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ぽんきち
レビュアー:
見てわかる日本のまんがの変遷--戦中・戦後、そして手塚治虫という巨人。
まんが原作者・評論家による日本まんがの歴史を、まんが家がまんが化したもの。
いわば、まんがを学ぶための「学習まんが」である。
現著者がネコのキャラクターと一緒に講義する形式で、取っ付きやすく敷居は下げてあるが、骨格となるのはかなり骨太な評論であり、核となる視点がいくつかある。
まんが化されているために、百聞は一見に如かず的にわかりやすいのが美点である。

最初に「キャラクター」について論じた後、江戸期・明治期をざっとおさらいし、大正アヴァンギャルドを経て、昭和へと進む。
まずは、ミッキーをはじめとするディズニーのキャラクターが「パーツ」で構成されていることに着目する。戦中・戦後の漫画家はこうしたキャラクターの描き方を取り込んだ。巨人・手塚治虫は自分の漫画を「画」ではなく、パターンに則った「記号」の組み合わせだと考えていたという挿話が興味深い。近現代の日本のまんがでは、これに成長するという「身体性」と心を持つという「内面性」が加味される。
そこに至るまでにどのような背景があったかというのが骨子となる。

のちに「のらくろ」で知られる田河水泡は、実は前衛美術家であったという。「のらくろ」誕生からシリーズ終了までの流れをキャラクターの視点から読み解いていく。
次の大きな流れは、戦争がまんがにもたらした影響である。戦時下の思想統制は、子供向けのものに関しても「空想」を排除し、「科学」的な創作物を強制した。その結果どうなったかといえば「物語」が消えていってしまったわけである。実は「学習まんが」の起源もここらあたりにあるようだ。表現が規制されていく中で、できる限りで抵抗を試みた漫画家もいるわけだが、その戦いは地を這うようなわかりにくいものにならざるを得なかった。
戦後の巨匠といえばやはり手塚治虫である。手塚のストーリーが大きな物語に翻弄される「個」を描いているという論旨は慧眼だろう。物語の構成だけでなく、映画の撮り方を参考にするなど手法に関してもさまざまな試みを行っており、それらがすべて成功したわけではもちろんないが、新しいものに挑戦し続けるその姿勢がやはり巨人であったというところか。

流れとしては1970年代あたりまでを追っている。その後に関してはまだまだ考察が必要ということだろう。
少女まんがに関してなどはもっとさまざまな視点から議論することができそうだし、本書で扱われた各論に関しても異論はありそうだ。
とはいえ、まんがはときどき読むけれどそれほどは詳しくない程度の門外漢にしてみると、まんがの歴史というテーマの奥の広がりが感じられ、刺激的で楽しく読める1冊だった。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1832 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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