にもかかわらず、この本を手にしてしまったのは、
Kuraraさんのレビューが楽しかったからだ。
とりわけ興味を覚えたのはここの箇所
真の男女平等とは、自分のパンツを父親や夫に洗ってもらって当然、
と思うことが出来る女性でないと、享受できないもの。
という著者の主張である。
Kuraraさんもコメント欄で発言されている薄荷さんも
「ダメ!絶対!!」派らしい。
私の場合「それは洗濯ネットに入れて洗って欲しい」とか、
「あれは乾燥機にかけちゃダメ」などと
いちいち口うるさく言うのは嫌だし、
任せたからには口も目もつむる~というのもまたストレスだったりするので、
結局、自分がやる方が圧倒的に多いのだけれど、
我が家の男性陣が「やる!」というなら、「嫌!」とは言わない。
もっとも男性であろうと女性であろうと
家事を「やってもらって当然」なんて考えることの方が許せない気がするのだけれど。
そういえばもうかれこれ二十年以上前の話だが、
あれこれと進んで家事を分担する男性たちにとって
一番ハードルが高いのは「洗濯物を干す」ことだと聞いて
(なるほどなあ!)とうなったことを思い出す。
あれからもうずいぶん長い年月が経った今でも
そういうところはあまり変わっていないのかもしれない。
ちなみに著者と私は同年代。
「総合職」が華々しく誕生した時代に社会人になり、
新卒で就職した職場では
お茶くみは男性も含めた当番制でこなしていた。
学生時代の
「JJ」ネタも「アンアン」ネタもよくわかる。
がしかし……
がしかし、とやっぱり思ってしまうのだ。
男女平等に関して語るべきことは色々あるが、
この本のように、制度やより具体的な事例について評するのではなく
主に著者の感覚的なことを綴っている本は、
当然のことながらその感覚に共感出来ないと楽しめない。
その意味で、やっぱり私には合わなかった。
女子校に通ったという著者が
(今の時代のことは知らないがかつて私たちの時代には)
多くの女子校が「良妻賢母」を育てることを高らかに歌っていたことを
知らなかったとしたら、
それは相当世界も視野も狭かったに違いないと思ってしまうし
「総合職」が誕生した意図を
「男女平等」を実現するためだとだけとらえていたのだとしたら、
これまたあまりにお粗末だろう。
そうした掘り下げ不足は脇に置くとしても
一番感じた違和感は最後の最後にやってきた。
著者はいう。
「男尊女卑」は御法度だけれど、
そうと知りつつ「嗜好品としての男尊女卑思想に快感を覚える男女」は、
今の時代にもいて
「その人たちは嫁と呼ばれたり主人と呼ぶことを強制されているのではなく、
選択してそうしている」のだと。
そういう人たちはいてもいいが自分がそうだからと言って
人にその価値観を押しつけないで欲しいと。
自分もまた「女も必ず経済力を持つべき」などとは考えないようにするからと。
「もっともな主張」のようではあるけれど、
そこには、
喜んで「選択」している人もいれば
選択の余地なくやむを得ず身を置いている人も
そうした疑問を抱けるような環境になかった人も
いるであろうことへの考慮はない。
さらに著者は言う。
男尊女卑にはムッとするが自分の中にも「男尊女子」の部分があって
それを完全に消す勇気もまたないのだと。
私自身、自分の中に著者のいうところの「男尊女子」の思想が
全くないとは思わない。
心当たりはある一方で、
そうした考えを「もってあたりまえ」だと思いたくはないという気持ちがある。
結局、著者はいつも「遠吠え」で
考えはするけれど、一歩二歩と踏み出そうとしているようには見受けられない。
「ありのまま」の矛盾を肯定するだけでは
なにも変わらないと思ってしまうのは一読者の傲慢だろうか。
もっとも、著者自身
実はもっと「とんがった」思想をもっているものの
多くの読者に受け入れやすいように
いろんなものをオブラートに包んだ結果だったりするのかもしれないが。
本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
- この書評の得票合計:
- 56票
| 読んで楽しい: | 16票 | |
|---|---|---|
| 素晴らしい洞察: | 6票 | |
| 参考になる: | 31票 | |
| 共感した: | 3票 |
|
この書評へのコメント
- かもめ通信2017-08-02 07:09
40分前にアップしたはずのレビューが
今みたら、下書き保存になっていました…??
