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三太郎さん
三太郎
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川上さん流の不思議なお話が21篇も詰まっています。
「猫を拾いに」は川上さんが2013年に発表した短編集。21の掌編からなる。2010年に発表した「パスタマシーンの幽霊」に似ている。どちらも掌編集で若い女性が主人公の話が多い。また状況設定が奇妙な話が多い。全部は紹介できないから気になった短編について2,3書いてみましょう。

「朝顔のピアス」の語り手はアルバイトで代筆業を営んでいる主婦らしい。今回の依頼はラブレターの代筆だ。クライアントは36歳の既婚男性で、相手は65歳の未亡人。すでに3回デートしていて、正式に交際を申しこみたいのだとか。ちょっと奇妙な設定でどんなラブレターが出来上がったのか読みたいとこですが、内容は書かれていません。後日、相手の女性と偶然に電車の中で出会ったのですが、ラブレターを書いた時のイメージ通りの女性だったとか。

この話では既婚者の男が3回のデートで相手の女性の年齢を正確に把握していたというのが、何か怪しい。

また語り手は難しい仕事を終えたらプランターに花の種を撒くというのですが、前の仕事が終わった時に撒いたのはクリスマスローズの種で、すでに花は終わったと書かれています。クリスマスローズは多年草で、撒いてから開花まで2,3年はかかるので、語り手の仕事はたまにしかなかったということか、あるいは著者の川上さんが園芸に詳しくないということなのか。

「ひでちゃんの話」は、証券会社勤めだったあたしの友達のひでちゃんが会社を辞めて包丁研ぎの職人になる話だ。きっかけは通勤中に電車の窓から見えた「包丁研ぎ教えます」という看板を見たからだという。彼女は親方の元で修業後に沖縄に移住して包丁研ぎと株式売買で生計を立てているという。

あたしは錆びたパン切り包丁(あのギザギザしたやつか?)を研いでもらおうとひでちゃんのところへ送ったが、ひでちゃんはパン切り包丁の研ぎ方を習ってなくて、包丁はそのまま戻ってきた、という話。

実際、仕事を辞めて沖縄へ行く人の話はときどき聞きますね。僕はまだ沖縄へは行ったことがないのですが。

「クリスマス・コンサート」は大学のオーケストラに所属している男女4人組の恋愛話。4人は四重奏をよくやるというだが、その楽器編成がちょっと珍しい。ヴァイオリンとビオラとチェロとコントラバスで、通常の弦楽四重奏の編成ではない。どんな曲を合奏したのだろう。ピアノを加えればシューベルトのピアノ5重奏曲「鱒」ができるけれど・・・

どれも現実の世界からちょっとズレたような不思議なお話でした。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:825 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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