教育を身につける。
敵が考えていることを見抜き、身を隠すか奇策に出てでも被害をやり過ごすコツを学んだのだ。
デイヴィット・コパフィールドといい小公女といい、寄宿学校ってどうしてまともじゃないんだろう。
世間と隔絶されているってこうなるのかもしれない。
結局ある事件がきっかけで、妹のように愛していたクラークと共にロンドンへ流れつく。
そこでタブロイドの原稿書きという仕事で生活の糧を得ていたのだったが。
自分の生家ハイゲート・ハウスから家庭教師を募集していることを知って、名字を変え無事に入り込んだ。
パンジャーブの影響が色濃い一家の中で、ジェーンは一家の秘密を探り出そうとします。
それは好奇心なのか、自己防衛なのか。
パンジャーブ地方から持ち出された財宝の話も絡んでスリリングに展開するミステリーでした。
犯人が誰かというのではなく、犯人が捕まってしまうのかどうかというのもミステリーになるんだと思った。
最後にタイトル通りジェーン・スティールとして告白することを選んだ主人公ですが。
もしすべてを語ったとしたら自叙伝に残したりするだろうか。
すべてを語らず本にだけ残したという方が納得いく終わり方だったかも。
だがいろんな意味で楽しめる話だった。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
この書評へのコメント
- クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:早川書房
- ページ数:552
- ISBN:9784150019280
- 発売日:2018年02月06日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。























