かもめ通信さん
レビュアー:
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予想外の面白さ!?ページをめくる度に、驚きのエピソードが飛び出して、思わず誰かに「ちょっと聞いてよ!」「これ知っている?」と話したくなって困ってしまう。いやもちろん、はしゃいでいる場合ではないのだが。
ぽんきちさん主催の読書会 「科学道100冊2021」に挑んでみる!?に参加すべく手にした本。
食いしんぼうであると同時に、ささやかながらも家庭菜園に勤しむ身としては、やはりおさえておきたいところ、と手に取ってみたものの、予想以上に厚く、なにやら難しそうでおっかなびっりページをめくり始めた。
ところが、これが、めちゃくちゃ面白い。
たとえば、1840年代にアイルランドを襲ったジャガイモの飢饉。
ジャガイモの疫病によって引き起こされたその飢饉は、アイルランドだけで100万人以上のが亡くなったという。
疫病は食事構成でジャガイモへの依存度が高かった北ヨーロッパの他の地域にも深刻な影響を与えたのだが、とりわけアイルランドでは、ヨーロッパだけでなくアンデス地方の住民と比べても、ジャガイモへの依存度が高かったのだ。
それはなぜか……。
1970年代、アフリカ大陸のキャッサバに甚大な被害をもたらした原因は?
そしてまたじゃがいもやキャッサバがいかに優れた食材であるか。
1989年ブラジルのカカオ農園で天狗巣病菌におかされたカカオの木が見つかる。
当時、ブラジルは世界第2位のチョコレート生産国だった。
それからたった4年後には、チョコレートの純輸入国になってしまったという。
いったいなにが起きたのか。
ページをめくる度に、驚きのエピソードが飛び出して、思わず誰かに「ちょっと聞いてよ!」「これ知っている?」と話したくなる。
最初のうちは一緒になって面白がっていた家族は、次第にうるさがるようになり、ついには「その本、まだ読み終わらないの?」と訊かれてしまった。
でもちょっと、もう少しだけ聞いて欲しい。
世界中から様々な種子を集める活動、そしてまた度重なる戦禍から種子を守る活動の歴史。
レニングラード包囲戦の最中、目の前に食べることができるものがあったにもかかわらず、種子コレクションを守りとおし、餓死していった研究者たち。
2003年のアメリカによるイラク侵攻の際にも、最も重要な宝として救出活動が続けられたメソポタミア直系の遺産である種子たちのゆくえ。
憤懣やるかたないのは、戦争が始まるまで食糧を自給していたイラクの話。
アメリカ政府は2004年、イラクの農業を復興させる試みの一環として、アメリカの企業に種子を配布させた。
それにはイラク人に配布された種子の再使用を禁じる命令が含まれていて、以来イラクの農民はメソポタミア地方で栽培化された作物の種子を、アメリカの企業から毎年買わなければならなくなったというのだ。
生活の糧も食卓も、支配されてしまうその仕組みに思わず暗澹とした気持ちになる。
それでなくても、欧米のコムギとトウモロコシ、アフリカのキャッサバ、そしてアジアのコメというように、今、世界中の人々の食生活は、ごく少数の作物に依存している。
植物性食物の場合でいえば、人類が消費しているカロリーの80%がたったの12種から摂取されているのだという。
農業が画一化されると、栽培作物は天敵などに対してきわめて脆弱になってしまう。
本書はそのことに警笛をならしているのだが、それは同時に、利益優先の大規模農業に対する警笛でもある。
そういえば…と、種子法、種苗法問題が頭をよぎる。
自分の食卓が誰かに支配されるおそれはないか、今一度真剣に問うべきではないかと、課題を突きつけられている気がした。
食いしんぼうであると同時に、ささやかながらも家庭菜園に勤しむ身としては、やはりおさえておきたいところ、と手に取ってみたものの、予想以上に厚く、なにやら難しそうでおっかなびっりページをめくり始めた。
ところが、これが、めちゃくちゃ面白い。
たとえば、1840年代にアイルランドを襲ったジャガイモの飢饉。
ジャガイモの疫病によって引き起こされたその飢饉は、アイルランドだけで100万人以上のが亡くなったという。
疫病は食事構成でジャガイモへの依存度が高かった北ヨーロッパの他の地域にも深刻な影響を与えたのだが、とりわけアイルランドでは、ヨーロッパだけでなくアンデス地方の住民と比べても、ジャガイモへの依存度が高かったのだ。
それはなぜか……。
1970年代、アフリカ大陸のキャッサバに甚大な被害をもたらした原因は?
