書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ぷるーと
レビュアー:
コンスタント同様に振り回され、混乱の渦に巻き込まれてしまおう。
 自家用宇宙船で宇宙に出たはいいが、ある時間等曲率漏斗のただ中に飛び込んでしまったために波動現象としてのみ存在するようになったウインストン・ナイルス・ラムファード。かれは、それによって得た未来を知る力を利用して、戦い明け暮れる人類の救済に乗り出した。

 ラムファードによって引き起こされた宇宙戦争。さらにそのあとに用意された新宗教。このとんでもなく大規模な計画のために、ラムファードによって徹底的に操られたのが、マラカイ・コンスタントだった。

 マラカイの父は、株の購入に当たって聖書の文字を組み合わせるという単純な操作だけで、巨万の富を得た信じられないほどの強運を持った男だった。億万長者の息子として生まれたマラカイは、ただの幸運から得た利益を世の中のために還元することなく己の楽しみのためだけに使い、享楽的な背徳に溺れているぐうたら息子。巨万の富を非利己的な行いにも想像的な行いにも使うことなく浪費させたという意味で、マラカイは、ラムファードが作り上げた新宗教の人身御供となり宇宙を放浪させられる。

 さらにもう一人、ラムファードによってその運命を決定づけられてしまった人物がいた。
 ラムファードの妻ビアトリスは、自分の育ちのよさを鼻にかけあらゆるものを嫌悪したという罪で、マラカイ同様、新宗教の人身御供として土星のタイタンに追放されてしまったのだ。

 ラムファードは、自分が手に入れた能力を駆使し、何とかして地球に平和をもたらそうとした。
 だが、最終的には、自分の行為も、実は他者の抵抗不可能な意志に誘導された行為に過ぎなかったのではないかという思いに打ちひしがれる。

 ラムファードのやり方は、はたして正しかったのかどうか。後世のラムファード批判の文章を随処で紹介することで、作者は、ラムファードのやり方を全面的に肯定してはいないという態度を示す。
 人類の改革は必要だが、独善的な行為がもたらす不幸ということについても、作者は深く憂慮しているのだ。
 
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2922 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

参考になる:21票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