ぽんきちさん
レビュアー:
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それは幻の魚なのか?
アロワナという魚がいる。受け口に特徴的な髭。体は細長く太刀のよう。
サイズの大きなものは90センチほどにもなり、ゆったりと水槽を泳ぐ姿はなかなかの圧巻である。
古代魚でマニアの間では人気の淡水魚だ。
飼いやすい小型のものは数千円で購入可能だが、人気の高いアジアアロワナは数十万から数百万円するものもある。
本書はそのアジアアロワナが主題である。
アジアアロワナ、別名、龍魚。中国では縁起が良いとされる赤や金の体色を持つものの人気が特に高い。
だがこの魚は2006年以降、絶滅危惧種に指定されている。
それでもなお売買が盛んにされているのはなぜか? 絶滅が危惧されつつも、アロワナが相当な数、生存しているためだ。だがそれは野生ではない。養殖され、飼育された多くのアロワナが高額のカネと引き換えに世界各地に運ばれているのである。
本書の著者、ボイトはアメリカ人。実は、アメリカにアジアアロワナを持ち込むのは、絶滅危惧種保護法によって禁止されている(日本では規制はされてない)。ところが、熱心なマニアは法の網をかいくぐり、そのうえ、高値であっても入手しようとする。
こうして日陰で売買される高額な品物には、キナ臭い話が絡みがちだ。バイヤーは匿名、ディーラーは怪しげ、動くカネは相当となれば、陰で犯罪があっても不思議はない。育てたアロワナが盗まれることもそうは珍しくなく、時には強盗殺人も起こる。
著者は、はじめは、危ない橋を渡りながらもアロワナを入手しようとする人がいるのはなぜか、解き明かそうとしていた。だが徐々に、深みにはまり、アロワナのあれやこれやを調べ始める。そうこうするうちに、野生で生きるアロワナを何としても目にしたいとやや偏執的に追いかけ始める。
そもそもが絶滅危惧種絡みのビジネスというのはある種、業が深い。
その種が絶滅に近づけば近づくほど「市場価値」が上がる。
こうした種を販売する業者は、よく、養殖し、数を増やすことで種の保存に協力していると主張する。しかし、飼育下で何世代も交配が重ねられ、あまりにも飼いならされたものは、そもそも野生のものと同じものなのか?
著者の当初の目論見はおそらく、こうした絶滅危惧種をめぐる人々の「闇」をまとめることだったのだろう。
だが後半は、こうした視点を持ちつつも、著者自身が野生のアロワナを一目見ようと異様な熱意を示して発散気味だ。この魚をさほど美しいとも感じていないのに、首狩り族のいる地帯や、紛争地区、ピラニアのうようよ泳ぐ川にまで出かけていく。
その一種、尋常でない状態の著者の「探検記」はそれはそれで読ませる迫力がある。
タイトル通りのものを期待するといささか期待外れの部分はある。だが、著者の執念が牽引力となり、なまじ整ったものより、妙に心に残る読み物になっている。
サイズの大きなものは90センチほどにもなり、ゆったりと水槽を泳ぐ姿はなかなかの圧巻である。
古代魚でマニアの間では人気の淡水魚だ。
飼いやすい小型のものは数千円で購入可能だが、人気の高いアジアアロワナは数十万から数百万円するものもある。
本書はそのアジアアロワナが主題である。
アジアアロワナ、別名、龍魚。中国では縁起が良いとされる赤や金の体色を持つものの人気が特に高い。
だがこの魚は2006年以降、絶滅危惧種に指定されている。
それでもなお売買が盛んにされているのはなぜか? 絶滅が危惧されつつも、アロワナが相当な数、生存しているためだ。だがそれは野生ではない。養殖され、飼育された多くのアロワナが高額のカネと引き換えに世界各地に運ばれているのである。
本書の著者、ボイトはアメリカ人。実は、アメリカにアジアアロワナを持ち込むのは、絶滅危惧種保護法によって禁止されている(日本では規制はされてない)。ところが、熱心なマニアは法の網をかいくぐり、そのうえ、高値であっても入手しようとする。
こうして日陰で売買される高額な品物には、キナ臭い話が絡みがちだ。バイヤーは匿名、ディーラーは怪しげ、動くカネは相当となれば、陰で犯罪があっても不思議はない。育てたアロワナが盗まれることもそうは珍しくなく、時には強盗殺人も起こる。
著者は、はじめは、危ない橋を渡りながらもアロワナを入手しようとする人がいるのはなぜか、解き明かそうとしていた。だが徐々に、深みにはまり、アロワナのあれやこれやを調べ始める。そうこうするうちに、野生で生きるアロワナを何としても目にしたいとやや偏執的に追いかけ始める。
そもそもが絶滅危惧種絡みのビジネスというのはある種、業が深い。
その種が絶滅に近づけば近づくほど「市場価値」が上がる。
こうした種を販売する業者は、よく、養殖し、数を増やすことで種の保存に協力していると主張する。しかし、飼育下で何世代も交配が重ねられ、あまりにも飼いならされたものは、そもそも野生のものと同じものなのか?
著者の当初の目論見はおそらく、こうした絶滅危惧種をめぐる人々の「闇」をまとめることだったのだろう。
だが後半は、こうした視点を持ちつつも、著者自身が野生のアロワナを一目見ようと異様な熱意を示して発散気味だ。この魚をさほど美しいとも感じていないのに、首狩り族のいる地帯や、紛争地区、ピラニアのうようよ泳ぐ川にまで出かけていく。
その一種、尋常でない状態の著者の「探検記」はそれはそれで読ませる迫力がある。
タイトル通りのものを期待するといささか期待外れの部分はある。だが、著者の執念が牽引力となり、なまじ整ったものより、妙に心に残る読み物になっている。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:原書房
- ページ数:336
- ISBN:9784562054664
- 発売日:2018年01月18日
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