そしてまたじゃがいもやキャッサバがいかに優れた食材であるか。
1989年ブラジルのカカオ農園で天狗巣病菌におかされたカカオの木が見つかる。
当時、ブラジルは世界第2位のチョコレート生産国だった。
それからたった4年後には、チョコレートの純輸入国になってしまったという。
いったいなにが起きたのか。
ページをめくる度に、驚きのエピソードが飛び出して、思わず誰かに「ちょっと聞いてよ!」「これ知っている?」と話したくなる。
最初のうちは一緒になって面白がっていた家族は、次第にうるさがるようになり、ついには「その本、まだ読み終わらないの?」と訊かれてしまった。
でもちょっと、もう少しだけ聞いて欲しい。
世界中から様々な種子を集める活動、そしてまた度重なる戦禍から種子を守る活動の歴史。
レニングラード包囲戦の最中、目の前に食べることができるものがあったにもかかわらず、種子コレクションを守りとおし、餓死していった研究者たち。
2003年のアメリカによるイラク侵攻の際にも、最も重要な宝として救出活動が続けられたメソポタミア直系の遺産である種子たちのゆくえ。
憤懣やるかたないのは、戦争が始まるまで食糧を自給していたイラクの話。
アメリカ政府は2004年、イラクの農業を復興させる試みの一環として、アメリカの企業に種子を配布させた。
それにはイラク人に配布された種子の再使用を禁じる命令が含まれていて、以来イラクの農民はメソポタミア地方で栽培化された作物の種子を、アメリカの企業から毎年買わなければならなくなったというのだ。
生活の糧も食卓も、支配されてしまうその仕組みに思わず暗澹とした気持ちになる。
それでなくても、欧米のコムギとトウモロコシ、アフリカのキャッサバ、そしてアジアのコメというように、今、世界中の人々の食生活は、ごく少数の作物に依存している。
植物性食物の場合でいえば、人類が消費しているカロリーの80%がたったの12種から摂取されているのだという。
農業が画一化されると、栽培作物は天敵などに対してきわめて脆弱になってしまう。
本書はそのことに警笛をならしているのだが、それは同時に、利益優先の大規模農業に対する警笛でもある。
そういえば…と、種子法、種苗法問題が頭をよぎる。
自分の食卓が誰かに支配されるおそれはないか、今一度真剣に問うべきではないかと、課題を突きつけられている気がした。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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この書評へのコメント
- 三太郎2022-04-18 11:58
日本人は食料をかなりの部分輸入に頼っていますが、炭水化物はお米と小麦に偏っていますよね。将来のためにトウモロコシやキャッサバをもっと食べるようにしたらどうかな。今はトウモロコシは家畜の飼料だしキャッサバはタピオカドリンクの原料ですが、もっと直接食べるようにしたらよいでしょう。自給できそうなサツマイモを主食にするのもよいかも。温暖化が進むとキャッサバも国内で生産できるかも。
また、ウクライナの戦争で小麦が値上がりしているから、この際ご飯をもっと食べたらよいのかも。
ところで僕はバナナも気になりますが、もっと気になるのはコーヒーかな。コーヒーさび病との戦いはまだ続いているようです。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:青土社
- ページ数:397
- ISBN:9784791770052
- 発売日:2017年07月25日
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