ぽんきちさん
レビュアー:
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沖縄戦で死の瀬戸際に立った少女は魂(マブイ)を落とす。失われた魂を求めて、少女の波乱万丈の人生が始まる。
629ページの大部。
物語の場面は沖縄からボリビアへとダイナミックに転換する。
沖縄の地上戦、ボリビアの日本人移民、ナチスの残党、キューバ危機、ゲバラ。
実際の歴史的事件・人物の間を縫って駆け抜けるのは、沖縄生まれの美女・知花煉(ちばな れん)である。
少女だった煉は、沖縄戦の業火を辛くも生き延びた。だがその激しさの中、魂(マブイ)を1つ落としてしまう。沖縄では人は7つのマブイを持つという。何かの拍子にそれを落としてしまった者は、それを探し出して自分の中に収めなおさなければならないとされる。
煉は戦後の混乱を持ち前のバイタリティで乗り切っていくが、どこからともなく聞こえるマブイの声に呼ばれ、遥かボリビアへと長い長い旅に出る。
煉はファッショニスタでもあり事業の才能もある。男どもを蹴散らしながら、したたかに生き延びるその姿はなかなかの圧巻である。
ボリビアで出会う女子プロレスのスター、カルメンも、巨躯でありつつ美女、多くのファンを持ち、人情に篤く、痛快なキャラクターである。
日系人のイノウエ兄弟を従えつつ、煉が農業に汗を流し、また空賊として活躍する姿などは、活劇的にもおもしろい。
だが、明るいだけではないのが本作の一筋縄でいかないところである。
煉はともかくも落としたマブイの問題を解決せねばならないのだ。
人生の途上で、煉は(あるいはそのマブイは)運命的な人物に出会い、歴史に翻弄される。
彼女が出会った革命家は純粋な理想に燃えていた。彼女はその純粋さを愛しながらも、一方で、革命が人々にもたらした大きな影響に、革命家が無関心であることに激しく憤る。その愛憎の激しさに胸を突かれる。
煉は長い旅路の末、沖縄に戻る。
ラストシーンは重い。結局のところ、沖縄戦や基地の問題は精算されてはいないのだ。
この大部をここで〆るのか。これには唸らされた。
力作ではあるが、読み終わってみると、いささかバランスが悪い印象を受ける。
活劇的なおもしろさとテーマの重さはかみ合っていたのか。
沖縄からボリビアへの移民団の話はともかく、ストーリーにゲバラを絡ませてくる意図がもう一つよく呑み込めない。
歴史的大事件の狂言回しとして、架空の人物を配する手法にも、いささか雑な感じが否めない。
さまざまな要素がごった煮的に突っ込まれているが、さて、全体としてこなれているか、というと、どこか荒さが目立つように感じるのだ。
著者の熱意はひしひしと感じる。煉の人物造形も好きな人は好きだろう。
だが、読者を丸め込もうとするかのような、前のめり過ぎる力技の展開には、個人的には少々ついていけない部分もあった。
おもしろくは読んだが、釈然としない点も多い。それらをひっくるめて、著者の「味」なのかもしれない。
物語の場面は沖縄からボリビアへとダイナミックに転換する。
沖縄の地上戦、ボリビアの日本人移民、ナチスの残党、キューバ危機、ゲバラ。
実際の歴史的事件・人物の間を縫って駆け抜けるのは、沖縄生まれの美女・知花煉(ちばな れん)である。
少女だった煉は、沖縄戦の業火を辛くも生き延びた。だがその激しさの中、魂(マブイ)を1つ落としてしまう。沖縄では人は7つのマブイを持つという。何かの拍子にそれを落としてしまった者は、それを探し出して自分の中に収めなおさなければならないとされる。
煉は戦後の混乱を持ち前のバイタリティで乗り切っていくが、どこからともなく聞こえるマブイの声に呼ばれ、遥かボリビアへと長い長い旅に出る。
煉はファッショニスタでもあり事業の才能もある。男どもを蹴散らしながら、したたかに生き延びるその姿はなかなかの圧巻である。
ボリビアで出会う女子プロレスのスター、カルメンも、巨躯でありつつ美女、多くのファンを持ち、人情に篤く、痛快なキャラクターである。
日系人のイノウエ兄弟を従えつつ、煉が農業に汗を流し、また空賊として活躍する姿などは、活劇的にもおもしろい。
だが、明るいだけではないのが本作の一筋縄でいかないところである。
煉はともかくも落としたマブイの問題を解決せねばならないのだ。
人生の途上で、煉は(あるいはそのマブイは)運命的な人物に出会い、歴史に翻弄される。
彼女が出会った革命家は純粋な理想に燃えていた。彼女はその純粋さを愛しながらも、一方で、革命が人々にもたらした大きな影響に、革命家が無関心であることに激しく憤る。その愛憎の激しさに胸を突かれる。
煉は長い旅路の末、沖縄に戻る。
ラストシーンは重い。結局のところ、沖縄戦や基地の問題は精算されてはいないのだ。
この大部をここで〆るのか。これには唸らされた。
力作ではあるが、読み終わってみると、いささかバランスが悪い印象を受ける。
活劇的なおもしろさとテーマの重さはかみ合っていたのか。
沖縄からボリビアへの移民団の話はともかく、ストーリーにゲバラを絡ませてくる意図がもう一つよく呑み込めない。
歴史的大事件の狂言回しとして、架空の人物を配する手法にも、いささか雑な感じが否めない。
さまざまな要素がごった煮的に突っ込まれているが、さて、全体としてこなれているか、というと、どこか荒さが目立つように感じるのだ。
著者の熱意はひしひしと感じる。煉の人物造形も好きな人は好きだろう。
だが、読者を丸め込もうとするかのような、前のめり過ぎる力技の展開には、個人的には少々ついていけない部分もあった。
おもしろくは読んだが、釈然としない点も多い。それらをひっくるめて、著者の「味」なのかもしれない。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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この書評へのコメント
- keena071511292018-05-04 11:28
最近というか
『バガージマヌパナス』と『風車祭』より後の
この人の作品はギャグとシリアスのバランスが悪い
それがもう数十年続いていますから
このスタイルで本人は良いと思っているのでしょうが
僕は好きになれません
どちらかに徹底して欲しいですクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - keena071511292018-05-05 01:22
僕が池上永一さんの作品をどれか一つ
人にお勧めするとしたら
最も人気があり
ドラマ化もされた『テンペスト』ではなく
断然『風車祭』ですね
この作品は無茶苦茶好きですクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:632
- ISBN:9784041034651
- 発売日:2017年08月25日
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