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DBさん
DB
レビュアー:
ヤギになってみた男の本
前作の『ゼロからトースターを作ってみた結果』が面白かったので、本著も読んでみました。
トースターのプロジェクトから四年、ロイヤル・カレッジ・オブ・アーツを卒業して現在のところフリーランス。
友達もガールフレンドも仕事に忙しくしている中で、父親と同居して目下の仕事は姪っ子の犬の散歩という33歳となれば人間やめたくもなるかもしれない。
オープニングではそういった事情から人間をお休みするプロジェクトへと結びついた理由が長々と書いているけれど、転職のストレスとプライベートでの問題でちょっと行き詰ってる中で読んだので共感する部分もあった。
だがそこから「ヤギになる」という発想が面白い。
もちろん抽象的にではなく、実際にヤギと同じ四足歩行のスタイルで草を栄養源とし、ヤギの群れと交わってアルプスを越えるという壮大な計画です。

最初はヤギではなく象を目指したんだとか。
巨大なトラックのような骨組みの象の中で草を取り込み栄養源とするというプランだが、実際の象を目にしてその大きさにプロジェクトをあきらめる。
そこでシャーマンに出会って自分に一番合う動物を選んでもらった結果がヤギだった。
身近な動物がいいということで、しかも草食じゃないと無理だしとヤギになったらしい。
家の前にヤギがいるという著者の自宅がどんなものかは知りたいが。
そこからアニミズムにおける動物になりきる行為が何を意味するかなどという考察が軽い口調で語られていきます。

だがヤギになると決めたからにはプロジェクトは本格的になる。
まずヤギの骨格と筋肉の動きを知るために解剖を学び。
義肢を作る専門家にヤギになれるための四足を作ってもらう。
普段は人間の義肢かせいぜい犬の足しか作ったことがない彼らに、ヤギになる意味から説明していくのは読んでて面白かった。
ちなみに義肢製作だが戦地でない場所で人間が四肢を失うのは、事故などではなく糖尿病の合併症が一番多いというのは初めて知った。
さらにヤギのように草を栄養源にするために微生物学的な試行錯誤をして、人間の象徴でもある言語中枢をブロックすることができるかの実験をして。
結局言語ブロックはロボトミー並みになってしまうので却下となり、草を栄養とするのも当初とはだいぶ違った形に落ち着きます。
そしてヤギの交配問題からプロジェクトの実行時期も決定される。

ヤギの足もやはりボディが人間の身体ということで制約が厳しい。
当初はヤギのようにギャロップするのをイメージしていたが、それをしたら身体がバラバラになるという専門家の意見を素直に取り入れた。
そしてとうとうスイスの山でヤギの群れに合流する。
ヤギ牧場の持ち主に爆笑されながら、四足歩行で山道に挑みます。
当然というべきか片手腕立て伏せで前進するようなものだというスタイルは苦行としか言いようがない。
人間をお休みするのも大変なんだと思いました。

トースターでは実際に制作したトースターでパンを焼いてみるというフィナーレからその文化的な考察というオチもついていたが、今回は最後の結論がなかったのが残念。
この「ヤギ男」プロジェクトでイグノーベル生物学賞を受賞したそうなので、そちらの論文にはちゃんと結論もついていたのかもしれません。
次のプロジェクトも楽しみだ。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2027 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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