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ぽんきち
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人生はいつだって未整理で、人はいつだって物語の途上なのかもしれない、が。
第158回芥川賞受賞作。

桃子さんは老女である。
夫には先立たれ、16年をともにした老犬も世を去った。
息子とも娘とも疎遠である。
ひとりぼっちで生きている桃子さんだが、その日常は存外にぎやかだ。
家を駆けまわるネズミの物音に加えて、
オラダバオメダ、オメダバオラダ、オラダバオメダ、オメダバオラダ、
と声がする。じんくじんくと足が痛んでも
行くべし行くべし行がねばなんね
と鼓舞する者がいる。

やるせない毎日、けれども桃子さんの中には、おかっぱの女の子、愛する人を得て生き生きとした若い女、夫を失い呆然とする女、とさまざまな年齢の桃子さんが生きている。この先、自分がたどるであろう老いの姿をしたものもいる。
そして心のどこかに、故郷の八角山がそびえる。
おめはただそこにある。何もしない。ただまぶるだけ。見守るだけ。

そんな桃子さんの静かで賑やかな日常を描く1編。

なのだが。
東北弁部分のリズム感は読んでいても楽しいのだが、柔毛突起とか先カンブリア紀とか硬めの言葉が混ざる部分とのバランスがよくないように思う。
その部分も含め、桃子さんの脳内なのだと言われればそうなのかもしれないけれども、全般にちぐはぐな印象を受ける。やや厳しいことを言えば、脳内ダダ漏れの話を聞いてもな、という感じがところどころでしてしまうのである。

息子・娘との顛末も大きく進展するわけではない。桃子さんが大きな悟りを開くわけでもないし、孤独な暮らしが解消するわけでもない。
結局のところ、人生はいつだって未整理で、人はどこか片づけようのない心を抱えて生きていくものなのかもしれない。それでもいろんなことがどうしようもなくても、人生生きている以上、自分が主人公なのだよ、どこかで折り合いをつけて、泣くときは泣き、笑うときは笑って生きていくしかないのかもしれないな。
・・・と、あれ? そんな結論でいいのか、と、個人的にはよくわからない読後感なのだけれども。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1831 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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