四十八歳でポルトガル語も話せぬまま、見知らぬ地にやってきてからの生活、人との出会いや起こった出来事ー。著者の目を通して知るこの町の生活はとにかく驚きの連続でした。日本じゃ想像できないようなモノや出来事の連続に著者も色々驚かれたようですが、そんな中で二十年をしっかりと過ごしてこられたんですもの。
近所の人と協力しての過ごし方や、町のおじさんとの攻防。苦手だった料理も人をもてなすようになり、そこでの心配り、盛り付けの工夫。季節ごと折々の料理をこだわって作るようになっていらっしゃったり。そのバイタリティーに感心するばかり。いやいやそんな風にちょっと私には住めないなぁ、なんて思いながら次に何が出てくるのか?なぁんてビックリ箱の中身を楽しみにするような気持ちで読み進めました。
廃墟の美容院に、マフィアの「秘密の花園」。特に美容院は印象に残りました。
壁は残っているものの、天井も床もあらかたが抜け、そこいら中に壊れた家財道具が散乱し、台所があったらしい水道の近くに真新しいと鏡と椅子が一組あるだけだった。そこを
内心小躍りして喜んでいた。こんなに素敵な店は見たことがない。って楽しめる著者ってやっぱりただものでは無い!って思います。
個性的な人々の中で目にしたもの、感じたことが率直に綴られます。(出会った人々については率直過ぎてビックリするくらいですけれど)
地元に住む人々と、バカンス等でやってくる各国の富裕層の人々と、その他の理由でやってきた人々と。ポルトガルの人と、各国からやってきた外国人の両方と関わりあいながら過ごすことで目にした町の二十年間の変化、垣間見たヨーロッパの人々がそれぞれの国の人に対して抱える複雑で微妙な感情-そんなところも非常に興味深く読みました。
片言の英語がコミュニケーションの手段の暮らし。二十年暮らしてポルトガル語が出来ない、ポルトガル語のいらない暮らしとは本当に驚きました。
私が「ポルトガル」から連想するものはあっという間にこの小さな漁師町で著者が出会った そこに住む人々と犬と、色んな国からやってきた人々に塗り替えられてしまいました。
思い浮かぶ景色も「リスボンの世界遺産」からこの本に収められた空と海と-「世界で一番素敵な美容院」である「廃墟美容院」であったところの生い茂ったノウゼンカズラを纏った外観に。
そして、それらを伝えてくれた青目さんの豊かな文章に。
季節ごとの四章で綴られる青目さんの大切な思い出。その中で知る異国の暮らし。
収録された写真の鮮やかさ。景色も、料理も、人も、犬も、漁師町の目の前の島に勝手に建てられた別荘-古びた木材とトタンで建てられた頼りなさげな-の写真も。その全てが見知らぬ地の暮らしを知る助けとなりました。
多くのページが二段組みで構成される中、各章の冒頭は見開きのページに段組みなしで文字だけが綴られています。印象的なその文章を読んだ瞬間にもう青目さんの世界。ポルトガルで過ごした著者のかけがえのない思い出を覗かせて頂きました。
高級エリアで出会った一部の日本人妻が後味の悪い出来事の原因になったという著者。
帰国後
日本の暮らしは夢に描いていたものとはほど遠かった。私たちの日本に対するイメージは、まるで外国人が思い描く東洋の夢の国のようだったらしい。と綴っていらっしゃるけれど。帰国から二年を経てどう過ごしていらっしゃるのだろう。勿論私などが心配せずとも新たな環境で精力的に過ごしていらっしゃるのでしょうけれど。
KanKanTripの新シリーズで海外に暮らす人々の日々を綴った「KanKanTripLife」。これまた気になるレーベルに出会いました。表紙と背表紙のマークの下には小さく「Life」の表記が。でもちょっとこの表記じゃわかりにくい。
ガイドもある従来のシリーズとせめてマークを変えるなどした方が良かったのでは?(じっくり見たら微妙に背表紙のカバンのマークが違う?かな…手元に各シリーズ一冊ずつしかないので何とも判断がつかないけれど)
ネットでの本の購入だと書影でガイド有りだと勘違いして買ってしまいそう。(ってそんなのはうっかりが多い私だけかなぁ。)





興味の赴くまま、読書は雑食。
極端に読むスピードが落ちました。それでもあれこれ興味は尽きず。
積読だけが増えています。更に勢いで買った電子書籍複数もほぼ手付かず。宿題付きだけはアップせねば…
のんびり生息中
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| 読んで楽しい: | 13票 | |
|---|---|---|
| 参考になる: | 21票 |
この書評へのコメント
- Wings to fly2017-08-07 21:33
この本に「惚れた」者といたしましては、かなめさんの評価が☆5つでたいへん嬉しかったです\(^o^)/
従来のシリーズとはっきり区別した方が良いというご提案は同感です。これはガイドブックじゃなくて、エッセイですものね。それもとびきり上等の‼︎クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かなめ2017-08-07 23:08
くにたちきちさん
ポルトガルへの旅で「南蛮屏風」実際にご覧になったんですね。以前テレビで美術館が取り上げられていた時に少し観ました。(リスボンにある、各国から集めた美術品の紹介の中の一つとしてだったと思います)
でもその時は「ふ~ん」という程度で流してしまったので今更ながらもっとしっかり見ているんだった!という気持ちです。
歴史では随分日本への関わり、影響を学んだのに、ポルトガルへの興味が薄くて恥ずかしながら知ら無いことばかりなのです(^-^;
「鉄砲伝来、テンプラ、カルタ、カッパ、カステラ」-とまとめて覚えている位で自分の中の「現在のポルトガル」像がしっかりとは無かったので、この本で知った小さな漁港の町の暮らしが新鮮でした。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かなめ2017-08-07 23:09
Wings to flyさん
Wings to flyさんの書評を読ませていただいて興味を持った本だったのですが、本当に読んで良かった一冊です。
同じ地に他の人が住んでも、他の誰にも書けないエッセイだと思います。青目さんの本は初めて読んだのですが、ガツンと心を掴まれました。
シリーズの区別について、同じように感じていらっしゃっる方がいらしてホッとしました。
KanKanTripが既に十数冊出て、ここでも好評なシリーズ。一定のレーベルのファンもいらっしゃると思われるので、ガイドが有るものと、エッセイ、ハッキリわかる方がいいなと。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:書肆侃侃房
- ページ数:176
- ISBN:9784863852648
- 発売日:2017年06月24日
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