後宮の烏

「烏妃（うひ）」と呼ばれるその妃は
漆黒の壁に囲まれた「夜明宮」にひっそりと暮らしていた。
妃でありながら､夜伽をすることのない特別な存在で､
帝が代替わりしてもその地位が代わることはなかった。
滅多に人前に出ることのないそのその姿を見た者の中には、
老婆であると言う者もいれば、うら若い少女だったと言う者もいて､
不老不死の仙女とも､恐ろしい幽鬼だとも噂されていた。

そんな烏妃を他者と結びつけていた唯一の細い糸は
その不思議な術を用いて､失せ物探しから呪殺まで
後宮の者たちの頼みを叶えてやることだった。

もっとも呪殺の場合は､呪った方も命を捧げる必要があると聞いて
依頼主は諦めて帰っていくのが常だったが……。

後宮に生きながら､決して帝のお渡りのない妃､
それが「烏妃」のはずだったが､
ある夜、時の皇帝・高峻が、烏妃のもとを訪れた。
拾った翡翠の耳飾りに女の幽霊が取り憑いており、
その正体を知りたいと言うのだったが……。

交わるはずのなかった二人の運命の糸が絡み合ったことで
皇帝はもちろん烏妃さえも思いも寄らなかった
国のなりたちや世界のあり方など
大いなる秘密が少しずつ明らかになっていくのだった……。


祐太郎さん主催の掲示板企画
“目指せ「ナツイチ2020」制覇。夏の三大フェスにチャレンジ”に参加すべく、
読んでみたのはまたまたオレンジ文庫のシリーズものの第一作。

高い評判は聞いていたし､
前々から読友さんに薦められてもいたので､
ハマる覚悟で読み始めたのだが､想像以上の面白さ。

これはもうそのうちきっと､
アニメ化､コミック化なんでもあれで､
オレンジ文庫の枠を越え､別レーベルでも出版されるのではないかしら。

もちろん私も､２巻、３巻と次々手を伸ばし……
続きが読みたい！今すぐ読みたい！！と､
飢えと渇きに苦しめられはじめているのだった。