hackerさん
レビュアー:
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「わたしたち、みんなふつうだわ。たまたま、自分たちの思うふつうが。他の人のふつうとはちがっていただけ。(中略)自分たちが経験したことしか受け入れられない人っているのよね」(本書登場人物の台詞)
邦題がいいですねぇ~。それと表紙の絵に惹かれて、読んでみました。2012年刊の本書の原題は”The Terrible Thing that Happened to Barnaby Broket"、直訳すると「バーナビー・ブロケットに起きたおそろしいできごと」となります。これを、この邦題にしたセンスに、感心してしまい、読む破目(?)になりました。
本書の主人公はバーナビー・ブロケット、オーストラリアのシドニーで、「ふつうであること」が金科玉条である父親のアリスターと母親のエレノアの間に生まれました。他の家族は、お兄さんのヘンリー、お姉さんのメラニー、犬のキャプテン・W・E・ジョーンズです。ごくごくふつうの人々であり、家族でした。ところが、バーナビーは、体が自然に浮いてしまう子なのです。生まれた直後に、病院の天井に張りついてしまったぐらいです。アリスターとエレノアは、そんなバーナビーが恥ずかしくなりません。バーナビーを寝かせるために、天井にマットを張り付けなければなりませんし、陽に当たるために外出する時は、共に首輪をつけて、キャプテン・W・E・ジョーンズを地面に、バーナビーを風船のように空中に浮かべながら、歩くのです。学校に行くときは、背中のリュックに重い砂袋を入れて、浮き上がらないようにしなければなりません。だけど、バーナビーは自分の意志でこれをコントロールできないのです。浮き上がろうと思ったら浮き上がり、浮き上がるまいと思うと浮き上がらないというわけではありません。ですが、両親には理解してもらえません。ある日、海辺に散歩に行ったバーナビーは、エレノアに砂袋をナイフで切られてしまいます。砂がどんどんこぼれていき、バーナビーはふわふわと空中へ、どんどん高く上がっていきます。さぁ、大変!ですが、熱気球に乗ったおばあさんのカップルに助けられます。彼女たちは40年来の同性愛カップルで、経営しているブラジルのコーヒー農園に帰る途中でした。そして、バーナビーは、意図せぬ不都合が重なって、ブラジルから、ニューヨーク、トロント、アイルランドへと旅することになります。旅の途中で、芸術家、顔にやけどの痕が残る男性、「かいぶつもどきサーカス」の見世物にされている特徴のある人等、「ふつう」でない人たちにたくさん出会います。そして、理解するのです、ふわふわと浮いてしまうのは他の人から見れば「ふつう」ではなくても、それは自分にとっては「ふつう」であることを。
さて、同性愛カップルや体の不自由な人が登場することからも明らかなように、本書のバーナビーは、LGBTQのようなマイノリティー及び障碍者の象徴です。昔は、同性愛者は「ふつう」の人々からは、一種の病気と思われていたものですが、そのように生まれたのであって、そのようになるのではないという認識は以前よりは広がっているように感じます。しかし、同時にバーナビーの両親のように、現在でも、それがどこかおかしいことと思っている人も少なくないのが現実です。
実は、アリスターとエレノアは共に、その親たちから、俳優のような「ふつう」でない人間になることを過度に期待され、その反動で「ふつう」であることにこだわるようになったのです。親による子の支配というのも、本書の隠れたテーマで、バーナビーがラストでとる行動は、両親からの解放であることが、それを示しています。
本書の作者は、1971年ダブリン生まれのジョン・ボインです。本書の他にも、何冊か邦訳が出ていますし、アイルランド出身の文学者としては知られた存在だと思います。さて、可愛らしいイラストを描いた1977年生まれのオリヴァー・ジェファーズは、オーストラリアで生まれ、北アイルランドで活躍している児童文学者・絵本作家・イラストラーターです。彼が手を染めた本も、10冊以上翻訳されています。共に、注目していきたい作家です。
本書の主人公はバーナビー・ブロケット、オーストラリアのシドニーで、「ふつうであること」が金科玉条である父親のアリスターと母親のエレノアの間に生まれました。他の家族は、お兄さんのヘンリー、お姉さんのメラニー、犬のキャプテン・W・E・ジョーンズです。ごくごくふつうの人々であり、家族でした。ところが、バーナビーは、体が自然に浮いてしまう子なのです。生まれた直後に、病院の天井に張りついてしまったぐらいです。アリスターとエレノアは、そんなバーナビーが恥ずかしくなりません。バーナビーを寝かせるために、天井にマットを張り付けなければなりませんし、陽に当たるために外出する時は、共に首輪をつけて、キャプテン・W・E・ジョーンズを地面に、バーナビーを風船のように空中に浮かべながら、歩くのです。学校に行くときは、背中のリュックに重い砂袋を入れて、浮き上がらないようにしなければなりません。だけど、バーナビーは自分の意志でこれをコントロールできないのです。浮き上がろうと思ったら浮き上がり、浮き上がるまいと思うと浮き上がらないというわけではありません。ですが、両親には理解してもらえません。ある日、海辺に散歩に行ったバーナビーは、エレノアに砂袋をナイフで切られてしまいます。砂がどんどんこぼれていき、バーナビーはふわふわと空中へ、どんどん高く上がっていきます。さぁ、大変!ですが、熱気球に乗ったおばあさんのカップルに助けられます。彼女たちは40年来の同性愛カップルで、経営しているブラジルのコーヒー農園に帰る途中でした。そして、バーナビーは、意図せぬ不都合が重なって、ブラジルから、ニューヨーク、トロント、アイルランドへと旅することになります。旅の途中で、芸術家、顔にやけどの痕が残る男性、「かいぶつもどきサーカス」の見世物にされている特徴のある人等、「ふつう」でない人たちにたくさん出会います。そして、理解するのです、ふわふわと浮いてしまうのは他の人から見れば「ふつう」ではなくても、それは自分にとっては「ふつう」であることを。
さて、同性愛カップルや体の不自由な人が登場することからも明らかなように、本書のバーナビーは、LGBTQのようなマイノリティー及び障碍者の象徴です。昔は、同性愛者は「ふつう」の人々からは、一種の病気と思われていたものですが、そのように生まれたのであって、そのようになるのではないという認識は以前よりは広がっているように感じます。しかし、同時にバーナビーの両親のように、現在でも、それがどこかおかしいことと思っている人も少なくないのが現実です。
実は、アリスターとエレノアは共に、その親たちから、俳優のような「ふつう」でない人間になることを過度に期待され、その反動で「ふつう」であることにこだわるようになったのです。親による子の支配というのも、本書の隠れたテーマで、バーナビーがラストでとる行動は、両親からの解放であることが、それを示しています。
本書の作者は、1971年ダブリン生まれのジョン・ボインです。本書の他にも、何冊か邦訳が出ていますし、アイルランド出身の文学者としては知られた存在だと思います。さて、可愛らしいイラストを描いた1977年生まれのオリヴァー・ジェファーズは、オーストラリアで生まれ、北アイルランドで活躍している児童文学者・絵本作家・イラストラーターです。彼が手を染めた本も、10冊以上翻訳されています。共に、注目していきたい作家です。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:作品社
- ページ数:256
- ISBN:9784861824456
- 発売日:2013年10月31日
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