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はるほん
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乗るしかない。秀吉というビッグウェーブに。
ここ数年、秀吉が気になっている。
恋かもしれない。
文化方面においてだけ。(偏愛)
【参考】秀吉偏愛のキッカケ豊臣女系図


秀吉と言えば成り上がり者、朝鮮出兵や刀狩・キリシタン禁止令など
権力にこだわるような施政イメージが先行するが、
安土桃山という短くも絢爛な文化の扇動者でもある。
同時に滋賀が一瞬天下のてっぺんを掴んで朽ちた刹那でもあり、
滋賀作の遠き夢のカケラでもある。

作者の奥山さんの著作は源平六花撰時平の桜、菅公の梅を拝読。
文化背景を捕えた硬質な文章が好みで、他の著作も読もうと思っていた。
その1つであった「太閤の能楽師」の改題文庫が本書だ。

タイトル通り、物語はひとりの能楽師が導く。

主人公の能役者は母親に、秀吉に取り入れというトンデモな命を受ける。
意味も分からぬまま、それでも母に逆らえぬ主人公は
口を突いて出た「太閤は能で──神になれまする」という言葉で、秀吉の興を引く。
以来秀吉は、能稽古にのめり込むこととなる──

能にも流派があり、当時は4つあった。
主人公はそのいずれの流派でもなく、奉納の能を舞う神人に過ぎない。
つまり権力に取り入る理由が無い者でありながら、
何故そのような密命を受けたかという謎がストーリーの母体なのだが
個人的には秀吉というただの成り上がりから
百花繚乱の文化が吹きだした軌跡が楽しくてたまらない。

能は猿楽・田楽から発達したものといわれる。
観阿弥世阿弥の登場、室町幕府や寺社のバックアップを得て
芸としてコレからだって時に、応仁の乱が起こる。
幕府も寺も頼れないなら、大名だ。
秀吉というビッグウェーブに乗るしかない。

能に限らず、戦の混沌が終着しつつあった当時は
さまざまな美術・芸術が秀吉の興を買いたかったに違いない。
当然それは、秀吉色に染まる。
秀吉が名古屋(尾張)人だった所為か、それらはド派手な時代を築く。

また物語には、能「邯鄲」が出てくる。

邯鄲──「一炊の夢」の意だ。
日本史上、秀吉ほどに壮大で儚い夢を見たものは居ないだろう。
時代の華であり、同時に咲くことのない「あだ花」だ。
だがもし秀吉が真っ当な武家生まれの人間だったら
桃山という豪奢な文化は生まれなかったかもしれない。
秀吉、やはり面白き男である。

謎のオチは正直、そこに繋げちゃうのかーと思ったので
★1つ引かせてもらった。

で、次も秀吉に関わる本を読んだ次回予告。
はるほん、アッサリ秀吉を捨てて他のオトコに走るの巻。

変かもしれない。
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はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

読んで楽しい:21票
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この書評へのコメント

  1. ぽんきち2018-05-08 21:59

    > はるほん、アッサリ秀吉を捨てて他のオトコに走るの巻。

    最後に吹きましたw
    誰だろ、滋賀だけに、三成・・・? ・・・いや、今さらでしょうか(^^;)。
    文化といったら井伊直弼・・・?

    誰だか、楽しみにしておこう~(私、知らない人だったりして(^^;))

  2. はるほん2018-05-08 22:19

    >ぽんきちさん
    正確に言うと「秀吉に繋がる文化本」で時代は数年ほど前。
    秀吉もちゃんと出てくるけど、もう心変わりしてました。←

    そこそこメジャー人ですよとだけ言い置いて、
    次来るときにカレシ連れてきますねw←何言ってんだコイツ

    勿論、三成も直弼も愛している罪な中年ですよ。フッ。←

  3. No Image

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