確かに一度投稿は反映されたはずなんですが…(謎)
https://twitter.com/honzuki_jp/status/892496842285383680クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2017-08-02 07:18
ところで……こんなレビューのぶら下がりでお知らせするのもなんなんですが、
オフ会のお誘い、貼っておきます。
興味を持たれた方がいらしたらぜひ。
http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no274/index.html#com2th-14736クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - 三太郎2017-08-02 12:54
>一番ハードルが高いのは「洗濯物を干す」ことだと・・・
そうなんですか?意外ですね。独身男性ならやっているはずですけどね。
僕の子供の頃は、両親が共稼ぎ(死語?)だったので、買い出し、夕食の支度、食器洗い、洗濯(干すのも)は普通にやっていましたね。
今は食事は僕で洗濯は奥さんの分担に自然になっていますが、洗濯にハードルはないなあ。もっとも奥さんに、そんな干し方ではいかん、といわれるかもしれませんが。
ちなみに奥さんは男女雇用機会均等法の最初の世代で、制度つくって魂入れずの扱いに、今でも怒ることがあります(^^;クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - 三太郎2017-08-02 20:44
>ご近所さんの目が気になったんでしょうねえ。
まあ、平日の昼間に洗濯物を干していると、失業中かと思われるかも・・・
僕はもう還暦なので無職でも問題ないのですが。
もう一つ付け加えると、僕は男の兄弟だけだったので、長男の僕が家事を担当したということもあったかも。
さらに言えば、僕が子供のころは今のように便利な家電製品がまだ普及していなくて、僕は小学生の時にお釜とガスコンロでご飯を炊いていました。今でも炊ける自信があります。つまり男の子でも家事を分担しなければ生活が成りたたなかったのかな。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - そのじつ2017-08-23 20:44
もはや家事スキルの有無は男女で分けられないようですね。
自営業の多い(町内会の活発な)地帯に住むわたしの周囲の主婦達は、箸の上げ下ろしも妻だのみの夫(プラス舅)に一生、子泣き爺されるという生き地獄を味あわされておるようです。
この本は読んでいないのですが、かもめさんの感想に非常に既視感をおぼえました。
わたしも「負け犬の遠吠え」をおためし読みだけで挫折しましたし、この著者の「下に見る人」を読んだ感想が本書のかもめさんの感想とかなり共通点があったのでした。
0か1かみたいなバッサリ切り捨てる読み口が痛快な時もありますが、辟易するところも。(それに「神様が当人の耐えられる試練を与えているのだ」とか変な言い訳をしなければいいのにとも思う。かもめさんの推察どおり風当たり対策?)
でも彼女の古典文学の本(徒然草remix)などはちょっと面白いです。まだ読了してませんが(^^;)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2017-08-23 21:29
同志goldiusさんには「帆立貝がちょっと可哀想じゃない?」という以外にはもはや付け加えるべき言葉もない(!)と思って、こっそりGOOD!ボタンだけ押しておいたのですが、そうですか、そのじつ同志もおいでになられましたかw
いや酒井さんはねえ。売れっ子ですからね。ファンも多いことですし。
私もそう敵を作りたくはないわけでしてね……ゴニョゴニョ…(←今夜は日和っているらしいw)
まあでもジェンダー論は論じるよりも実践することの方が難しいわけでして、我が家では今夜も「おーい!お茶!」という声が……発しているのは私ですが…ゲホゴホックリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - 祐太郎2020-08-22 15:30
かもめ通信さま
ぜひともナツイチへのご協力お願いします。
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no392/index.html?latest=20クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:集英社
- ページ数:248
- ISBN:9784087816280
- 発売日:2017年05月26日
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