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はなとゆめ+猫の本棚
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一つの場所に定住する人と、ずっとあちこちを放浪する人との分岐点は?
 連作短編集。5作品が収録されている。

 テーマは、生まれ育った小さな町。いじめにあったり、家族自体が孤立しても、ずっとこの町に踏みとどまる人と、こんな町をでて、もっと住みやすい町を探しもとめて流浪する人。そんな人たちが交錯してできる物語、ここにとどまる人とここから出て行く人を描く。

 例えば、4作目の「溺れるスイミー」

 主人公の唯子は、小さな町の製菓工場で働いている。父親は、この町からでて、流浪を繰り返す。唯子が小さい時から、それは始まる。最初は1日か2日で家に帰ってきたが、そのうちそれが1週間、2週間となり、そして全く帰ってこなくなった。

 四国のある町の警察から父親の死体が見つかったとの連絡がある。
唯子は、職場の上司立野からプロポーズを受けている。しかし踏ん切りがつかない。

 そんな時、ある工事現場をみていると、ダンプカーから、小学校時代の問題児宇崎が運転席から降りてくるのが見えた。2人は互いに声をかけあう。そして宇崎の提案でダンプカーに唯子はのせてもらう。初めてのダンプカーの乗車、助手席から見える景色に唯子は感動する。

 宇崎は高校をでてから、生まれた町を飛び出し、トラックの運転手をしてあちこち回ってきた。トラック運転手は人手不足で、どこへ行っても就職先はある。

 そんなある日、宇崎が新品のトラックに乗り、唯子との待ち合わせ場所にくる。そして唯子を乗せ、2人でここが生活できる場所だというところを探すため全国をまわろうと宇崎が提案。

 唯子はトラックに乗り、宇崎とトラックで生まれた町をでる。
あるサービスエリアで、母を思い出し、唯子は言う。
 「私、行けない。ここで降りる」と。

 それは、四国の町に父の遺体を母と引き取りに行ったとき、母の言葉を思い出したから。
「共生できない人はこれでいいのよ。」

 私の会社時代にも多くの女性が会社をやめ、海外にとびたった。しかし、半分くらいは、住んでいた町に戻ってきた。その他の女性は、海外で伴侶を得て、海外にすみついた。

 そうか、その分岐点は「共生」だったのか。
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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6224 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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