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三太郎さん
三太郎
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病院勤務の内科医だった著者が定年前後に書いた短編集。
内科医の南木佳士さんが2018年に上梓した短編集を読みました。内容は「畔を歩く」、「小屋を作る」、「四股を踏む」と「小屋を燃やす」の4篇。最後の2篇を紹介します。

「四股を踏む」は信州の自宅の庭に植えた山椒の木が雄だったため実が付かないことからはじまる。この山椒は上州の生家の裏山に生えた実生を移植したものだった。実はないが葉の香りは楽しめた。

著者は信州の総合病院で内科医として勤務し、多くの末期がんの患者を看取った。その中には末期がんの姉もいた。姉が「がんばるからさ」というのでつい「頑張らなくてもなるようになるよ」と言ってしまった。

ある日尿が出なくなり血液検査をするとPSAの値が異常に高く、前立腺がんの疑いがあった。精密検査をしても癌は見つからず急性の前立腺の炎症らしかった。前立腺炎の原因は不明だったが、女性ホルモンに類似したイソフラボンを摂るとよいと思い豆乳を毎日飲むことにした。また前立腺の周囲の血行をよくするために四股を踏むようにした。その後前立腺が大きくなった気配はない。

(僕も4年前にPSAの値が高くなり精密検査を受けたが癌は見つからなかった。座り仕事が多く、椅子の座面で前立腺が圧迫されるのがよくないと聞き、ドーナツ状のクッションに座るようにしたらPSAの数値は戻った。)

「小屋を燃やす」は甲さん乙さん丙さん丁さんの四人の友人たちと五人で畑に建てた小屋を皆で解体してストーブで燃やしてうどんを煮て食べる話。小屋は6年前に間伐材を使って建てたもので、酒を持ち寄って宴会などをしていたが、その畑に老人介護施設が出来るために取り壊すことになった。

小屋は朽ち始めていて意外なくらいに簡単に倒れた。小屋の廃材を皆で切って薪を作り、ストーブでその薪を燃やしうどんをつくることになった。雪が降り出していた。うどんの出汁の味がいまいちなので丁さんが携帯で乙さんと甲さんを呼んだ。乙さんは味付けの名人で、甲さんはキノコとりの名人だった。

誰かが酒をお燗するといい、著者が雪の中を酒屋へ走った。

五人で乾杯した。実は甲さんは小屋を建てた半年後に心筋梗塞で亡くなり、乙さんは渓流釣りの事故でやはり亡くなっていたのだが。皆の体に雪が降り積もってきた。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:835 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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