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DBさん
DB
レビュアー:
夜の闇に生きる烏の話
中華風の宮廷を舞台にしたファンタジーです。
主人公は寿雪、二年前に先代が亡くなり烏妃の座を継いだ十六歳の少女だった。
刺繍を施し花喰い鳥を織り出した襦裙は漆黒で、結い上げた髪には簪や歩揺を飾り、髪には赤い牡丹の花が飾ってある。
表紙を一目見た方がわかりやすいが、一目でそれと知られる衣装だ。
だが彼女の姿を見るものは少ない。
身近に人を置くことなく暮らす烏妃の住む夜明宮を訪れる者は限られていた。

「お頼みしたい儀がございます」という常套句を口にひっそりと訪ねてくるのは後宮の妃か侍女や宮女、もしくは宦官か。
いずれも不思議な術を使う烏妃に依頼したいことがあってやってきた者たちだった。
失せ物さがし、祈祷、そして呪殺。
代償さえ払えばどんなことでも引き受ける。

だがある夜訪ねてきたのは皇帝だった。
一年前に代替わりしたばかりでまだ若い。
「夜伽はしない」と言い放つ烏妃に、若き皇帝は翡翠の耳飾りを見せて落とし主を探してほしいという。
落とし主がわからなければ、その耳飾りに憑いている幽鬼の正体を知りたいと。

面倒ごとに巻き込まれたくないとあっさり断り皇帝を追い返した寿雪ですが、何度も通われ依頼を引き受けることに。
しかも引き受けてしまえば宮女のふりをして聞き込みに回ったり、宦官のふりをして官吏に会ったりとけっこう行動的だ。
耳飾りの持ち主の謎を探ることで、過去の事件が掘り起こされていきます。

翡翠の耳飾りの謎を解決したかと思えば、今度は鴛妃である花娘が訪ねてきた。
彼女の持つ花笛、故人を偲ぶための玉で作られた笛が鳴らないとの相談だった。
この後宮では妃たちを鳥の名で呼ぶことになっているようで、鴛、鵲、鶴、鶯、燕に雲雀と出てきます。
漢字力が鍛えられるな。

大抵は幽鬼がらみなのですが、依頼された事を片付けていくとなぜか皇帝も顔を出してという展開で進んでいきます。
そして徐々に烏妃の秘密も明らかになっていく。
後宮にいながら夜伽もせず、皇帝が変わっても烏妃だけは生涯夜明宮にとどまるのはなぜか。
衣装や食べ物が豪華でも一生涯を孤独の中で囚われの身として過ごすというのは重いですね。
徐々に接近した寿雪と皇帝が今後どのような関係を築いていくのか気になるので、続きも楽しみです。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2035 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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