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DBさん
DB
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古い家に住むものの話
暑くなってきたので少し涼しくなるホラーをと読んでみました。
最初「かるかや」を「かるたや」だと思っていて、しかも営繕という言葉に縁がなくカルタの怪異譚?と思いつつ読みはじめる。
営繕って家の増改築をする工事のことなんですね。
ちょっと怖いが面白い六編の短編集です。

まず最初の「奥庭より」では、死んだ叔母から古い町家を受け継いだばかりの女性が主人公だ。
もともと祖父母が住んでいたのを叔母が継いだ家だったが、叔母の兄である父親が実家にあまり帰らなかったこともあって疎遠だった。
父親も亡くなり突然飛び込んできた叔母の訃報に、職場の人間関係に疲れ家族も恋人もいない独り身だった主人公はその古い家に住むことにしたのだ。
その家には襖をふさぐ形で廊下に置かれた箪笥のむこうに開かずの間があった。
しかも箪笥のむこうの襖が何度閉めても五センチくらい開いている。
少しずつ家に取りついているものが見えていく感覚が怖いです。
叔母の代からの工務店の人から、叔母もまた同じ現象に苦しんでいたことを聞く。
そして紹介された「営繕かるかや」で改修してもらうのですが。
抜本的な解決ではなく、折衷案ともいうべき対策が営繕なんだなと思いました。

続く「屋根裏に」では、タイトル通り屋根裏で足音がすると母親が言い出した息子の苦悩が描かれます。
「猫じゃない?」「イタチだよ」となだめてみるが、人の足音だと言い張る母親。
家をリフォームしても母親の訴えはおさまるどころかひどくなっていく。
そして子供たちもまた同じように屋根裏の何かに怯えるようになっていき、たまたま屋根裏に置いてあった古い瓦を返しに来た工務店に相談するという展開です。
古い家の過去や記憶はリフォームしたくらいじゃなくならないのかも。

他にも雨の日に現れる喪服の女の話や、亡くなった祖父の家に引っ越したら長女だけが知らないお爺さんがいると騒ぐ話もあり。
「潮満ちの井戸」に出てくる家の庭に住む何かははっきりわからなかったが、植物が枯れる原因にはなるほどと思ったり。
最後の「檻の外」では車庫の扉が勝手に閉まるという怪異ですが、この原因となる話の方が何より怖かった。

どの話も前に住んでいた人たちの気配が残る古い家というのが特徴ですが、一番落ち着く場所であってほしい家の中での怪異は神経にこたえそう。
そして営繕かるかやの修理の方法が面白い。
続きもあるようなので読んでみようと思います。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2035 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 薄荷2020-07-02 22:49

    ぜひ「その弐」もお楽しみください♡
    パワーアップして怖くて、悲しくて、意表を突かれる話がいっぱいです。

  2. DB2020-07-02 23:38

    ありがとうございます(^-^)/

  3. サカナ男爵2020-07-12 15:58

    こんにちは。
    私も読みました。
    霊感があるわけでもないかるかやさんが、よりベターと思われる落としどころで対応していくところが怪談ものとしては独特な作品でしたね。

  4. DB2020-07-12 16:47

    こんにちは。
    まさしく「落としどころ」ですね。
    ワンパターンにならないところが面白かったです。

  5. No Image

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